理事・管理

足りないと工事ができない!? 修繕積立金が不足したときの対処法

2022.06.21
足りないと工事ができない!? 修繕積立金が不足したときの対処法

マンションの工事費用をまかなうために管理組合員から毎月集めている「修繕積立金」。

「集めた修繕積立金だけで修繕を行えるの?」「十分に資金が集まらない場合はどうする?」といった不安もあるのではないでしょうか。

そこで、修繕積立金が不足する理由とともに、足りない場合の対処法を解説します。

修繕積立金だけで修繕を行うマンションは約7割

足りない費用は金融機関などから借り入れる場合も

劣化を修繕したり、環境の変化に合わせて設備を新しくしたりと、マンションには工事が不可欠です。特に15〜20年単位で実施される大規模修繕は、外壁や配管など建物全体にかかわる大きな工事となります。

こうした修繕のための費用は、毎月区分所有者から「修繕積立金」を集めてまかなわれています。

国土交通省から発表されている「平成30年度のマンション総合調査」によると、集めた修繕積立金だけで修繕費をまかなっているマンションは全体の72.3%。つまり、残りの約30%は修繕積立金が修繕費用に対して不足しているとも考えられます。

足りない分の費用は、区分所有者である管理組合員から追加で一時金を集めたり、金融機関から借り入れたりする対応が必要です。

修繕積立金だけでは不足する2つの理由

修繕積立金だけで修繕を行えないのはどうしてでしょうか。考えられる2つの理由を見ていきましょう。

【理由1】長期修繕計画が適切ではない

修繕積立金の金額は、長期修繕計画に基づいて決定されます。計画段階で必要な工事項目が含まれていないと、実際に工事するタイミングで予算とのズレが生じてしまうでしょう。

また、すぐに取り組む必要のない工事を予定に入れていると、用意すべき金額が実態よりも多くなります。修繕積立金額の値上げが必要になるため、滞納が増えてしまうなど資金が集まりにくくなるかもしれません。

このように、長期修繕計画が実態に即していないと、資金不足に陥る可能性が高まります。建物診断などで劣化状況を適切に把握して、必要な工事を見極めましょう。

【理由2】段階増額積立方式を採用している

修繕積立金の集め方には、毎月一定額を集める「均等積立方式」と、マンションの劣化に合わせ5年、10年単位で金額が上がっていく「段階増額積立方式」があります。

「平成30年度のマンション総合調査」をみると、約40%のマンションが段階増額積立方式を採用しているとわかります。

この方式では、新築時の修繕積立金額は均等積立方式の相場よりも低くなっている場合があります。初めの積立金額が少なかった分、値上げに対する住民の反発が顕著になるかもしれません。反発が強いと計画通りに値上げができず、当初の予算を大きく下回る可能性が出てきます。

値上げの決議を行う際には、新築時の積立金額が安かった旨を総会などで丁寧に伝え、住民の理解を得ましょう。

修繕費が足りないときの対処法

困ったときの5つの対処方

修繕積立金が思うように集まらず、予定していた修繕費が用意できない場合は、どのように対処すればいいでしょうか。

5つの対処法を紹介します。

【対処法1】一時金を集める

不足している金額を一時金として区分所有者全員に補ってもらいます。大規模修繕のタイミングなどでまとまった金額を集める方法です。

例えば、不足額を管理組合員数で割って、それぞれの負担額を算出します。区分所有している専有面積の広さに応じて金額を変更するのもひとつの手です。

ただし、一時金を集めるためには総会で決議をとる必要があります。

一時金の集め方と注意点は以下の記事でも解説しているので、参考にしてみてください。

【対処法2】修繕積立金を値上げする

これまで通り修繕積立金を集めていても修繕費が不足する見通しであれば、積立金の増額も検討したいところです。

実際、修繕積立金の値上げは珍しいことではなく、「平成30年度のマンション総合調査」によると約7割のマンションが過去に値上げを行っています。

ただし、管理組合員にとっては毎月の支払いが増えるわけですから、反対の声が上がる可能性も少なくありません。

一時金と同様に総会での決議が求められるため、承認を得るために値上げの理由や経緯を説明して納得してもらう必要があります。

値上げに反対された場合の対策については以下の記事で詳しく解説しています。

【対処法3】大規模修繕を延期する

資金が集まるまで延期することも検討

修繕工事自体を先送りにし、資金が集まってからの実施を検討してみても良いかもしれません。

ただし、修繕を先延ばしにする間に劣化が進んでしまい、かえって工事費用が増えてしまう可能性もあります。

建物診断などで早急に修繕が必要な部分を把握し、その部分だけを優先的に工事するなど、劣化が進んでいる箇所はあまり延期しないようにしたいですね。

【対処法4】工事内容を分割する

工事の全てを延期するのではなく、内容を分割する方法もあります。

分割する場合、工事に足場を設置するかどうかで分けると良いでしょう。足場の設置には工期も人手も必要なため、足場が必要な外壁の塗装や修復はまとめて実施するほうがコストを抑えられます。一方で、非常階段や廊下、構内舗装など足場の設置が必要ない工事は次回以降に行うのです。

分割すると、人手や工事現場の仮設で余計にお金がかかってしまう可能性はありますが、上記のように足場が必要な工事は一度にまとめるなど計画的な分割ができれば、まとめて行うよりも一度の工事期間が短くなるといったメリットもあります。

【対処法5】不足分を借り入れる

管理組合員に負担してもらうのではなく、金融機関から資金を借り入れる方法です。銀行はもちろん、独立行政法人住宅金融支援機構などで借り入れるほか、地方公共団体で設けられている融資制度を活用する方法もあります。

ただし、借入には金利がかかるため、返済にあたってゆくゆくは修繕積立金額の値上げが必要になるかもしれません。いずれにしても値上げの可能性は念頭に置いておきましょう。

修繕積立金の値上げには住民の理解が不可欠

修繕積立金だけで工事を行ったマンションは約7割です。つまり、修繕積立金だけで工事費をまかなえないケースは少なくありません。

修繕費が不足してしまうのは「長期修繕計画が実態に即していない」「段階増額積立方式を採用している」といった理由が上げられます。

修繕費をまかなうには、修繕積立金の値上げや金融機関からの借り入れを検討する必要があります。

ただし、値上げには総会での決議が必要なため、どうして修繕費が不足しているのか、値上げする理由は何かを明確に説明できるよう準備しておく必要があります。

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