連載:理事会役員超入門

マンション管理組合の業務はどうやって委託する?

2021.07.13
マンション管理組合の業務はどうやって委託する?

適切な管理をしていかなければ、快適性や資産価値を保つことができないマンション。とはいえ、住民だけでマンションの管理を行うのはなかなか大変です。

そこで頼りになるのが、管理会社の存在。ただ管理会社に、管理業務すべてを委託するかというと、そうではない方法もあります。

今回はそんな管理会社への委託方法から、委託先のタイプごとに特徴も紹介。「管理会社を見直したい」と考えている方向けに、業者を選ぶ際の注意点も解説していきます。

管理方式は大きく3つ! それぞれのメリット・デメリット

マンションの管理方法は、大きく分けると次の3通り。

1.全部委託方式
2.一部委託方式
3.自主管理方式

1の「全部委託方式」と2の「一部委託方式」は管理会社に管理運営を委託する方式で、3の「自主管理方式」は委託しない方式です。それぞれメリット・デメリットがありますので、ここから詳しくみていきましょう。

【方式1】全部委託方式とは? メリット・デメリット

全部委託方式とは、その名の通り、マンションの管理業務を一括して管理会社に委託する方法です。

管理業務をすべて任せることができるため、当然ですが管理組合やマンションの住民の負担は一番少ない方式となります。理事や役員が変わっても、理事会の構成メンバーに左右されず、管理の質を一定に保てるのはメリット。また管理会社から、マンションの管理に関する情報も取得しやすいと言えます。

一方でラクな反面、管理会社に任せきりになってしまうことも。そうなると、所有者や住民の意思で「マンションの生活をより良くしていく」といった意識が薄れてしまいがちです。総会への出席率が低下したり、重要な意思決定の場で意見を出す人が少なくなったりといったデメリットがあるかもしれません。

そのほか、分譲時の委託契約のままだとコストが相場よりも割高になるといったデメリットも。委託内容が管理会社主導で決まるため、管理組合の実状と一致しない場合もあります。

全部の業務委託をするといっても、マンション管理の最終的な意思決定を行うのは、区分所有者(マンションの購入者)である前提は忘れずに。

【方式2】一部委託方式とは? メリット・デメリット

一部委託方式は、管理業務の「すべて」ではなく「一部」を委託する方法。一部委託方式では、管理組合が各専門業者を手配もしくは自らが業務を行うため、管理会社には「管理会社が実際に行う業務のみ」を委託するのが一般的です。

清掃などを外部の専門業者に依頼する場合は「直接契約」となるため、間に入る管理会社がいない分、中間マージンが発生しない点がメリット。つまり、管理にかかるコストを抑えることができます。

ただ、管理組合側で各専門業者を選択・発注する負担が増える点はデメリット。発注する理事会役員によって、管理の質が上がったり下がったりしてしまう可能性もあるかもしれません。「理事が変わると管理の質も低下する」といったことが起こりえます。

【方式3】自主委託方式とは? メリット・デメリット

自主委託方式は、管理会社へ業務を委託せず、管理組合だけでマンションの管理・運営を行う方式です。

最大のメリットは、管理会社に業務委託しない分、全部委託方式や一部委託方式に比べて費用が抑えられるという点です。住民がマンションの管理に当事者意識を持てるのもひとつの利点といえます。

ただし、管理組合員が事務作業から清掃、建物や設備の管理を行う必要があり、労力や時間がかかる点はデメリットです。ノウハウがない場合や住民が高齢化している場合には、実現のハードルが低くなってしまいます。個人間でのトラブルが起きてしまう懸念もあるでしょう。

タイプ別! 管理会社の特徴

【タイプ1】ゼネコン系

ゼネコンは「総合建設業」と呼ばれ、高層マンションのほか道路や鉄道、トンネルや港などの社会基盤をつくる建設会社です。

そんな、大規模な工事を行う建設会社の子会社にあたる管理会社がゼネコン系と呼ばれます。

親会社から依頼を受けてマンション管理を行うことで、新規の営業はあまり必要なく、経営が安定しているのが特徴。ブランド力や知名度もあるといえます。

また親会社が建設したマンションであれば、設計や建築に関する情報を入手しやすく、管理もスムーズにいく可能性があるでしょう。ただ、建物に不具合が発生した場合、管理組合よりも、親会社の味方をされてしまう可能性があります。

【タイプ2】デベロッパー系

デベロッパー系とは、グループ企業に新築マンションや都市開発を行う不動産会社を持つ、管理会社です。例えば「〇〇不動産が建設したマンションの管理を、〇〇不動産パートナーズが行う」といったように、グループ企業が土地開発から施工・販売・管理までを一貫して担うのが特徴。ただ、どのマンションも、管理会社を決める権利は管理組合にあります。そのため必ずしも、そのマンションの開発・施工・販売をしたグループ企業のデベロッパー系管理会社に委託する必要はないといえるでしょう。

とはいえ、グループ企業の管理会社であればマンションの構造や設備に関する情報が取得しやすく、不具合やトラブル時の対応などもスムーズに解決できる可能性があることは確か。またデベロッパー系の管理会社は「大手」が多いため、経営基盤が安定しており、管理の質に差異が少ないこともメリットとして挙げられるでしょう。

デメリットとしては、以降で紹介する独立系の管理会社と比較して、委託費が割高になるケースが多いこと。新築時から入っているために他社と比較されることがなく、価格競争が起こりにくいことも、割高になる要因として考えられます。

【タイプ3】ビルメンテナンス系

商業施設やオフィスビルのメンテナンス(保守)がメインですが、マンションの管理運営をサポートする会社もあるのが、ビルメンテナンス系。

清掃や設備の保守など、ハード面に強く、関連する専門スタッフ(建築や設備関係の有資格者)が多数在籍しています。

ただ、マンション管理の実績は少ない傾向にあり、理事会の進行や住民がらみの問題解決といったソフト面での対応はあまり期待できないかもしれません。

【タイプ4】独立系

独立系は、グループ企業として不動産開発会社や建設会社などを持たない管理会社のこと。特徴は、グループ企業から管理物件の依頼が半ば自動的に来ることがないため、物件の獲得のために価格競争が働きやすく、自社を選んでもらうための工夫に注力しているということ。

また管理組合側から見ると、委託費を比較的安く抑えることができ、住民目線の柔軟な対応をしてくれる傾向が強いといえます。

委託先を見直すときは相見積もりをとる!

委託先を見直すことでコスト削減できる場合もある

前提として管理会社は住民が選んだわけではなく「もとから入っていた」という場合が多いでしょう。管理会社から言われるがままの委託費を支払っており、相場と比べて実は割高だったということも珍しくありません。

そのため、委託先を見直したい場合、まずは現在の管理会社との契約が見直せないか検討してみるのも一つの手。「別の管理会社への委託を検討している」というのを交渉材料に、現在の契約を見直してもっとコストを削減できないか相談してみましょう。

そのうえで、委託先の管理会社を変更する場合、必ず複数社から見積もりをとり、管理の内容についてプレゼンテーションを受けるのがおすすめ。見積もりの金額とプレゼンの内容を照らし合わせながら、複数社を比較すると、適正価格も見えてきます。

信頼できる管理会社の3つの特徴

どの業種にもいえることですが、管理会社も「大手だから」「デベロッパー系だから」安心とは限りません。会社はたとえ同じであったとしても、サービスの質は担当者の経験や知識(保有資格)、能力によっても大きく異なります。

もちろん担当者に不満があれば、変更を申し入れるべきですが、管理会社を選ぶ際にも「会社」と「担当者」の両方で判断するようにしましょう。

また日々の管理業務や費用面だけでなく、資産価値を左右しかねない「長期修繕計画」の立て方についても確認しておきたいところ。管理会社によっては、「修繕計画は一度立てたら終わり!」とするケースもあるようです。

計画の立て方を確認する際に見るべきは、次の3つ。
・修繕計画を定期的に見直せるのか?
・修繕時には外部の専門家と協力できる可能性もあるのか?
・修繕工事は複数の専門業者に見積もりをとり、選ぶことができるのか?

以上のことを確認したうえで、住民目線で管理業務を行ってくれる会社・担当者かどうか、慎重に判断しましょう。

管理委託費の値上げを要求されるケースもある

近年、最低賃金の上昇を受け管理委託費の値上がりを要求する管理会社も増えてきています。必要な値上がりであれば受け入れたいところではありますが、必要以上に金額が上がって管理組合がひっ迫しては困ります。

値上がりの要求をされた場合には、まず相見積もりをとって相場を知り、不当な値上げではないと確認しましょう。他社の見積りを提示することで、値上げの幅が少なくなる可能性もあります。

また、委託費の増額によって管理品質やサービスが向上する恩恵が受けられる場合も。価格が安い管理会社にお願いする以上にマンションの価値に貢献できると考えられるのであれば、値上げを受け入れても良いでしょう。

委託方法の変更とセットで契約の見直しも検討しよう!

管理会社への委託方法は、「全部委託」「一部委託」の主に2つ。委託方法によってコストや管理組合の負担も異なるため、メリット・デメリットを踏まえたうえで、自分たちに合った委託方法を考えましょう。

なお、管理会社を変更したい場合、まずは現在の契約内容を見直せないか相談。そして、見直し後の契約に納得がいかない場合、複数社を比較検討しながら、委託先の管理会社を見つけていきましょう。

イラスト:大野文彰

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この連載について

【連載】理事会役員超入門

マンションだからといって、購入後の管理はすべて管理会社にお任せ!というわけにはいきません。ほとんどのマンションにおいて、理事会の選考は立候補制ではなく、メンバーが入れ替わる輪番制。つまり、居住者誰もが理事会を担当する可能性が。というわけで本連載では、理事会役員になったらまず、これだけは知っておきたい!という超入門知識をご紹介。しっかり知識を身につけて、より良いマンションライフを送りましょう!

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