大規模修繕における経営事項審査の重要性! 審査結果の見方も解説
大規模な修繕工事は費用も高額になるため、修繕業者は慎重に選定したいですよね。
今回は選定に役立つ、経営事項審査の概要を紹介します。審査項目や数字の読み解き方も解説するので、是非業者の選定に活用してください。
経営事項審査とは?
経営事項審査とは、審査基準日時点での建設業者の経営状態や経営規模を数値化し、客観的な評価を下す審査です。「経審(ケイシン)」とも呼ばれています。経審を受けた建設業者は、総合評定値が記された「総合評定値通知書」を取得できます。
公共工事の発注者は「総合評定値通知書」の提出を入札参加の要件にしています。これは、公共工事への入札参加を希望する建設業者は経審を受けるよう、1994年に改正された建設業法で義務づけられたためです。
また、公共工事の発注者である官公庁は、総合評定値通知書に記載された「総合評定値」を基準に建設業者のランクを認定します。ランクにより入札に参加できる公共工事の発注予定価格の範囲が決定するため、建設業者にとって重要な審査です。
大規模修繕における経営事項審査の重要性
経審は、マンションの管理組合が大規模修繕工事を発注する際にも役立ちます。
大規模な修繕工事はマンション全体における一大イベントです。規模が大きくなると施工金額も高額になる可能性が高まります。大きな予算をかけてマンションの資産価値に関わる修繕工事を実施する以上、居住者に納得してもらえる修繕業者を選定しなければなりません。工事会社の実力や経営状況などがわかる経審は、管理組合にとっても重要な選定基準となります。
大規模修繕で経営事項審査の総合評定値を確認する方法
「経営事項審査の総合評定値」は建設業情報管理センターの公式ホームページで確認できます。建設業情報管理センターは、建設会社の情報管理をする一般財団法人です。
経審は「経営状況」と「経営規模」、「技術力」、「その他の審査項目(社会性等)」について数値化し評価するもの。大規模修繕の発注先として候補に入れる工事業者の経営状態をチェックしたいのであれば、経営規模を表すX1とX2、経営状況を表すYの各評点を見てみましょう。関係する項目のなかでも、経営規模は40%、経営状況は20%の影響を及ぼします。
経営事項審査の見方
総合評定値(P点)
経審によって評価された点数を見る際に、一番重要なのが「P点」です。P点は総合評定値といわれ、「土木一式工事」「建築一式工事」など工事種別ごとに点数がつきます。この点数が業者としてのいわば「総合成績」です。X1点、X2点、Z点、Y点、W点といった、詳細な評価項目を合計して算出されています。
算出式は以下のようになります。
総合評定値P点=X1×0.25+X2×0.15+Y×0.2+Z×0.25+W×0.15
つまり総合評定値をあげるためには、 X~W点の各項目の点数をあげる必要があります。それぞれの点数の見方について見ていきましょう。
完成工事高(X1点)
X1点は、「完成工事高」と呼ばれる工事の売上高を評価する項目です。総合評定値であるP点には、X点のうち25%が反映されます。
完成工事高は、審査基準日の直前2年または3年の完成工事高を平均して算出された数値です。建設会社の売り上げは年度によって波があるため、会社の規模を正確に把握するために年度単位ではなく数年の平均値で評価されます。2年平均か3年平均かは、事業者が選択可能です。
経営規模評点(X2点)
X2点は「現在までの利益をどれだけ蓄えているか」と「直前2年間でどれだけ利益を生み出したか」を評価する項目です。自己資本額を評価した数値と平均利益額を評価した数値から算出されます。
自己資本額とは、自分で集めた返済する必要がないお金です。公共工事の財源は税金であるため、発注した建設会社が途中で倒産するなどの心配がないように自己資本が多い会社が高得点を得られる仕組みになっています。
平均利益額は、営業利益と減価償却実施額の合計を取る方法で算出され、直前2年の平均が評価の対象となります。減価償却費が多いほど評価が上がるため、機械設備などの固定資産を多く有する場合に有利です。
P点に反映されるのは15%です。
経営状況(Y点)
Y点は経営状況を評価する項目です。経営状況分析評点といわれており、主に建設業財務諸表の内容を点数化した数値です。Y点については行政庁ではなく、登録経営状況分析機関が分析を行い点数を算出しています。
審査項目は、純支払利息比率、負債回転期間や売上高経常利益率、総資本売上総利益率など。「負債抵抗力」「収益性・効率性」「財務健全性」「絶対的力量」の4つについて、それぞれ2指標ずつ計8指標の観点から判断されます。
Y点の数値が高いほど、優れた財務体質の会社であるといえるでしょう。P点に占める割合は20%と高く、こちらも全業種共通の点数です。
技術職員数及び元請完成工事高(Z点)
Z点は「技術職員数」と「元請完成工事高」を評価する項目です。P点に占める割合は25%と他の評価項目に比べて高くなっています。
技術職員数の項目において、同一の技術者が加点できる業種は2業種まで。そのため、技術者を多く雇用すると点数が高くなります。また、上位の資格を持っている技術者や監理技術者講習を修了している技術者は実務経験者より高く加点されるため、会社が資格取得を支援しているかどうかが重要です。
元請完成工事高は、注文者から直接請負った工事の完成工事高を示しており、マネジメント能力を評価する観点から審査項目に加えられています。
その他審査項目(W点)
W点は、会社が社会的な責任を果たしているかどうかをチェックする項目です。会社の社会性を9つの項目から判断し、点数を算出します。P点に反映されるのは15%となっています。
この項目には減点される指標が多く存在しており、例えば各種社会保険(雇用保険、健康保険、厚生年金保険)に加入していない会社は40点ずつ減点されます。
確認項目は労働福祉の状況や営業年数、法令遵守や研究開発の状況など。社会の状況によって変化しやすい項目です。
経審を大規模修繕工事の業者選びに役立てよう
経営事項審査は、工事業者の技術力や信頼性を確認できる重要な評価軸です。
大規模な修繕工事を行う際の、業者の選定基準として利用することも可能。経審の結果は建設業情報管理センターの公式ホームページから誰でも確認できるため、大規模修繕工事の業者を選定する前に管理組合で必ず確認しておきましょう。