
マンションの共用部分はどこから? 専有部分と専用使用部分の違いは?
マンションの各住戸の入り口となる玄関ドア。マンション暮らしをするなかで、「防犯や断熱の性能向上のために新しい玄関ドアに交換したい!」と思う人もいるかもしれません。しかし、基本的にマンションの全住戸が同じタイプの玄関ドアを使用しているのに、自分の住戸のドアだけを新しいドアに交換しても良いのでしょうか?
この記事では、マンション各住戸の玄関ドアの交換について解説していきます。
マンションの玄関ドアは高性能なドアと交換することで、防犯、断熱、遮音といった、多数の機能の向上に期待が持てます。また、「地震が起きた際に部屋に閉じ込められないか心配」という人は、変形に強い素材の鍵に変更しておけば、大きな地震が発生しても閉じ込められるリスクを軽減可能です。
また、デザイン性を高めたり、採光を考慮して明るい玄関にしたりといった工夫は、マンションの資産価値の向上にもつながるでしょう。
では、玄関ドアは、区分所有者が好きなタイミングで交換してしまっても良いのでしょうか。通常、ドアは部屋に居住する区分所有者しか使用しないため、一見専有部分であるように思えます。しかし、専有部分は部屋の「内側」のみを指すため、玄関ドアの外側はマンションの「共用部分」にあたるといえるのです。
したがって、玄関のドアはそれぞれの区分所有者の判断で交換するのではなく、修繕計画に基づき管理組合の費用で実施するべきであるといえます。
玄関ドアといっても、開き方や形状に違いがあります。代表的な6種類のドアを見ていきましょう。
・片開きドア
多くのマンションで採用されている一般的なドアです。扉が1枚で、片側が開きます。
・両開きドア
2枚の扉が左右に取り付けられており、どちらも開く仕様です。スペースが必要になるため、マンションでは各住戸ではなくエントランスなどで採用されます。
・親子ドア
片開きのドアの反対に、その2分の1程度の細い扉が付いています。普段は大きな扉を出入り口として利用し、荷物が多いときには小さい扉を開いて出入り口を広げられます。
・引き違いドア
扉が2枚組や4枚組になっており、いずれかのドアをスライドして開閉する仕組みです。
・片引きドア
扉をスライドして出入りする仕様のドアです。引き違いドアとは異なり、1枚のドアが取り付けられ、その扉だけを動かせる仕様です。
・両引きドア
片引きドアが左右に2枚付いているような仕様のドアです。十分な広さが必要なので、戸数の多いマンションでは採用しにくいといえるでしょう。
材質や環境によっても変わりますが、交換の目安はおよそ20年程度。特に、外廊下で雨風に晒されるドアは、比較的劣化が早いと考えられます。
金属製で錆びが目立つ場合や、木製で表面が腐食してしまった場合、ドア枠がゆがんでしまった場合には交換を検討しましょう。
カバー工法とは、既存のドア枠の上から新たなドア枠と扉を取り付ける工法です。ドア枠の取り外しの手間がかからないため、工事が1日以内と短時間で完了するのがメリットです。さらに、カバー工法の一種である「別体枠」であれば古い枠を全て隠せるため、外観をより綺麗に仕上げることができます。
ただし、枠がひと回り小さくなり、扉が開く幅も小さくなる点はデメリットといえるでしょう。
具体的な手順としては、
1.既存のドア本体を枠から外す
2.既存のドア枠の古い部品を取り外す
3.新しいドアの形に合わせて枠を切断する
4.切断面を削り平らにする
5.新しい枠を既存の枠に取り付ける
6.既存の枠を隠すように加工する
7.枠の周囲をシーリング処理する
8.新しいドアを取り付ける
となります。
持ち出し工法では、既存の枠の外側に新しいドア枠を設置して扉を取り付けます。カバー工法とは異なり、ドアの寸法を変えずに施工できるため、開口幅を狭めずにすむ点がメリットです。
一方、デメリットとしては、これまでのドアより外側に枠を設置するため、ドアが飛び出しているように見える点が挙げられます。
具体的な手順としては、
1.既存のドア本体を枠から外す
2.既存のドア枠のうえから新しい枠を取り付ける
3.新しいドアを取り付ける
となります。
扉交換工法とは、ドア枠を変えずに扉部分のみを交換する方法です。3つの工法の中で最も時間、コストをかけずにドアを交換できるのは大きなメリットといえるでしょう。
ただし、既存の枠をそのまま使用するため、ドア枠の塗装が劣化している場合は見た目がアンバランスになってしまうデメリットも。ドア枠の状況を確認した上で、工法を決定したいですね。
具体的な手順としては、
1.既存のドア本体を枠から外す
2.既存のドア枠の金具などを取り外す
3.新しいドアを取り付ける
となります。
マンションの玄関ドア交換にかかる費用の内訳は、新しいドアの価格と取付工事費、既存のドアの撤去処分費からなります。
素材や大きさにもよりますが、ドアの価格は15〜40万円。既存のドアの撤去処分費は1万円程度が相場といわれています。
また、ドアの取付工事費は工法によって異なります。最もコストの低い扉交換工法は約20万円、持ち出し工法は約30万円、カバー工法は40万円程度です。
工事を検討する際は複数の会社や方法で見積を取り、予算と工法ごとのメリット・デメリットを踏まえて検討しましょう。
玄関ドアの交換は、サッシを扱う業者、工務店、リフォーム業者などに依頼できます。
サッシを扱う業者は建具の専門家であり、玄関ドアの交換に詳しいといえるでしょう。ただし、広告を出していないケースが多く、管理会社などを通じて紹介してもらわない限り、なかなか依頼先を探しづらいかもしれません。
同様に、工務店も小規模な場合が多いため、費用は抑えられる可能性はありますが、依頼先を探すのは難しいといえます。
一方で、リフォーム業者は比較的広告を出している傾向にあります。一般ユーザーでも見つけやすい点はメリットですが、リフォーム業者が仲介役となって専門業者へ外注する場合もあるため、費用がかかるかもしれません。
ドアやその交換にかかわる改修商品メーカーとして有名なのが、YKK APとLIXILの2社。
YKK APの集合住宅向け改装商品には、カバー工法、持ち出し工法、扉交換工法に応じた商品が用意されています。
LIXILでは、デザイン性の高いドアも展開されています。なかでも「RSⅡシリーズ 改装用マンションドア」はスピーディに交換できるようです。
玄関ドアの交換は、屋上の大規模修繕工事などよりも、より各区分所有者の協力が重要になります。前述したように、マンションの玄関ドアは共用部分のため、管理組合が計画した交換工事を区分所有者が拒否することは原則不可能です。
しかし、円滑に作業を進めるためにも管理組合によるお知らせに加えて、管理会社による周知を徹底するようにしましょう。とくに一部の区分所有者が拒否した場合は、管理会社に説得を依頼した方がスムーズに進む場合があります。
最も注意したいのは鍵の交換。区分所有者が工事に立ち会えない場合は、事前に鍵を配布して対応するなど、工事後に部屋に入れなくなるトラブルを避けるような工夫が必要です。
玄関ドアは共用部分のため、ドアの交換は管理組合主導で行うことが望ましいです。区分所有者は原則拒否出来ませんが、トラブルを避けるためにも工事予定の周知を徹底したり、鍵の交換についても事前にきちんとやり取りをするようにしましょう。
玄関ドアを交換する工法は3種類あり、価格は撤去費用やドア本体の価格と合わせて30〜50万程度が相場になっています。それぞれの工法にメリットとデメリットがあるため、予算だけでみるのではなく、自分のマンションに合った工法がどれかも吟味したいですね。
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