マンションの雨漏り対策で欠かせない「シーリング工事」って?
壁のつなぎ目や隙間を埋めて、雨水の侵入を防ぐ工事を「シーリング工事」と呼びます。大規模修繕の際に行う機会も多いシーリング工事ですが、意外とその重要性や工事内容までは理解をしていない人も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、シーリング工事の役割や内容を中心に紹介していきます。
シーリング工事の目的は「防水」と「振動の吸収」
マンションには外壁のつなぎ目や、外壁と窓まわりのつなぎ目、あるいは経年劣化で生じたひびなどの隙間が存在します。その隙間を埋めるのが、シーリング工事の役目です。「シーリング材(コーキング材とも呼ばれる)」と呼ばれる素材を使用して行われます。
隙間を埋めることで雨水の浸入を防ぐのはもちろん、伸び縮みしやすい性質を持つシーリング材のおかげで、温度変化や地震の揺れによる振動を吸収する目的もあります。
なおシーリング工事を行うベストコンディションは、気温15〜25℃、湿度80%未満といわれています。気温や湿度が高すぎたり低すぎたりすると、乾燥が適切に行われず、シーリング材の耐久性に問題が出てしまうためです。
シーリング材は5〜10年を目処に交換する
コーキング剤の開発・製造・販売を専門に行う「シャープ化学工業」によると、シーリング材の耐用年数はだいたい5〜10年程度といわれており、5年を過ぎるとひび割れや亀裂、剥がれなどの劣化が生じてくるといわれています。紫外線にも弱いため、日当たりが良いところだと、もっと早く交換が必要になることもあります。
シーリング材は劣化すると、本来の防水性を発揮できなくなります。その結果、雨漏りが発生し、内部の鉄筋や鉄骨が錆びてマンションの耐久力が落ちる可能性もあります。雨漏りや内部構造の修繕は、シーリング工事以上に高額な費用がかかることもあるため、修理費用を抑えるためにも定期的なシーリング材の交換が必要といえるでしょう。
劣化の程度は大きく4つに分かれる
上記で説明したように、シーリング材は紫外線や雨の影響で劣化します。程度としては、軽度なものから中度、重度、完全な剥離の4つに分けられます。
・軽度…弾力がなく硬化してしまった状態
・中度…表面に亀裂やヒビが入っている状態
・重度…表面から浮いてしまい、隙間ができている状態
・最終…完全に剥がれ、無くなってしまっている状態
シーリング工事には工法や材料の種類がある
マンションの健康を保つためにも欠かせないシーリング工事ですが、具体的にはどのような工事を行っていくのでしょうか。
ここからは、工事の方法について説明していきます。
工事方法は「打ち替え工事」と「打ち増し工事」の2つ
シーリング工事は、シーリング材の劣化具合や工事箇所に合わせて2種類の方法が存在します。
「打ち替え工事」は、シーリング材の亀裂やひび割れが激しい場合に行う工事です。古いシーリング材を全て剥がしてから、新しいシーリング材で隙間を埋めていきます。防水性や耐久性を確保できますが、その分、費用も高くなります。
「打ち増し工事」は、古いシーリング材の上から新たにシーリング材を足す工事です。劣化の目立たない箇所の補強目的や、窓まわりなど打ち替え工事が難しい箇所に行われる工事で、打ち替え工事よりも費用は抑えられます。
なお、一般的にシーリング材と言われる材料は成分によって種類が異なります。耐候性・耐久性・及び耐熱・耐寒性などに優れたシリコン系シーリング材、塗装との密着性に優れたポリウレタン系シーリング材、ALC(軽量気泡コンクリート)と呼ばれる外壁パネルによく使われるアクリル系シーリング材など、目的や工事箇所によって使い分けられています。
接着方法は「二面接着」と「三面接着」の2種類
シーリング工事を行う箇所によって、接着方法も変わります。二面や三面という数は、シーリング材と隙間との接着面の数のことです。
「三面接着」は、隙間の左右(上下)と奥の計3つの面にシーリング材をぴったり接着させる方法です。揺れや歪みには弱いですが、シーリング材と隙間の密着度が上がるため防水性に優れます。マンションのコンクリート部分など、構造上動きの少ない箇所には、三面接着が適しているといわれています。
「二面接着」は、隙間の左右(上下)とだけシーリング材を接着させる方法です。三面接着よりもシーリング材の伸縮性を活かせるため、壁の振動によるひび割れや亀裂が生じにくいといったメリットがあります。主に木造建築など、振動しやすい部分などによく使用されます。
材料は主に5種類
シーリングに用いられる材料は、主に下記の5種類です。
・シリコン系…耐水性・耐熱性・耐候性に優れ、水回りに用いられる。上からの塗装はできない
・変形シリコン系…耐候性に優れていおり、上から塗装も可能。建築や板金加工に使用される
・アクリル系…耐久性は低いが、湿った場所にも利用できる
・ウレタン系…耐候性は低く、屋外で利用する場合は上から塗装が必要
・ポルサルファイド系…耐熱性、強度に優れている。表面にゴミがつきにくいため、外壁や躯体に使用される
作業工程はを確認! まずは古い材料の除去から
工事内容がわかったところで、今度はシーリング工事のざっくりとした流れについて順を追って見ていきましょう。この記事では、打ち替え工事を例に紹介していきます。
ステップ①:古いシーリング材の除去
古いシーリング材を綺麗に剥がします。このとき、隙間に残ったカスやほこりも丁寧に掃除します。
ステップ②:バックアップ材の取り付け(二面接着の場合)
二面接着を行う場合は、シーリング材で埋める隙間の底部分に空間を確保するため、バックアップ材を取り付けます。バックアップ材は、シーリング材が接着しにくい、発砲スチロールなどがよく使われます。
ステップ③:マスキングテープなどで養生
周辺が塗料やシーリング材で汚れないよう、隙間に沿ってマスキングテープを貼ることで保護(養生)していきます。
ステップ④:プライマーを塗る
プライマーはシーリング材用の接着剤のようなもの。これを塗ることで、シーリング材が剥がれにくくなる効果が期待できます。
ステップ⑤:シーリング材を入れていく
隙間や気泡ができないよう、シーリング材を入れていきます。
ステップ⑥:ヘラでならす
仕上げにヘラを使ってシーリング材を押し付けながら、表面をならしていきます。シーリング材の密着性を高め、表面を綺麗にするのが目的です。
ステップ⑦:養生を剥がして工事完了!
天候にも左右されますが、通常は1時間程度でシーリング材の表面は固まります。なお、完全に乾くには1週間ほどかかるので、それまでは触らないようにしましょう。
シーリング材には有効期限も! 工事の注意点
シーリング工事の注意点として、材料の有効期限が切れている場合があります。
施工業者への依頼時に管理方法を尋ねておいたり、実際の施工現場で期限を確認してもいいかもしれません。
また、気温や湿度も工事の質に影響します。雨天時を想定して、予備の工事日程を確保しておくのも大切です。
業者は資格の有無で選ぶのもあり!
シーリング工事に限ったことではないですが、「できるだけ知識や経験の豊富な職人が在籍する業者に依頼をしたい」と考えるのが普通です。「でも、腕のいい業者の選び方がわからない……」そんなときは、資格の有無が1つの判断基準となります。
シーリングに関する主な資格としては、国家資格の「防水加工技能士」と民間資格の「シーリング管理士・技術管理士」があります。「シーリング管理士・技術管理士」は日本シーリング材工業会が独自に定めたものですが、公的機関でも広く認識・評価されている資格ですので、どちらも業者選びの基準になるのではないでしょうか。
シーリング工事費用は1mあたり300円程度から
シーリング工事の一般的な相場の目安は、以下の通りです。もちろん値段は、工事業者や使用する資材によって増減します。
工事期間は最低でも2~3日、天候によってはシーリング材の乾燥に1週間かかる場合もあります。
また、シーリング工事費用を会計処理する際には、「修繕費」として計上することが一般的です。
これまで説明してきた通り、シーリング工事は雨漏りや揺れからマンションを守る大切な工事です。
劣化具合の確認など定期的なメンテナンスと計画的な資金準備を行い、信頼できる業者にお願いすることで、マンションの健康状態を保っていきましょう。
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