理事・管理

マンションの貸借対照表の勘定科目と、監査の注意点を解説!

2022.01.27
マンションの貸借対照表の勘定科目と、監査の注意点を解説!

マンションの区分所有者から集められたお金はきちんと管理することが重要です。お金がどのように使われたか、現在どんな財政状況なのかは「貸借対照表」を確認することで分かります。

貸借対照表を読み解くためには、お金の分類である「勘定科目」を理解することが必要です。勘定科目は項目ごとにそれぞれ監査で気をつけるべきポイントがあります。この記事では、勘定科目と監査での注意点を解説します。

マンション会計の貸借対照表とは?

貸借対照表は管理組合の資産や負債を記載する

貸借対照表とは、マンション管理組合の資産や負債などを記載する表のこと。貸借対照表では、右側に「負債の部」「正味財産の部」、左側に「資産の部」を記入します。「負債の部」と「正味財産の部」の合計と「資産の部」の合計は必ず一致するので、バランスシートとも呼ばれます。

貸借対照表は収支報告書と同様に重要な財務関係書類です。貸借対照表の作成は総会での報告に向けた仕上げ作業ともいえます。

収支報告書とは何が違う?

収支報告書とは、マンションの収入・支出の総額やこれらの明細などを記載した報告書のことを指します。収支報告書には2種類あり、毎月報告する月次収支報告書、1年間の会計を報告する年次決算報告書が存在します。

月次報告書は、その月の収支報告書のことです。「一般会計(管理費会計)」と「特別会計(修繕積立金会計)」に分けて作成されます。管理会社が作成することが「マンション管理適正化法」という法律で義務づけられており、作成された月次報告書は、1ヶ月以内に書面で管理組合の管理者等に交付されます。管理会社によっても異なりますが、月次報告書には貸借対照表、未収金一覧表等を添付することが一般的です。

年次決算報告書は、1年間の会計について報告するための書類のこと。決算期ごとに管理会社が作成します。年次決算報告書を提出する際には、必要に応じて貸借対照表決算日の預金残高証明書等も合わせて提出を行いましょう。年次決算報告書には貸借対照表、決算日の預金残高証明書等を添付します。さらに、来年度の予算素案書も作成し提出します。

しかし、収支報告書の管理費収入や修繕積立金収入の予算実行率が100%になっていても、本当にお金が回収されているかどうかを調べるためには、貸借対照表を見る必要があります。収支報告書だけを確認していると、実際の預金や現金が足りなくなってしまうかもしれません。収支報告書だけでなく、貸借対照表も見ておくことが大切です。

貸借対照表の勘定科目とは?

勘定科目とは、貸借対照表に費用・収益を記入していく時にお金を項目別に分類する「ラベル」のことで、現金、普通預金、借入金、未払金、繰越金などがあります。項目は「資産」「負債」に分けて各勘定科目ごとに記載します。例えば、先に例に出した現金と普通預金は「資産」、借入金と未払金は「負債」、繰越金は「正味財産」になります。

資産項目の種類

では、ここからは資産項目の種類と監査の際の注意点について解説します。

【資産項目の種類1】現金・預金・定期預金

文字通り、一般的な現金・預金・定期預金のことです。監査のときは、現金、普通預金や定期預金通帳などの現物を確認し、資産に計上されている現金、預金のすべてが実在するかを確認します。預金は金融機関発行の残高証明書と突き合わせて確認を行いましょう。この残高証明書は、不正を見逃さないためにもコピーではなく必ず原本を確認します。

【資産項目の種類2】未収入金

管理費や修繕積立金等、入金されていないものを発生主義で計上します。発生主義とは、実際の入金や支払いがまだであっても、取引が発生したときに計上する会計処理です。

作業としては、未収金明細書を確認し、正確に計上されているかを調べることと、滞納している組合員への督促状況の把握の2つがあります。

【資産項目の種類3】保険料

管理組合が積立型損害保険に加入している場合の支払保険料は、経理処理して計上します。積立型損害保険の保険料には積立保険料、危険保険料があり、損害保険の契約期間が1年以内の場合は当期損害保険料になります。それぞれの処理は次の通りです。

①積立保険料は積立金として資産計上
②危険保険料・前払保険料は未経過保険料として資産計上
③当期損害保険料は経過保険料として費用計上

また、数年単位の長期保険料を一括払いした場合など、既に支払いが済んでいて当決算期の費用に計上しないものは、前払費用に計上します。前払費用として計上した費用は、来期に保険料に振り替えましょう。

【資産項目の種類4】有価証券

現金や預金と同じく、監査では有価証券の実在性を確かめることが重要です。有価証券を手元に保有している場合は実物を確認します。有価証券を金融機関へ預けている場合は残高証明書を確認しましょう。

管理組合の資産運用の方針は、ローリスク・ローリターンで行うことが一般的です。運用リスクを減らすためには、元本割れの恐れがある金融機関に投資されていないかなどもしっかりと確認しておきましょう。

【資産項目の種類5】前払金・仮払金

前述した長期保険料の一括払いなど、次年度に計上すべき費用で当年度に支払ったものが前払金です。領収証などで当期に支出されているか確認しましょう。また、一時的に支払ったものの、管理組合から支出すべきか不明な場合は仮払金に仕訳します。当期は資産に計上され、次期以降に支出項目へ振り替えます。監査では、この支出項目への振替が適切かどうかを確かめます。

負債項目の種類

負債項目の管理も必要

続いて、負債項目の種類についても見ていきましょう。

【負債項目の種類1】未払金

会計期間中に工事や修繕などが行われたものの、支払いが来期になるものは未払金として計上します。未払金を勘定に入れることを忘れていると、来期に予算超過となってしまうことも考えられるため、しっかりと精査しておきましょう。

【負債項目の種類2】前受金・仮受金

所定の支払日よりも前に管理費の支払いがあった場合などは前受金で計上します。前受金は当期の収入ではありません。誤って当期に計上されていないかを確認します。

仮受金は、管理組合の収入になるか不明でありながら、一時的に入金された金額のことを言います。決算時には精算し、適切な勘定科目に計上しておくことが基本なので、なぜ仮受金が計上されているのかをチェックしましょう。

【負債項目の種類3】預り金

駐車場の敷金など、将来返さなければいけない債務の年度末残高のことを預り金といいます。各預り金が、どの債務分に該当するのかは、申込書や契約書などで突き止めましょう。

【負債項目の種類4】借入金

大規模修繕などのために、管理組合が借金した金額が借入金です。借入金の項目では、年度末の借入金残高を計上します。残高は金融機関の残高証明書を入手して確認しましょう。

勘定科目は貸借対照表を読み解く鍵!

貸借対照表はマンションの財産状況を表した重要書類で、必ず作成しなければなりません。また、収支報告書の管理費収入や修繕積立金収入の予算実行率が100%になっていても、お金が回収されているかは貸借対照表を見なければわかりません。

この重要な貸借対照表を読み解くためには勘定科目を理解する必要があります。それぞれの勘定科目を理解し、正しく計上できるようにしましょう。

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