施設賠償責任特約とは?個人賠償との違いや補償範囲を解説!
マンションの共用部分に関わる事故により、管理組合に損害賠償金の支払いが命じられる可能性があることはご存じでしょうか。
このような事態に備え、管理組合向けの保険に「施設賠償責任特約」を付けることができます。今回はどのような補償内容や対象外となるケースを解説しましょう。
施設賠償責任特約とは?
施設賠償責任特約とは、建物所有者の管理不全で起きた対人・対物事故について、主に損害賠償金を補償する保険の特約です。
マンション管理組合がこの特約を利用したい場合、基本的にはマンション共用部の様々な事故を対象とした「マンション総合保険」に付帯する必要があります。
施設賠償責任特約は保険会社によって呼び方が異なり、「施設賠償責任補償特約」や「マンション共用部分賠償特約」などとされている場合もあります。
個人賠償責任特約との違いとは?
マンション総合保険には、個人賠償責任特約というオプションもあります。これも損害賠償責任が生じてしまった場合に、損害賠償金を補償する特約です。両者にはどのような違いがあるのでしょうか。
例えば、マンションから物が落下し、直下に駐車されていた自動車を損壊させてしまったケースで考えてみましょう。
落下物がマンション住民の過失で転倒させてしまった植木鉢だった場合、住民に個人賠償責任が生じる可能性が高いでしょう。
この場合、個人賠償責任特約によって賠償金の支出を補うことが可能。つまり個人賠償責任特約は、人が原因で起きた損害に対して、補償を受けられるのです。
一方で、落下物がマンションの外壁にあるタイルだった場合、賠償責任は外壁の管理を行っている管理組合に発生します。
このケースでは施設・建物が原因で起きた損害であることを理由に、施設賠償責任特約の補償対象となります。
施設賠償責任保険のメリットと注意点
管理する建物に関する損害賠償金は、数十万~数億円に及ぶ場合もあります。これを保険金で補うことができるのが、主なメリットといえます。
また、保険料は月に数千円程度と少額の商品もあり、補償額の大きさに対して、保険料が比較的安いのも魅力的です。
さらに多くの商品では、賠償金だけでなく様々な支出をカバーできます。具体的な補償範囲を次から見ていきましょう。
建物管理賠償責任特約の補償範囲は?
建物管理賠償責任特約は、前述した外壁タイルの剥落のほか、エレベーターの故障、エントランスの管理不備など、共用部分を対象とした様々な事故に対応。主に次の支出について補償を受けられます。
・損害賠償金
・使用した消火器の再取得など、損害防止・軽減のための費用
・事故発生時の応急手当など、緊急措置の費用
・弁護士代などの訴訟費用
・被保険者が保険会社の求めに応じて支出した費用
なお、保険金の支払い条件については契約書に細かく記載してあります。上記の支出が生じた場合でも、条件によっては補償を受けられないケースもあるので注意が必要です。
保険の対象外となる主な事例は、次で紹介していきましょう。
施設賠償責任特約の対象外となるケース
法律上の損害賠償責任が発生しない場合、補償の対象となりません。
例えば、地震・台風・火災などの自然災害で偶然起こった損害に対しては、保険金が支払われない場合がほとんどでしょう。
また、当然のことながら故意に起こした事故に対しても補償を受けられません。
さらに損害賠償金以外は、基本的に保険会社から同意を得たうえで支出しないと、補償を受けられないので注意しましょう。
施設賠償責任特約はここに注意!
賠償金の上限金額を安易に決めない
施設賠償責任特約を付帯する場合、保険金の上限額を決める必要があります。
上限額が大きいほど、賠償金をカバーできる可能性が高まります。ただしその分、月々に支払う保険料が高くなることに注意が必要です。
なお保険料に影響する項目には、ほかの特約の付帯状況や保険対象となる施設の種類・規模、管理組合が手がける業務・行事の内容、保険期間などもあります。
上限額をできるだけ引き上げつつ、保険料を抑えたいのであれば、これらの項目にも注意しつつ慎重に検討するべきでしょう。
保険会社が示談交渉できない
相手方から損害賠償請求をされた場合、まずは賠償金額などについて話し合う「示談交渉」を行うのが一般的です。
示談交渉は、損害賠償責任保険の契約を結ぶ保険会社が、代わりに行ってくれるケースもあります。例えば自動車事故については、保険会社に示談交渉をする権利が認められています。
しかし施設賠償責任特約に関しては、保険会社が相手方との示談交渉をすることができません。
保険会社ができることは事故解決のアドバイスや書類作成、手続き方法など。「賠償金をいくらにするか?」といった、直接の交渉をしてもらえないので注意しましょう。
保険料などを考え慎重に検討を!
施設賠償責任特約は、建物が原因で起きた事故に関わる補償であり、個人賠償責任特約とは補償内容が異なります。
建物が原因で起きた事故でも、法律上の損害賠償責任が発生しない場合などは、補償の対象外となるので注意しましょう。
また、賠償金の上限金額を決める際には、月々に支払う保険料が変わることも考えて慎重に検討したいところですね。