「”楽器可”物件」のトラブルを解決したい!
マンションでよくある困った問題をテーマに、その解決方法を紹介していくこの連載。今回は「楽器可物件」のトラブルに目を向けたいと思います。
趣味で楽器の演奏をしたり、大音量で映像を見たりしたい人にとって「楽器可物件」は魅力的です。しかし、物件の数が少なく価格が高いほか、防音性が不十分なために騒音トラブルが生じる可能性も少なくありません。
そこで今回は、楽器可物件で起こるトラブルとその対処法について紹介します。
住居は原則、楽器の演奏はできない
音楽関係の学校に通っている人や仕事で音楽に携わっている人だけでなく、趣味でギターの演奏や歌唱をしたい人もいるでしょう。お子さんがピアノ教室に通っているため、家で練習させたいという人もいるかもしれません。
一般的には、入居時に楽器の演奏可否が事前に知らされ、同意のうえ契約します。楽器不可となっている場合、もしくは楽器可と説明されていない場合には、大きな音の出ない楽器であっても演奏はできないものと思って良いでしょう。
電子楽器を使用し、音はイヤホンやヘッドホンで聴いている場合であっても、ピアノやドラムを演奏する時の振動は、意外と近隣住居にも響くものです。
楽器可物件で起きる3つのトラブル
楽器の演奏をしたくて楽器可物件を選んだとしても、必ずしも自由に演奏できるわけではありません。よくある3つのトラブルを見ていきましょう。
【トラブル1】「楽器可=防音」ではない!
楽器可物件となっているからといって、防音性の高い物件とは限りません。実際に、楽器可物件で演奏をしていたらクレームが来たという事例もあります。
楽器の演奏を入居者に許可するうえで、物件に騒音対策がされているかどうかは問われません。入居者が集まらないために「楽器可」としているケースもあります。
ほかの入居者も楽器可物件であることを承知しているとはいえ、苦情が来ないわけではないのです。隣の建物まで音が聞こえている場合には、近隣住民からのクレームとなる可能性もあるでしょう。
特に、防音の記載などがない場合や「楽器相談可」となっている物件では、一般の住居と変わらない防音性であると考えられます。
【トラブル2】演奏できる楽器、時間は限られる
イヤホンやヘッドホンで音を聞ける電子ピアノやギター、ベースであれば演奏が認められるケースは多いです。ただし、音の響くピアノや管楽器、声楽などの歌唱は不可となるケースは珍しくありません。
また、物件によっては演奏時間が平日の9時〜21時などと決められている場合もあります。とはいえ、この基準も守っていれば苦情が来ないとは言い切れません。
近隣に小さなお子さんが住んでいる場合などは、子どもが起きてしまわないように平日の昼間ほど静かにしていて欲しいという人もいるでしょう。
いずれにしても、大きな音の出る楽器や、早朝や夜間の演奏は控えるのが無難です。
【トラブル3】家賃が高い傾向にある
物件数が少なくなかなか見つけにくいという問題もありますが、楽器演奏を許可していない物件に比べて家賃が高いという問題もあります。
防音が施されている物件や24時間演奏が可能な物件であれば尚更、数も少なく家賃も高い傾向です。音楽大学のある地域では比較的見つけやすいといえますが、立地が限られてくる懸念があります。
騒音トラブルを防ぐ対処法
心置きなく楽器を演奏したいなら、次の対処法を検討してみてください。
【対処法1】完全防音の部屋を探す
「楽器可」だけでは防音設備が整っているとはいえず、クレームになる可能性は拭えません。トラブルを避けるなら、「楽器防音」「楽器遮音」とされている物件を選びましょう。
「好きな時間に好きなだけ演奏したい」「映画やライブ映像を大音量で見たい」「ピアノやボイストレーニングの教室を開きたい」といった人は、完全防音かどうかといった基準で検討してみてください。
【対処法2】プレイルームを利用する
完全防音の物件は家賃が高く手が出せないという場合には、防音設備のある共用施設を利用するのも1つの方法です。
最近ではスポーツジムやゲストルームといった共用施設が充実しているマンションがありますが、ピアノが置いてあるプレイルームやシアタールームのあるマンションもあります。
楽器可物件だとしても自室の防音性に不安があるなら、普段はイヤホンなどをして音を抑えて演奏し、大きな音を出す際や仲間と集まって練習をする際にはプレイルームを利用してみてはいかがでしょうか。
利用時間や料金はマンションによってさまざまですが、住民であれば無料で利用できるところもあります。
【対処法3】防音材や遮音材を活用する
壁や床に貼り付けるタイプの防音材を購入し、部屋の防音性を高める方法もあります。大がかりな工事をしなくても、裏面がテープになっていて貼り付けるだけの防音壁や、ピアノと壁の間に立てかけるだけのパネル、床に敷くだけのマットもあります。カーテンも防音性能のあるものを選ぶとより効果的です。
また、部屋の一角に防音室を作ってしまうという手もあります。組み立て式の小さい部屋を設けられる「防音ボックス」が手軽です。段ボール製の簡易的なものから、換気扇付きのものまで、複数のタイプが市販されています。引っ越しや大がかりな工事が出来ない場合に、有効な選択肢となるでしょう。
以上、今回は楽器可物件に関するトラブルと、その対処法を紹介しました。
楽器可物件とされていても、音漏れしないとは限りません。トラブルを防ぐためにも、大きな音の出る楽器や早朝、夜間の演奏は控えましょう。また、できる限り防音マットを敷くなどの対策も行いたいところです。
気兼ねなく演奏をしたい場合には、完全防音の部屋や共用のプレイルームがあるマンションを検討してみましょう。
イラスト:カワグチマサミ
この連載について
【連載】これで解決!マンション暮らしのトラブル
複数の世帯が生活を送る分譲マンションでは、共用スペースの使い方やペットの飼育、ゴミ捨て場における利用マナーなど、思いがけないトラブルに遭遇する可能性があります。そこで、本連載『これで解決! マンション暮らしのトラブル』では、マンションでよく起こる困った問題の解決方法をテーマごとにご紹介。トラブル発生の防止や、万が一起こってしまった際の対応マニュアルとしてもご活用ください!