「空き巣」のトラブルを解決したい!
マンションでよくある困った問題をテーマに、その解決方法を紹介していくこの連載。今回は「空き巣」のトラブルに目を向けたいと思います。
「うちには高価なものは置いていないから狙われない」「高層階に住んでいるから大丈夫」と思っていても、実は高価なものが置いているかどうかや住宅の階数にかかわらず、空き巣の被害は発生しています。
そこで、空き巣に狙われやすい家の特徴とともに、マンションでもできる防犯について紹介します。
マンションの空き巣被害は意外と多い
警視庁から発表されている犯罪統計書「令和元年の犯罪」によると、侵入窃盗の認知件数は5万7,000件を超えています。
そのうち、発生場所が「一戸建て」のケースは2万5,374件で全体の約44%、「中高層(4階建以上)住宅」は2,364件で約4%、3階建て以下の共同住宅、テラスハウスなどを含む「その他の住宅」で6,186件で約11%となっています。
侵入窃盗には、留守時を狙った「空き巣」のほか、就寝時に侵入する「忍込み」や入浴や食事等をしているすきに侵入する「居空き」も含まれます。在宅時にも侵入される可能性があるのは恐ろしいですね。
注目したいのは、「中高層(4階建以上)住宅」でも被害が起きている点。屋上からロープを垂らしたり、外壁の足場を利用したりと、オートロックがあるマンションの最上階であっても、屋上への出入りが容易であれば侵入される可能性があります。近隣の建物を足場として侵入されるケースもあるようです。
狙われるのは「お金がありそう」より「入りやすそう」
侵入者はあらかじめ下見を行うケースが多いとされています。とはいえ、何週間も同じ家の住民を見張るのではなく、地域や建物の状況を2〜3回見る程度だと言われています。
警視庁「住まいる防犯110番」のホームページによると、侵入者が周辺の下見において最も見ているポイントは「人通りや一目が少ないか」となっています。次に続くのは「入りやすく逃げやすいか」「留守の家が多いか」。「お金がありそうか」という項目は4番目に挙げられており、割合も先の3つよりも大幅に少なくなっています。
家の下見においては、60%超の割合で「留守」かどうかを見ているようです。「入りやすく逃げやすい」かも50%近い割合で見られています。「お金がありそうか」は5番目の項目となり、約10%程度しか気にされていません。
最近は現金や高級品よりもスマホやパソコンといった電子機器が狙われる傾向にあるため、「お金を持っている家には見えないから大丈夫」「高価なものを置いていないから問題ない」とは言えないのです。
空き巣はどこから入ってくる?
警視庁発表の「令和3年度東京の犯罪」によると、侵入窃盗の経路は窓が43.6%、出入口が56.3%となっています。
侵入手段をみてみると、「無締り」が60.0%、「ガラス破り」が20.2%、ピッキングや合鍵などによる「施錠開け」が17.8%、かぎ穴の破壊や隙間にバールなどを差し込みによって強引にこじ開ける「ドア錠破り」が0.8%です。
つまり、玄関や窓の鍵のかけ忘れが、侵入を許してしまう大きな原因の一つだと言えます。ただし、痕跡が残らない施錠開けも無締りと分類されてしまう可能性も考慮すると、必ずしも不注意が原因とは言い切れないところもあるでしょう。基本的な施錠だけでなく、プラスアルファの対策はしておいたほうが良いかもしれません。
こんな家が狙われやすい! 主な4つの特徴
では、どのような家が空き巣など侵入窃盗の被害に遭いやすいでしょうか。マンションの場合に考えられる特徴を解説します。
【特徴1】オートロックに安心して鍵を掛けていない
オートロックのマンションであればセキュリティは万全だと思うかもしれません。しかし、戸数の多いマンションでは人の出入りが多く、他の住民の後をつけて侵入することはそれほど難しくないでしょう。
空き巣の滞在時間は長くても10分程度と言われています。「ちょっとコンビニへ」と思って鍵をかけずに出かけると、その間に侵入されてしまう恐れもあります。
オートロックだからといった気の緩みが泥棒に狙われやすい一因となってしまうのです。
【特徴2】ご近所付き合いがない
侵入者が周辺エリアを下見する際に最も見ているのは「人通りや一目が少ないか」です。
住民同士がすれ違っていても挨拶をしない、井戸端会議をしている人がいないなど、住民以外の人が敷地内に入っても誰も気に留めないような環境は、泥棒にとって最適な環境となってしまいます。
また、住まいる防犯110番によると、侵入者は「近所の人に声をかけられたり、ジロジロ見られた」場合に、犯行を諦めるようです。近隣住民との積極的な挨拶は防犯効果があるといえます。
【特徴3】単身者が多い
警視庁「令和元年の犯罪」によると、空き巣は主に10時〜16時、特に10時〜12時の間に発生しています。就寝時を狙った忍込みは0時〜4時の間に行われています。
昼間に不在となる確率の高い単身者の家は行動パターンも読みやすく、狙われやすい傾向にあります。同じマンションの他の住民も単身者が多い場合、近隣住民が気づいてくれる可能性の低さも狙われやすい一因でしょう。
【特徴4】ポストに郵便物が溜まっている
郵便物を溜めていると、不在にしている時間が長いのだと察知されます。また、郵便物の不在通知が確認され、留守の時間がバレてしまう可能性も。こまめにポストを確認しないのは単身者だからだと判断される可能性が高いほか、防犯意識が低いと見なされ、犯行の対象とされる恐れがあります。
今からできる4つの対策
では、侵入窃盗に備えてどのような対策を取れば良いでしょうか。マンションでも手軽にできる方法を解説します。
【対策1】玄関の鍵を2つにする
空き巣などの侵入窃盗犯は、侵入に5分かかると約7割はあきらめ、10分以上かかるとほとんどの侵入者があきらめるとされています。
工事が要らず、強力な両面テープで取り付けられる補助錠もあるため、マンションでも取り付け可能です。防犯意識の高さならびに解錠に時間がかかると示せるだけでも、防犯効果があります。
電子錠やオートロックにできる後付けの鍵もあるため、防犯に加えて利便性も上げられるアイテムを取り入れるのも良いかもしれません。
【対策2】ドアスコープカバーを付ける
ドアスコープを外から覗くと、生活状況までは見えないまでも、不在か在宅か程度ならわかってしまいます。
また、ドアスコープは力を加えると外すことができ、そこから特殊な器具を差し込んで直接鍵のつまみ(サムターン)を回して解錠する手口が取られるケースもあります。
カバーをつけて普段は外から覗けないようにするほか、テレビ付きインターホンがある場合はドアスコープは使わないと割り切り、テープなどで塞いでしまうのもひとつの手です。
【対策3】窓に補助錠を付ける
窓ガラスは防犯ガラスでもない限り、数秒程度で割られてしまいます。窓に取り付けられている締め金具「クレセント錠」はもともと防犯の効果はなく、窓ガラスの気密性を高める役割でしかありません。
そのため、室内側のサッシの上下に、窓が開かないようストッパーの役割を果たす補助錠を付けましょう。ガラスを破壊する手間が増えれば、それだけ侵入者が諦める可能性が高まります。
【対策4】防犯フィルムを貼る
防犯ガラスは2枚のガラスの間に破りにくい素材(中間膜)を挟んだものです。普通の1枚ガラスがたった数秒でたたき割れてしまうのに対し、防犯ガラスは長いもので30分程度バールで叩き続けてやっと割れる程度の耐久力を誇ります。
しかし、防犯ガラスへの交換は中間膜の素材にもよりますが、1㎡あたり約40,000円〜100,000円程度の費用がかかります。
防犯フィルムであれば、1枚あたり約20,000円〜50,000円程度で取り付けられるとともに、ガラスの交換が認められていないマンションでも適用可能です。
防犯フィルムを選ぶ際は、「CPマーク」のついている製品を選びましょう。侵入者が侵入を諦めるとされている5分以上、侵入から防げると実証された製品に付けられるマークです。
また、CPマークの防犯フィルムは業者のみが貼れるため、正しく貼れなかったために防犯効果が弱まってしまう事態にはなり難いです。製品にマークがついていることは外から見てもわかるため、それだけで防犯に効果があります。
以上、今回は空き巣をはじめとする侵入窃盗の被害の実態とともに、その対処法を紹介しました。
高額な防犯設備を整えずとも、ホームセンターやオンラインで購入できる防犯グッズもあります。防犯意識を高めること自体が侵入者への抑止力になるため、この機会に自宅の窓や玄関の防犯を見直してみてはいかがでしょうか。
イラスト:カワグチマサミ
この連載について
【連載】これで解決!マンション暮らしのトラブル
複数の世帯が生活を送る分譲マンションでは、共用スペースの使い方やペットの飼育、ゴミ捨て場における利用マナーなど、思いがけないトラブルに遭遇する可能性があります。そこで、本連載『これで解決! マンション暮らしのトラブル』では、マンションでよく起こる困った問題の解決方法をテーマごとにご紹介。トラブル発生の防止や、万が一起こってしまった際の対応マニュアルとしてもご活用ください!