団地型マンションの大規模修繕は棟別で積立金に格差がある?
集合住宅には「団地・マンション・アパート」などさまざまな呼び方があります。そのなかでも公営住宅やUR賃貸住宅などのように、同じ敷地内に複数の共同住宅を建てたものが「団地」や「団地型マンション」と呼ばれます。団地型マンションには複数の棟がありますが、大規模修繕の費用はどのように積み立てていくとよいのでしょうか。
団地型マンションにおける大規模修繕の会計方法
団地型マンションでは、主に次の3つの方法で修繕積立金が管理されています。
(1)団地全体一括会計
団地内の土地や付属施設だけでなく、各棟の修繕まで含めてすべて団地全体で一括管理する方法。一つのお財布からすべての修繕費用がまかなわれるイメージです。
(2)団地修繕積立金+全住棟一括会計
土地や付属施設に関する会計のみを、団地修繕積立金からまかなう方法。それとは別に区分所有建物の修繕費用を積み立てますが、すべての棟をまとめて管理します。お財布は二つあるイメージです。
(3)団地修繕積立金+各棟修繕積立金
土地や付属施設に関する会計は団地修繕積立金から、そして各棟の修繕積立金は棟別に積み立てていく方法です。1号棟は1号棟で会計、2号棟は2号等で会計……といったように棟の数だけお財布の数は増えていきます。
団地型マンションの大規模修繕は棟別格差がある
団地には似たような建物が複数並んでいるように見えても、実は建物の規模感や階数は違うことがほとんど。そのため特に「仮説足場・塗装・防水工事」にかかる費用は、棟ごとに大きな差がでることもあります。
また分譲時期によって、棟別に築年数の差がついていることも。劣化程度も変わってくるため、他棟とは修繕のタイミングがずれたり、修繕費の棟別格差が生じたりすることもあるでしょう。
団地型マンションの大規模修繕は棟別会計が理想的
団地全体での一括会計をとっている団地型マンションも少なくありませんが、建物ごとに工事費や築年数が大きく異なる場合は、棟別会計を取った方が公平です。
棟別に修繕積立金を管理することで、棟の実態に応じた費用を積み立てることができます。また一部の棟にスロープやエレベーターをつけるなど、棟ごとの異なるニーズにも対応しやすくなるでしょう。
実際に団地型マンションを想定して作成された標準管理規約では、次のように規定されています。
第30条 管理組合は、次の各号に掲げる費用ごとにそれぞれ区分して経理しなければならない。
一 管理費
二 団地修繕積立金
三 各棟修繕積立金
2 各棟修繕積立金は、棟ごとにそれぞれ区分して経理しなければならない。
団地型マンションの修繕積立金の種類
棟別会計の団地型マンションの修繕積立金は、団地修繕積立金・各棟修繕積立金の2種類に分けて管理します。
(1)団地修繕積立金
団地修繕積立金とは、団地全体の共用部(敷地・集会所・管理人室・公園など)の修繕に使われる積立金です。すべての棟における所有者の土地の共有持分に応じて、金額が計算されます。各棟の管理組合とは別に団地管理組合を設置して管理します。
(2)各棟修繕積立金
各棟修繕積立金とは、それぞれの棟の共用部(廊下・階段室・エレベーターなど)の修繕に使われる積立金です。その棟における所有者の共有持分に応じて、金額が算出されます。各棟修繕積立金を管理するのは、棟ごとに設置された管理組合です。
団地型マンションの修繕積立金の問題点
これまで一括会計をしてきた団地のなかには、棟別会計への移行に消極的な団地も少なくありません。棟別会計へ移行するには、各棟の修繕の実態を把握したうえで一括会計での修繕積立金残金を各棟修繕積立金へ分配し、新たに長期修繕計画を立てる必要があります。高齢化した団地には特に負担が大きいでしょう。
一括会計でありながら、棟によって異なる修繕積立金を設定して、棟別格差を是正する方法もあります。絶対にすべての団地が棟別会計に移行しなければならないというわけではないため、各団地の実情に合わせた運営方法を選んでいくとよいでしょう。
団地型マンションの実情に合わせた大規模修繕をしよう
団地型マンションでは、棟によって建物の規模や築年数が違うことから、修繕費に差が生じるケースが多くあります。そのため団地修繕積立金と各棟修繕積立金に分けて会計するのが理想的です。しかしいまだ団地全体の一括会計が続いている団地も少なくありません。棟別会計への移行について、なかなか合意がとれないこともあるでしょう。団地の実情に合わせたスムーズな運営をするためにも、専門家に相談しながらこれからの運営方法について模索していきましょう。