大規模修繕

長期的な劣化に対応するのが計画修繕。経常修繕との違いも解説

2022.02.17
長期的な劣化に対応するのが計画修繕。経常修繕との違いも解説

新築の頃は綺麗で快適なマンションであっても、いつかは必ず劣化による機能や品質の低下が起こるもの。劣化が進むと、住み心地が悪くなるばかりでなく、マンションの資産価値の低下も招きます。

そんな劣化に対処するために管理組合が行うべきは「修繕」です。管理組合にとっては馴染み深い修繕ですが、内容によって「計画修繕」と「経常修繕」の2種類に分類されるのをご存じでしょうか? この記事では、2つの修繕の違いと、必要性について解説していきます!

「計画修繕」と「経常修繕」の違い

マンションの資材や設備は年月の経過と共に少しずつ劣化していくため、いつかは必ず修繕をしなければなりません。修繕には「計画修繕」と「経常修繕」の2種類があります。

お住まいのマンションで効果的に修繕できるように、それぞれの修繕方式の特色について知っておきましょう。

長期的な劣化に対応する「計画修繕」

将来の劣化に対応する計画修繕

「計画修繕」は、将来的にマンションのさまざまな箇所に起きると予測される劣化に対応するために、長期的視点で計画を立てて実施する修繕です。

具体的な例としては、
・外壁の塗装
・屋上や屋根、バルコニーの防水工事
・給排水管の補修
・共用部分の内装工事
・エレベーターや機械式駐車場など教養設備の補修
など、10数年ごとに実施が必要となる工事が挙げられます。

建物や修繕についての知識がないと、マンションの10数年後を予測することは難しいですが、国土交通省の「長期修繕計画ガイドライン」を参考にすると計画が立てやすくなるでしょう。

規模が大きな計画修繕は「大規模修繕」とも呼ばれます。ただし、突発的な事故などによって、急遽大規模修繕を行う場合もあるので、必ずしも「大規模修繕=計画修繕」が成り立つわけではない点に注意しましょう。

緊急性の高い劣化に対応する「経常修繕」

経常修繕は早急に対応が必要

日常的に発生する軽微な劣化に対応する修繕を「経常修繕」といいます。劣化に対する予防のような意味合いで行う計画修繕とは反対に、経常修繕は起きてしまった故障や破損に対処する修繕です。

経常修繕の例は、
・配管の水漏れや雨漏りの対応
・共用部分の照明交換
・共用部分の床や壁の軽微な修繕
・給水ポンプなど設備の不具合への対応
など、緊急性が高い内容が挙げられます。

また、経常修繕は計画修繕よりも比較的コストが安く済む内容が多いことが特徴です。一般的に、経常修繕の修繕費用はマンション住民が管理組合に支払う管理費から充当されます。

計画修繕が必要な2つの理由

必要に応じて実施される経常修繕とは異なり、計画修繕に今ひとつ意義を感じられない人も居るかも知れません。しかし、計画修繕も区分所有者としてマンションで暮らすうえで非常に重要度の高いものです。

ここからは計画修繕の必要性について説明していきます。

資産価値の維持に繋がる

前述した通り、マンションの資材や設備は年月の経過にともなって徐々に劣化していきます。

劣化が進行していくと、建物の見た目が損なわれて「古い」と感じるようになり、マンション各所にある設備の機能や耐久性が低下するため、マンションの資産価値が下がってしまいます。資産価値が下がれば、マンションへの新規入居者の確保が困難となるかもしれません。

避けることのできない劣化に対処するためには、計画的な修繕の実施が重要です。修繕を行って、マンションの外観や建物各部の機能を回復させれば、資産価値の維持につながります。

劣化を原因とする事故の回避

修繕は安全に暮らすために欠かせない

多くの人が暮らすマンションの劣化は、安全面の問題にもつながります。

老朽化したエレベーターが突然停止したり、ベランダの柵が錆びて脆くなったり、建物の耐震性能の低下がおこるかもしれません。

劣化によって起こるかもしれない危険を回避するためには、長期計画に基づいた定期的な修繕が不可欠となります。

特に、外壁がタイル張りのマンションは要注意。過去には、劣化した外壁やタイルが剥落して通行人が重症を負った事例もあり、修繕を行わずに放置するのは非常に危険です。

平成20年には建築基準法施行規則が一部改正され、外壁がタイル貼りのマンションは、10年に1度のサイクルで外壁全面打診調査の実施が義務付けられています。

マンションの劣化症状の種類

一口に「劣化」といっても、意味はさまざまです。マンションにおいて懸念される劣化の種類について見ていきましょう。

経年による物理的劣化

時間とともに物理的に品質が低下していく劣化です。劣化と聞いて、多くの人が思い浮かべるのがこのタイプではないでしょうか。

マンションの資材や設備は、日差しや雨風、湿気、季節ごとの気温の変化などのさまざまな自然現象や、居住者による繰り返しの使用で、品質や機能性が少しずつ低下していきます。資材や設備は永久には使用できないため、定期的な修繕や交換などのメンテナンスが必要です。

一般的な修繕では、物理的劣化への対処がメインとなるでしょう。

ニーズの変化による社会的劣化

時勢によって人々の価値感や環境が移り変わっていき、相対的に古いマンションの価値が低下していく劣化が「社会的劣化」です。

例えば、技術の進化によって、暖房効果が極めて高く、省エネ性能も抜群の暖房設備が開発されたとします。その設備が広く流通し、一般的に利用されるようになった場合に、その暖房が使われていない古いマンションの価値は下がっていくかもしれません。

未来においてどのような変化が起きるのかを予測するのは困難であるため、社会的な劣化に対応するためには、計画のこまめな見直しが必要となります。

資産価値の低下による経済的劣化

マンションの転売価格が将来必要となる修繕費用を下回る状態になると、経済的劣化が進んだとされます。

リーマンショックやコロナショックのような世界規模の大不況が起きると、地価の下落にともなって、経済的劣化の進行が激化する傾向です。

計画修繕の注意点

計画修繕は非常に長い期間を見越して計画を立てるため、不測の事態によって変更を余儀無くされる場合が非常に多くあります。そのため、定期的な計画の見直しを心掛けましょう。

特に気を付けたいのが資金です。予定外の工事を実施すると、途中で積立金不足によって、予定していた計画通りに進められなくなるという状況に陥るかもしれません。最悪の場合、修繕が実施できなくなる事態も考えられます。

資金不足を避けるためには、急な変更があっても対応できるよう、余裕を持った計画を立てておくのが重要です。

計画的な修繕で劣化からマンションを守る

発生したトラブルに対処する「経常修繕」と、先を見据えて長期的な計画を立てて行う「計画修繕」。どちらも長く快適にマンションで暮らしいくために必要なので、マンションの資産価値を損なわないためにも必ず行いましょう。

マンションはさまざまな方向から劣化が進行します。計画修繕を効果的に進めるためには余裕を持った計画を立てて、定期的な見直しを実施しましょう。

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