大規模修繕

CM方式で工事を円滑に! 管理組合と施工会社の連携をサポート

2020.12.11
CM方式で工事を円滑に! 管理組合と施工会社の連携をサポート

マンションの大規模修繕の進め方といえば、管理会社や施工会社にすべてお任せするか、コンサルタントを入れるというスタイルが一般的だったかもしれません。

しかし最近、新しい選択肢として「CM(コンストラクション・マネジメント)方式」を採用するマンションも増えており、注目を集めています。

今回はマンションの大規模修繕において、そんなCM方式を導入するメリットやデメリットについて解説します。

大規模修繕のマネジメントを担うCM方式

CM方式とは、管理組合から委任を受けた「CMr(コンストラクション・マネジャー)」が施工会社との間に立って、大規模修繕のマネジメントの一部を担う手法です。

業者選びのアドバイスや、設計・見積もりは適正かどうかの確認など、修繕工事全体の状況を見ながら管理組合のサポートを行います。

CMrの主な業務内容

CM方式で重要な役割を担うCMrは、大規模修繕の設計・発注・施工の各段階で、管理組合をサポートするのが仕事です。

以下の業務内容がすべて行われると決まっているわけではなく、発注者のニーズにあわせて契約します。

・設計時
設計を実施する業者の評価からスタート。設計が始まった後も「発注者が求める機能を満たしているか?」「設計に無駄はないか?」などを確認し、コストやスケジュールの観点から改善案を検討します。

・発注時
どのような方式で発注するのか提案し、施工会社の公募や選定などをサポート。契約書の作成やアドバイスなどを行います。

・施工時
施工会社と管理組合の仲介を行い、工事のコストやスケジュールを管理。工事が適切に行われているか、第三者として公正にチェックします。

コンサルタント方式との違い

CM方式と混同しやすいのが、コンサルティング会社に依頼する方式(設計管理方式)です。両者の違いは「設計業務をする/しない」という点です。

それぞれの分業体制について、以下で整理してみました。

■設計管理方式の分業体制
・施工会社:工事
・コンサルティング会社:診断・設計・マネジメント業務

設計者と施工者を分離し、設計者にマネジメント業務も任せます。

■CM方式の分業体制
・施工会社:工事
・設計事務所:診断・設計
・CMr:マネジメント業務

CMrは設計は行わず、マネジメント業務のみを切り取って行うのが特徴。設計管理方式からさらに分業を進めることで、コストの削減や品質の向上につながるといわれています。

大規模修繕にCM方式を導入する3つのメリット

マネジメント業務を分離することで、管理組合・施工業者の双方にメリットがあります。

【メリット1】工事費用を削減できる

CM方式を採用すると、管理会社や施工会社などにすべてお任せする場合と比べて、建築費を1~2割ほど削減できるといわれています。

なぜなら、設計・施工・マネジメントを一括で請け負うケースだと、どの業務にいくらかかっているかが不透明になってしまうためです。

対してCM方式は「設計はいくら、施工はいくら、マネジメントはいくら」といったかたちで、各業務の費用が明確になります。それぞれのコストをCMrが客観的に比較検討するため、結果的に適正価格で発注しやすいのです。

【メリット2】工期が短縮できる

大規模修繕では工期短縮・コスト削減のみを追い求めると、品質低下のリスクが増大します。そこでCMrが入ると、品質面と工期・コスト面のバランスを考慮した計画を立てられるというメリットもあります。

予期せぬトラブルでスケジュールに変更があったときにも、全体を俯瞰して柔軟な調整がしやすいといえるでしょう。

【メリット3】業者を選びやすい

マネジメントと設計を一社に任せる場合、マネジメントの経験も豊富で、設計の腕も優れたコンサルタント会社を見つけなければなりません。

しかしCM方式であれば、「マネジメントに優れたCMr」と「設計の腕が良い設計会社」というように、各業務に秀でた業者を選ぶことが可能。分業によって、結果的にコストを抑えながら工事の品質向上につながりやすくなります。

大規模修繕にCM方式を導入する2つのデメリット

多くのメリットがあるCM方式ですが、もちろん決して万能というわけでありません。

もしCMrにマネジメント能力がなければ、コストやリスクが増える恐れもあると理解することが大切です。

【デメリット1】工事結果はCMRの実力次第

各業者との連携

最大のデメリットは、大規模修繕工事の仕上がりが、CMrの実力次第で大きく変わるという点です。

CM方式の場合、業者選定から設計、施工までプロジェクト全体にCMrが関わります。もしCMrの能力が低ければ、各業者の連携不足だったり、コスト削減しすぎて品質が悪くなったりと、さまざまなトラブルが起こる可能性があるのです。

実力のあるCMRに依頼するには、マネジメント会社を決める段階で、担当者の実績や提案力などをしっかりと見極めなければなりません。

【デメリット2】工事費用が増えるリスク

従来の一括発注方式では、元請けとなる施工会社などとさまざまな工事をまとめて契約します。そして元請けの会社が、電気設備・空調・内装などの専門業者にそれぞれ発注をかけるというスタイルです。

詳しくは後述しますが、マネジメント業務のみを依頼する「ピュアCM方式」の場合、施工段階で電気設備の会社、空調の会社、内装の会社…といったように複数の専門業者をCMrが選び、直接契約します。

そのため中間フィーは発生しませんが、もし工事遅延などでコストが増えてしまった場合、そのリスクは発注者(多くは管理組合)が負わなければなりません。

そのリスクを回避するために、「アットリスクCM方式」という手法があります。この手法であれば、工事費用が予定をオーバーした場合、CMRがその分のコストを負担してくれるわけですね。

CM方式には「ピュアCM方式」と「アットリスクCM方式」がある

CM方式には大きく分けて「ピュアCM方式」「アットリスクCM方式」の2種類があり、工事に対する立ち位置などが少し異なります。

ただ、二者択一というわけではなく「全体をピュアCM方式、施工のみアットリスクCM方式」など併用も可能。2種類の特徴を、それぞれ見ていきましょう。

【種類1】ピュアCM方式

日本でCM方式というと、こちらのピュアCM方式を指すことが多いようです。

契約委託をベースとしており、CMrはあくまでも発注者の利益を求める形でマネジメント業務を展開します。なお、ここで言うCMRの役割は、コンサルティング会社が担うのが大半です。

【種類2】アットリスクCM方式

ピュアCM方式から発展してできたのが、アットリスクCM方式です。施工会社などが担うケースが多く、マネジメントだけでなく工事に関する責任も負います。

メリットとしては、工事に関する保証が手厚くなること。大規模修繕では、設計書を作成する段階で建物全体の劣化状況を把握するのは難しく、工事を進めないと状況がわからない部分があります。
ですが、ピュアCM方式では最終的に工事費が増加してしまった場合のリスクは、管理組合側が負わなければなりません。

一方でアットリスクCM方式では、契約内容に「工事完成保証」や「最大保証金額」などを組み込み、工事金額に関する一定のリスクもCMrが負担することになります。

CM方式がおすすめな場合、おすすめできない場合

メリット・デメリットを踏まえて、どのようなマンションにCM方式が向いているでしょうか。

おすすめできるのは、理事会や修繕委員会が積極的に計画の策定に携わっているマンションです。

これまで説明してきたように、CM方式はCMrとの連携はもちろん、各専門会社の状況なども把握しておく必要があります。密な活動ができるマンションであれば、中間フィー分の経費削減になるとともに、より適切な業者選定が可能になるでしょう。

反対に、元請けとなる管理組合があまり修繕計画に介入できない場合にはおすすめできません。

別々の専門会社に依頼していると、搬入の遅れなどが生じた場合に調整が求められたり、工事の責任を負ったりする必要があります。費用はかかりますが、全ての工程を一任したほうが円滑に工事が進むでしょう。

CMr(コンストラクション・マネジャー)の選び方

前述した通り、CM方式にはCMrの実力次第で大規模修繕の仕上がりが変わるというデメリットがあります。

では、CM会社やCMrはどのように選べば良いでしょうか。

まず、候補となるCM会社のホームページを確認します。業務内容が分かりやすく記載され、同規模の大規模修繕の実績がある会社に絞り込むと良いでしょう。

また、スムーズな大規模修繕を実施するには、修繕の目的やCMrに依頼したい内容を丁寧に共有し、要件を整理する必要があります。実際に見積書や提案書を作成してもらう時の様子を見て、管理組合の意見をよく聞き、理解してくれる担当者にお願いできると安心です。

ニーズにあわせてCMrと契約しよう

CM方式は、発注者・設計者・施工者がそれぞれ各段階で行ってきたマネジメント業務を、CMrに委託するという手法でした。コスト削減などのメリットがある反面、CMrの実力次第で工事の仕上がりが大きく変わるというデメリットもあります。

マネジメント業務には、業者選定・設計の確認・コストやスケジュール管理・施工の品質チェックなどさまざまな業務が含まれます。すべてをCMrに任せることもできますが、必要な部分のみ委託するという契約も可能です。

大規模修繕における発注者の業務負担を軽減したいならマネジメント業務をまとめて委託する、専門知識のなさをカバーしたいなら設計や施工の確認だけサポートしてもらうなど、必要に応じて契約内容を決めると良いでしょう。

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