マンションの直床と二重床は何が違う?見分け方も解説
2階以上のマンションに暮らしている人は、階下の住戸と騒音問題が起こらないように、日常の生活における気遣いが大切です。
生活の中で発生する音が階下にどのくらい伝わるかは、床の構造によって左右される場合があります。
この記事では、現代のマンションで主流となっている2 つの床の工法について解説していきます。
マンションの床構造は「直床」か「二重床」の大きく2種類
同じ建物にたくさんの住戸を含むマンションは、生活するうえで階下の住民との騒音問題が発生しやすい環境です。お住まいのマンションでそのようなトラブルが発生しやすいかどうかは、床の構造に左右される場合もあるかもしれません。
床の構造は、大きく「直床」と「二重床」の2種類に分類されます。全国的にみると直床のマンションが多いとされている一方で、首都圏だけは二重床の割合が多い傾向です。
ちなみに、タワーマンションは地域にかかわらず二重床が大多数となっています。
直床と二重床、それぞれどのような違いがあるのか要点を押さえておきましょう。
直床(じかゆか)構造とは
直床構造の特徴
マンションの下階の天井と上階の床の間には「コンクリートスラブ」と呼ばれる、荷重を支えるための鉄筋コンクリート製の板が設置されています。
直床は、コンクリートスラブにフローリング材や緩衝材などの床材を直接張り付けた構造です。
日本にマンションが普及し始めた頃から主流であった工法であるため、直床構造のマンションは国内で大多数を占めています。
直床構造のメリット
直床構造の最大のメリットはコストです。後述する二重床構造と比較して、床材に必要な費用が安く、施工にかかる手間も少なくすむため、ローコストな工法といえます。
近年では、工賃や建築資材の価格上昇などにより建築費が高騰している影響で、直床構造を採用するマンションが増加傾向にあるようです。
また、コンクリートスラブに直接床材を張り付ける構造上、住戸内の床を低く保てるため、室内空間を広くとれるメリットもあります。
ほかにも、住戸内で発生する低音の衝撃音を吸収しやすいともいわれています。小さな子どもがいる世帯では、騒音トラブル発生に一役買うでしょう。
ただし、このようなメリットを得られるのは、コンクリートスラブに十分な厚みがあったり、遮音性の高いフローリング材を使用していたりすることが前提となります。
直床構造のデメリット
直床構造では、住戸の空間を広く保つ目的で、床下の配管が通る部分の空間を可能な限り低くしているケースがあります。
これにより、居住空間を広く保てるメリットを得られる一方で、リフォームを実施する際に、配管スペースの狭さが災いして、水回りの移動が困難になる場合があります。
配管の配置が重要となるキッチンや浴室など水回りのリフォームを実施する際は、施工会社に高い技術や複雑な施工が求められるため、コストが高くなってしまう傾向にあります。
二重床構造とは
二重床構造の特徴
二重床は、コンクリートスラブにボルトなどを取り付け、その上に床材を設置する構造です。コンクリートスラブとフローリングの間に空間がある点が特徴です。
二重床は、2000年に施行された住宅品質確保促進法(品確法)で採用されたことによって広く普及が進みました。そのような経緯があるため、住宅品質確保促進法が施行される2000年以前に建設されたマンションでは、二重床を採用している建物はほとんどありません。
二重床構造のメリット
二重床は構造上、直床と比較してコンクリートスラブとフローリングの間に空間が取られています。
そのため、配管のためのスペースも広く、配管関連のメンテナンスがしやすいというメリットがあります。床に点検口や掃除口を設ければ、日々のメンテナンスの手間も容易になります。
二重床はメンテナンスだけでなく、物件のリフォームの際にも「配管の移動ができる」「作業がしやすい」など、直床と比較して施行しやすいポイントがあり、施工費用を安く抑えられます。
また、コンクリートスラブとフローリングの間に空間があるため、軽い物を落とした際の階下に伝わる衝撃音を比較的小さく抑えられるといわれています。
二重床構造のデメリット
直床と比較して、施工コストが高額になりがちな点が二重床のデメリットです。
施工する際には、支持ボルトやフローリングの下に取り付ける下地材などの材料が直床よりも多く必要となります。
また、直接コンクリートスラブに施工する直床と比べ、スラブへのボルトの取付作業などが発生する分、作業費用が高くなる傾向です。
また、床下に空間を必要とするため、その分、住戸の広さ(高さ)も影響を受けざるを得ないという点もデメリットといえます。
直床構造と二重床構造を見分ける方法
お住まいのマンションが直床なのか、二重床なのかわからない場合、どのようにして判別すれば良いのでしょうか?
ここからは、両者を見分ける判別方法を解説していきます。
サッシと床の高さを比較する
リビングの窓とサッシの床の高さを比較すれば、どちらの床構造かの判別に有効です。
床とサッシの底面の高さが同等程度であれば、高い確率で二重床構造であると判断できます。
反対に、サッシレールの下枠がフローリングよりも10cm以上高くなっている場合は、直床構造である可能性が高いでしょう。
水回り周辺の高さを確認する
キッチンや洗面台などの水回りには、必ず配管スペースが必要です。
そのため、住戸内のほかの部分と比べて水回りの床部分のみが10cm〜15cm程度高くなっている場合には、直床構造の可能性が高いでしょう。
反対に、水回りの床もそれ以外の床も高さが変わらないのであれば、二重床構造の可能性が高いと判断できます。
歩き心地をチェック
一般的な直床構造の住戸では、歩く時の足音が階下に響く可能性が高くなります。その対策として、クッション性の高いフローリングが採用されている場合があります。
ふわふわした柔らかい感触のフローリング素材が施工されている場合、直床構造であるがゆえに、階下へ配慮した物件である可能性が考えられます。
これからマンションを購入するなら床の構造も確認したい
今回の記事では、マンションの床構造について解説しました。
マンションの購入を検討する際に、床うぃみる際は、フローリングの質などのほかに「直床か、二重床か」といった構造部分にも着目しましょう。
特に将来リフォームを視野に入れている人は、二重床構造のほうが比較的施行の自由度が高いと憶えておきましょう。