「シックハウス症候群」のトラブルを解決したい!
マンションでよくある困った問題をテーマに、その解決方法を紹介していくこの連載。今回は「シックハウス症候群」のトラブルに目を向けたいと思います。
ダニやハウスダスト、建材や壁紙の化学物質が原因で体調不良を引き起こす「シックハウス症候群」。ほうっておくと症状が悪化する懸念もあります。
では、これらのトラブルにはどのように対処すれば良いでしょうか。シックハウス症候群が起きる原因とともに対処法についても解説します。
シックハウス症候群とは?
住宅の建材や壁紙、家具などから発生する化学物質や、ダニ・カビ・ハウスダストといった室内空気汚染によって引き起こされる健康被害は「シックハウス症候群」と呼ばれています。特定の症状を医学的に示す呼称ではなく、住まいによって引き起こされる健康被害の総称です。
症状には、めまいや吐き気、頭痛、のどの乾燥、倦怠感、じんましんなどがあり、免疫アレルギー反応等によるものと考えられています。影響は個人差があるため、同じ部屋にいる全員に症状が出るとは限りません。
新築住宅で起こると言われていますが、現在は使用する建材や壁紙の化学物質量は建築基準法などで規制されています。むしろ自分でリフォームやDIYをする際に注意が必要と言えるでしょう。
主な4つの原因
シックハウス症候群が起きる原因はどこにあるでしょうか。身近な原因を4つ紹介します。
【原因1】壁、壁紙
壁や壁紙に用いられている接着剤や塗料、防カビ剤には、シックハウス症候群を引き起こしやすいホルムアルデヒドやトルエンといった化学物質が含まれています。こうした化学物質が室内に放散され、人体に影響を及ぼすのです。
なお、現在は建築基準法によって換気設備の設置が定められたり、JIS・JAS規格により建材のホルムアルデヒドの等級が示されたりと、シックハウス症候群を防ぐ取り組みがされています。
「住宅性能表示制度」では新築住宅の性能を評価する項目の一つに、内装材のホルムアルデヒド放散量を等級で表示する項目があります。シックハウス症候群の懸念がある人は確認しておくと良いでしょう。
【原因2】カーペット
カーペットやじゅうたんに含まれている難燃剤(素材を燃えにくくする薬剤)によってシックハウス症候群が引き起こされるケースもあります。
また、化学物質による影響だけではなく、ダニやカビの発生によって健康被害が起こる可能性も少なくありません。新築住宅や新品でなくとも、掃除や換気が充分でないためにシックハウス症候群になってしまう可能性があります。
【原因3】家具
デスクやベッド、収納棚など、家具にはホルムアルデヒドを含む接着材が用いられています。住宅の建材や壁紙は建築基準法によって規制されるようになったものの、家具の規制は住宅ほど進んでいません。
社団法人日本家具産業振興会では、家具業界における自主表示制度としてホルムアルデヒドの放散が少ない家具には「室内環境配慮マーク」を導入しています。
しかし、全ての家具に室内環境配慮マークが付けられているわけではなく、特に輸入家具に問題が見られるケースが少なくありません。インターネット等で輸入家具を購入する場合には、環境配慮マークの有無を確認してみましょう。
【原因4】芳香剤、防虫剤
芳香剤や消臭剤に含まれるパラジクロロベンゼンという化学物質も、健康被害を及ぼす可能性のある物質として、厚生労働省によって室内濃度の基準値が設けられています。
新築でもなく掃除もこまめにしているにもかかわらずシックハウス症候群の症状が出た場合には、衣類の防虫剤やトイレの芳香剤が原因かもしれません。
シックハウス症候群の対処法
シックハウス症候群の症状が見られた場合はすぐに病院に行き、医師の診察を受けましょう。ただし、症状の原因が住まいにある場合、根本的な原因を解決しなければ症状が緩和されない恐れもあります。発症または発症する懸念がある場合の対処法を解説します。
【対処法1】換気をする
ホルムアルデヒドをはじめとする化学物質の放散を抑えるには、室内の風通しを良くする必要があります。
また、化学物質の濃度を下げる目的以外でも換気は重要です。窓や壁の結露、部屋干しした衣類をそのままにしておくと、細菌やカビ、ダニが繁殖しやすくなります。換気して湿度を下げることで、室内環境を整えましょう。
【対処法2】こまめに掃除をする
ダニやダニの死骸、ふんなどはアレルギー反応を起こす原因です。室内に食べかすやフケが残っていると、ダニのエサとなってしまい、さらに繁殖させてしまう恐れがあります。室内の掃除をはじめ、衣類や寝具の洗濯をこまめに行い、細菌やダニの繁殖を抑えましょう。
【対処法3】素材を変える
壁紙や床材、カーペットやカーテンなど、変えられるアイテムは変えるのも一つの手です。
建材に用いられるJIS規格ではホルムアルデヒドの等級が表示されています。ホルムアルデヒドの放散量は、F☆☆☆☆、F☆☆☆、F☆☆、F☆と表され、☆の数が多いほど放散量が少ないものです。一部規制の対象外で安全と見なされている木材やプラスチック材などには表示がないものもあります。
また、家具に用いられる室内環境配慮マークはF☆☆☆☆またはF☆☆☆のもので、塗料にはホルムアルデヒドが含まれていないことを意味します。こうした規格やマークを参考に、素材や家具を変えてみると良いでしょう。
施工業者や売主に責任を問える?
もしも新築時やリフォーム時に壁紙や建材の影響でシックハウス症候群になってしまった場合、施工業者や売主に責任を問えるでしょうか。
結論として、施工業者や売主に過失があると認められ、慰謝料や賠償金を支払ったケースはあります。ただし、基準値以上の有害化学物質が測定されない場合や、施工以前から症状が見られた場合など責任を問えないケースもあります。
事前にシックハウス症候群が懸念される場合には、建材の基準や換気の徹底など、シックハウス対策が取られているかどうか施工業者や売主に確認し、充分に話し合いをしておくことが大切です。
以上、今回はシックハウス症候群をテーマに、トラブルの原因とその対処法を紹介してきました。
シックハウス症候群は人によって影響度が異なるため、家族間でも罹患する人とそうでない人がいます。ほうっておいても症状が収まらず、むしろ悪化する場合もあるため、適切な対処や予防が必要です。
新築に入居する場合やリフォームをする場合には、施工会社や売主に確認しておくとシックハウス対策を講じてくれたり、有害な化学物質の含有量などを調べたりしてもらえるでしょう。
また、新築でなくともシックハウス症候群になる恐れはあるため、換気や掃除を徹底してカビやダニ、ハウスダストの発生を防ぐことが大切です。
イラスト:カワグチマサミ
この連載について
【連載】これで解決!マンション暮らしのトラブル
複数の世帯が生活を送る分譲マンションでは、共用スペースの使い方やペットの飼育、ゴミ捨て場における利用マナーなど、思いがけないトラブルに遭遇する可能性があります。そこで、本連載『これで解決! マンション暮らしのトラブル』では、マンションでよく起こる困った問題の解決方法をテーマごとにご紹介。トラブル発生の防止や、万が一起こってしまった際の対応マニュアルとしてもご活用ください!