理事・管理

大規模修繕の税務処理とは?「資本的支出」と「修繕費」に分けて解説

2022.08.10
大規模修繕の税務処理とは?「資本的支出」と「修繕費」に分けて解説

マンションの大規模修繕では、数百〜数千万円の費用が発生することも珍しくありません。高額な支払いが発生するため、税務処理の方法もしっかり押さえておきたいところ。

大規模修繕で発生する費用の税務処理には2種類の方法があるので、それぞれの特徴や分類の仕方を押さえておきましょう。

大規模修繕の税務処理は「資本的支出」と「修繕費」2つの方法がある

それぞれどのような場合に該当するのか解説していきます

大規模修繕で発生する費用は、会計上は「資本的支出」か「修繕費」のいずれかで計上します。

それぞれどのような内容が該当するのかを見ていきましょう。

資本的支出

「資本的支出」は、マンションの使用可能年数を延長したり、資産価値を上昇させたりするための支出です。

建物の使用期間延長につながる工事には、耐震補強工事などが挙げられます。

資産価値を上昇させる工事は、非常階段やエレベーターの新設など、マンションに新たな機能を追加する工事が該当します。

資本的支出で計上した費用は、減価償却の対象です。減価償却は、1度に全額を経費計上するのでなく、年度ごとに少しずつ経費計上していきます。

減価償却については、記事の後半で解説します。

修繕費

劣化や損傷が見られる部分に対する原状回復や、現在の状態を維持するために行う工事に掛かる費用は、「修繕費」に分類されます。

修繕費に該当する具体的な工事内容は、外壁塗装の塗替えや屋上防水の改修工事など。

資本的な支出と比べると規模の小さな内容が多く、電球の交換といった作業も修繕費に含まれます。

修繕費として会計処理を行う場合には、施工した年の経費に一括計上が可能です。

分類で迷ったら金額で判断!

工事費用が60万円を超えるなら資本的支出として計上

工事内容によっては、資本的支出か修繕費のどちらに該当するか判断に迷うかもしれません。そのような場合は金額に着目しましょう。

工事費用が60万円を超えるのであれば、資本的支出として計上します。大規模修繕の費用は、ほとんどの場合100万円を上回るため、多くが資本的支出に該当します。

一方、明らかに資本的支出に該当する工事内容であっても、1件あたり20万円未満に収まるのであれば修繕費として計上可能です。また、定期的に実施する修理や改良で、3年以内周期で行う工事も修繕費として計上できます。

発生する費用が60万円未満の場合や、修理する資産の前期末所得価格の10%未満である場合にも、修繕費としての計上が可能です。ここでいう「前期末取得価額」とは、建設時もしくは購入時の価額と前期末までの資本的支出の合計額をいいます。

ただし、発生する費用が60万円未満であっても、修繕によって建物の資産価値が上がるのが明らかだと判断される内容は、資本的支出として計上しなければならない場合もあるので注意しましょう。

資本的支出は減価償却ができる

ここで、減価償却について改めて解説します。減価償却とは、時間の経過によって価値が減少していく固定資産の取得に発生した費用を、資産ごとに定められた耐用年数に応じて分割して費用計上できる会計の仕組みです。

前述の通り、資本的支出で計上した費用は減価償却を行えます。

この場合の耐用年数とは、建物の構造別に定められているもともとの法定耐用年数を指し、マンションの築年数とは異なります。大規模修繕の費用を資本的支出として計上した場合は、会計上、修繕を行ったマンションと種類と耐用年数を同じくする、新たな資産を取得したと見なされるためです。

減価償却を行うと、耐用年数と同じ年数分だけ大規模修繕の費用を各年度の経費に一定額ずつ計上できるので、節税効果が得られます。

マンションの減価償却費は「定額法」で計算する

減価償却費の計算方法には、「定額法」と「定率法」の2種類があります。

「定額法」は、毎年一定の金額を減価償却費として計上する方法です。基本的に、償却費の金額は毎年同額となります。

一方の「定率法」は、減価償却費が一定割合で減少していく方法です。償却される額は初年度が最も高く、それ以降は年を追うごとに安くなっていきます。

税制上、マンションの減価償却は定額法で計上すると定められています。

減価償却費の計算式

減価償却費は次の計算式で求められます。

「減価償却費=マンションの取得価格(大規模修繕の工事費用)×定額法償却率」

定額法償却率の数値については、国税庁が「減価償却資産の償却率表」を公開しています。お住まいのマンションの構造に合わせた耐用年数から、償却率を検索して計算しましょう。

マンションの法定耐用年数は、鉄筋コンクリートは47年、木造は22年、鉄骨造りは34年となっています。

減価償却で節税効果を得よう

大規模修繕費の税務処理は「資本的支出」と「修繕費」の2通りに分けられ、それぞれ工事の内容や発生する金額などによって分類が可能です。

修繕費であれば施工した年の経費に一括計上できますが、多くの大規模修繕工事が該当する資本的支出として計上する場合には、減価償却を行いましょう。

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