大規模修繕

マンションの寿命は何年? 寿命の差や延ばし方を紹介

2020.12.11
マンションの寿命は何年? 寿命の差や延ばし方を紹介

国土交通省の「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」の報告書には「リフォームを適切に行えば、100年でも十分もつものとなっている」とあるマンションの寿命。この寿命を延ばすためにも、メンテナンスや修繕などを含むマンションの管理が重要です。

今回はマンションの寿命を決める耐用年数の考え方を踏まえて、寿命の延ばし方について解説していきます。

マンションの寿命とは?=耐用年数ではない

マンションの寿命とは、必ずしも一定の期限があるのではなく、住みよい環境を保てる期限と考えられます。

建物には「法定耐用年数」が定められています。法定耐用年数とは、建物・機械・船舶などの固定資産を使用できる期間として、法的に定められた年数です。

ただ、法定耐用年数を迎えたとしても、その物件に住めないわけではありません。

RC・鉄筋コンクリート造の平均寿命は68年(小松幸夫/2013「建物の平均寿命実態調査」)と言われていたり、長くなるとで120~150年(大蔵省主税局/1951「固定資産の耐用年数の算定方式」)になると言われていたりします。

耐用年数はあくまでも減価償却費の目安にすぎず、マンションの寿命は管理状態によって延びたり縮んだりします。

マンションの寿命を決める3つの耐用年数

マンションの寿命を左右する要素としては、メンテナンス不足やそもそもの構造上の問題などが挙げられます。日当たりが悪ければカビが、海に近ければ塩害が発生しやすくなるといったように、立地による差もあるでしょう。

寿命を測る目安としては前述した法定耐用年数だけでなく、「経済耐用年数」や「物理的耐用年数」もあります。それぞれについて、以降で見ていきましょう。

【1】法定耐用年数

法定耐用年数について改めて説明すると、税務上の減価償却を行うための減価償却費や、不動産的価値を算出するために国が定めたもの。アパートやマンションの種類、木造や鉄骨といった建物の構造によって一律に決められています。

国税庁のホームページによると、主流である鉄筋・鉄骨コンクリート造マンションは47年、木造は22年、軽量鉄骨造は27年、重量鉄骨は34年となっています。例えば、鉄骨・鉄筋マンションを4700万円で購入した場合、減価償却として毎年100万円(4700万円÷47年)ずつ価値が減っていき、47年で価値が0円になる計算です。

ちなみに、昔は法定耐用年数が60年と定められていた鉄筋・鉄骨コンクリート造マンションですが、1998年の税制改正によって47年に短縮されました。

【2】経済的耐用年数

経済的耐用年数とは、建物が不動産的な価値がなくなるまでの年数で、「経過年数+経済的残存耐用年数」で求めることができます。経済的残存耐用年数とは、居住者の利用状況や日々の補修・修繕などによる建物の傷み具合を総合的に判断し、「建物が経済的に価値を有するのは何年か」を評価したもの。一律で耐用年数が決まっている法定耐用年とは異なります。

なお、今後見込まれる補修・修繕費などの費用も経済的耐用年数に影響。建物が物理的に何年もつかではなく、経済的に何年価値があるのかで判断されます。

【3】物理的耐用年数

物理的耐用年数とは、建物が雨や台風などの物理的原因で劣化し、「構造上の問題が発生する」「材質の品質を維持できない」といった理由で住めなくなるまでの年数です。

国土交通省の「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」報告書(平成25年)によれば、「マンションの寿命は120年で、メンテンナンスにより150年まで延命できる」という研究結果も出ているようです。

さらに長寿命・高耐久性コンクリートの開発により、「200年仕様」「500年仕様」などのマンションの誕生も期待されており、前述した「法定耐用年数」「経済的耐用年数」と比べると最も長い年数といえます。

マンションの寿命を短くしてしまう3つの原因

戦後しばらくの間に建てられた住宅は、短期間で建替えられたり、建物の価値が20年程度でゼロになったり、寿命は短かったといいます。

これまでのマンションの寿命が短かった理由とともに、寿命を縮めてしまう原因を紹介します。

【原因1】長期修繕計画がない

マンションの寿命を大きく左右する要素が「維持管理」と「修繕」です。そのため近年に建てられたマンションでは、あらかじめ長期修繕計画書が作成され、計画的に修繕積立金を納めて修繕工事などのメンテナンスを行うケースがほとんどです。

ところが、1960~70年代に建てられたマンションは長期修繕計画がないこともあり、劣化や不具合が発生してからその都度修繕を行っていたといいます。修繕費の一括徴収など、各住戸の負担はどうしても大きくなってしまい、費用が集まらないことから結果的に修繕ができない物件もあったそうです。

そして、修繕が実施されずに建物が古くなると、空室が目立つようになり、ますます修繕積立金を納めてもらえなくなるといった悪循環に。こうしたマンションは取り壊してしまって、イチから建て直すという風潮が強かったようです。

【原因2】構造・材質

マンションの構造で重要と言われるのが「耐震基準」です。

とくに旧耐震基準(1981年6月1日以前)にもとづいて建築された建物は十分な耐震性が備わっておらず、耐震補強工事を実施できるケースも限られていました。

また、高度成長期に建てられたマンションはコンクリート材料の品質が低いことも問題になっていたそう。そのため、比較的古くに立てられたマンションは「寿命が短い」というイメージが強いようですね。

これまでは50〜60年が寿命とされてきたコンクリート材ですが、現在では「100年コンクリート」と呼ばれるような寿命の長いものも開発されており、ますますマンションの寿命を延ばしています。

なお、鉄骨・鉄筋コンクリート造(SRC造)、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)の順で構造は強固になり、寿命も長くなると考えられるでしょう。

給排水管にさびやすいメッキ鋼管を用いていたために寿命が短いケースや、配管がコンクリートに埋まっているために、劣化した配管を交換するには建て替えを余儀なくされるケースもあります。

【原因3】立地

マンションの立地も劣化の程度に影響します。例えば、日当たりが悪い場合は湿気でカビが発生しやすくなるため、特に壁や排水管のこまめなメンテナンスが必要になります。

また、海に近い建物であれば、潮風によって運ばれる塩が腐食やサビの原因になるかもしれません。外壁だけでなく、コンクリートの内部で塩害が進行する可能性もあります。

マンションの寿命を確認する方法

マンションの寿命を概算するには、上記で紹介したような法定耐用年数を参考しすると良いでしょう。

ほかには、「建物診断」で現在のマンションの状況を把握する方法もあります。建物診断とは、建物の傷み具合や耐震レベル、近隣マンションの入居率や周辺地域の状況から資産価値を測れる診断です。

大規模修繕工事に向けて行うのが一般的ですが、マンションの寿命を把握するうえでも効果があります。

建物診断については下記の記事でも解説しているので、参考にしてみてください。

マンションの寿命を延ばす2つの方法

経年とともに劣化していくマンションですが、メンテナンスや修繕を行うことで寿命を延ばすことが可能です。

ここでは主な方法を2つ紹介します。

【方法1】立地状況に合わせた日々のメンテナンス

マンションの立地状況に合わせて、日々メンテナンスを行うことがまずは大切です。

例えば、海が近い場合は塩害によって金属部分が錆びたり、窓ガラスに塩がついて汚れたりするため小まめな掃除や金属部分の交換などが必要になるかもしれません。日当たりが悪い場所は、カビやコケが発生しない対策なども実施したほうが良いでしょう。

鉄骨・鉄筋コンクリート造の強固な構造であれば、台風や風雨といった自然災害の被害も少なく済みます。しかし、一部の破損やヒビ割れが起きる可能性はあります。寿命を延ばすには、些細な劣化のサインを見逃さないことが大切です。

【方法2】定期的な大規模修繕

大規模修繕

マンションの経年劣化は避けられません。雨風や日光による劣化や鉄部分の錆び、外壁の剥がれなどを放置しておくと、当然ですが、建物の価値も急速に下がってしまいます。

そのため、長期修繕計画をもとにした定期的な大規模修繕が必要になってくるでしょう。国土交通省では、12年に1度のタイミングを推奨しています。とはいえ近年では建築業界全体の技術の向上により、2回目以降の大規模修繕の周期を15年に引き延ばすこともあるです。

マンションが寿命を迎えてしまった場合の2つの対処法

古いマンション

築年数が経過し、マンションが古くなってきた場合、どういった対処法が考えられるのでしょうか。

以下、2つ紹介します。

【対処法1】まずは修繕工事を検討する

修繕して住めそうな場合は、修繕工事を検討しましょう。分譲マンションの場合、基本的には入居者全員から納めてもらっている修繕積立金を使って実施します。

大規模修繕を行う場合は区分所有者の議決権割合の4分の3以上、小規模修繕の場合(軽微変更)は2分の1の賛成が必要です。

一般的に築年数が古くなるほど大規模な修繕が必要となり、修繕費は高くなります。修繕積立金だけでは足りない場合は、住宅支援機構が提供する「マンション共用部分リフォーム融資」など、借り入れを行って資金を調達する必要も出てくるでしょう。

マンションの寿命が早々に尽きてしまわないためにも、定期的な修繕工事が大切だといえます。

【対処法2】新しいマンションに建て替える

マンションが寿命を迎えて建て替えを行う場合は、議決権割合の5分の4以上の賛成が必要です。

ただ、築年数が耐用年数と同じくらいのマンションでは、居住者の大半が高齢者というケースも珍しくないでしょう。定年退職している居住者が多い場合、修繕工事よりもお金のかかる建て替えに、反対する方もいるかもしれません。

建て替え時に戸数を増やし、その分を売って利益を出すことで費用を充填する方法もあるようです。しかし、敷地の関係で戸数を増やせない場合もあります。戸数を増やすことができたとしても、立地がよくないと買い手がつかないケースも。

建て替えはあくまでも最終手段として、やはり定期的な修繕工事が寿命を延ばす鍵といえるでしょう。

建替え寿命は築後30〜50年が目安

マンションの使用年数や大規模修繕工事の目安にかかわらず、機能や安全性の観点から建て替える必要が生じる時期を、建て替え寿命と言います。

では、建て替え寿命はどのくらいを想定すれば良いでしょうか。結論から言うと「築後30〜50年程度」が目安とされています。

これまで述べてきたように、鉄筋・鉄骨コンクリート造マンションの法定耐用年数が47年。対して、物理的耐用年数は100年を超えるとも言われており、建て替え寿命も断定することは難しいかもしれません。

ただ、2013年に国土交通省が発表した資料によると、老朽化により取り壊されたマンションの平均築年数は68年で、そのうち建て替えられた物件の平「均築年数は33年」。築30年超~40年未満のマンションの建て替えが最も多く、法定耐用年数の経過を待たずに建て替えていることが分かります。

もし建て替えを検討するのであれば、今後さらにマンションの物理的耐用年数が伸びていくことも考え、築後30年〜50年程度とみるのが良いでしょう。

「劣化対策等級」が最も高いマンションは資産価値が上がりやすい!

建物の劣化度合いを評価する指標としては「劣化対策等級」もあります。木造であればシロアリ、鉄筋・鉄骨であればサビなど、劣化に対してどの程度対策を行っているかを評価するというもの。等級は3段階に分かれており、等級3が最も高い評価ということです。

等級1:建築基準法が定める対策が講じられている
等級2:通常想定される条件の下で、2世代(50年~60年程度)まで長持ちするように対策が講じられている
等級3:通常想定される条件の下で、3世代(75年~90年程度)まで長持ちするように対策が講じられている

劣化対策等級を含む住宅性能の評価は、設計段階および施工段階に行われます。国土交通省が認めた第三者機関が評価するため、高い評価を受けると銀行からの融資が受けやすくなったり、買い手がつきやすくなったりといったメリットも。修繕や建て替えの際には、劣化対策等級の基準をもとに劣化に対する対策を行ってみてください。

マンション価値は日頃のメンテナンスや修繕で維持できる!

マンションの耐用年数として使われる「法定耐用年数」は、あくまで減価償却費の目安。そのため、マンションの寿命を表すのは、建物そのものが劣化して使用できなくなるまでの「物理的耐用年数」だといえます。

この物理的耐用年数を延ばすためにも、日常的なメンテナンスや定期的な大規模修繕の実施が大切。寿命を延ばすも縮めるも、マンション管理の当事者である管理組合次第だといえますね。

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