理事・管理

管理費・修繕積立金の滞納は競売請求が可能! 要件、判例を解説

2023.07.21
管理費・修繕積立金の滞納は競売請求が可能! 要件、判例を解説

マンションに管理費や修繕積立金を滞納する区分所有者がいると、管理組合にとって頭の痛い問題です。

滞納問題が深刻化するようであれば、滞納者の区分を競売請求する方法での解決を検討するべきかもしれません。

この記事では、マンションで滞納が発生した場合の競売請求について解説していきます。

滞納問題は競売請求による対処が可能

滞納問題は一定の条件を満たせば管理組合から裁判所に競売請求できる

区分所有法59条では、管理費や修繕積立金を滞納する区分所有者がいる場合、一定の条件を満たせば、管理組合から裁判所に競売請求できると定められています。

競売請求とは、区分所有者の区分所有権と敷地利用権を強制的に売却するために裁判所に対して行う手続きです。請求が認められれば、滞納していた区分所有者をマンションから退去させられます。

ただし、競売によって無事に買い手がついたとしても、競売代金は滞納していた管理費や修繕積立金の支払いには充てられません。ここで発生したお金は、住戸の抵当権者への配当と競売請求の手続き費用として、管理組合が収める予納金の返還に充てられることになります。

滞納していた管理費や修繕積立金は、競売で区分所有を落札した人物に継承されます。そのため、管理組合は新しい区分所有者となる落札者に対して、前の区分所有者の滞納分を請求しなければなりません。

前の区分所有者には請求できない

前の区分所有者が滞納していたお金を新しい区分所有者に支払わせるのは、おかしな話に思えるでしょう。しかし、不公平にならないように制度が設計されているのでご安心ください。

競売では、裁判所が落札価格の目安となる売却基準価額を設定します。滞納があった住戸は、滞納額を考慮したうえで売却基準価額が決められるので、実質、滞納額分値引きされた金額で売りに出されている状態となるのです。

そのため、滞納されていた管理費や修繕積立金を支払ったとしても、トータルでみると金額に大きな差がでないので、新しい区分所有者が損をするわけではありません。

競売請求が認められる要件

強い効力があるため簡単には認められない

競売請求は住戸を強制的に競売にかけるという厳しい判断になるため、たとえ決められた費用の滞納を繰り返すような区分所有者であっても、簡単には認められません。

区分所有法では、競売を成立させるための要件として以下の3つを定めています。

①区分所有者共同の利益に反する行為があった、またはそのような行為をするおそれがある
②区分所有者の共同生活に著しい障害がある
③競売請求以外の方法では、問題の解決が困難である

さらに、裁判所に競売請求の手続きをする前に、管理組合内での承認も必要です。

競売請求実施には、マンション総会で特別決議による可決を得なければなりません。特別決議は、「組合員総数の3/4以上の出席」かつ「議決権総数の3/4以上の賛成」が得られないと可決とならないため、管理組合での同意をとるハードルも高いといえるでしょう。

競売請求に関する判例

ここからは、実際にあった競売請求が認められた判例と認められなかった判例を紹介していきます。

法律上、どのように判断されるのか参考にしてください。

競売請求が認められた判例

競売請求が認められた判例に、区分所有者が5年以上も滞納を続け、その額が約940万円にも達したケースがあります。

そのマンションは総戸数が12戸しかないため、1戸の区分所有者の滞納が全体に与える影響が大きいと判断されたのも判決に影響しました。実際に当時の管理組合は予算不足で改修工事が実施できない事態に陥っており、滞納による実害が発生していたとみなされています。

また、その区分所有者は過去にも2度滞納していた経緯があり、3回目ともなると最早話し合いによる解決は不可能だとみなされ、競売請求が認定されました。

別の事例では、滞納していた区分所有者が管理組合との話し合いに応じず、管理組合が相談していた弁護士の事務所に脅迫じみた内容の電話をかけるといった悪質な行為をしたため、請求が認められたというケースがあります。

このように、話し合いでの解決が困難だと明確に判断できる場合は、請求が認められやすいといえるでしょう。

競売請求が認められなかった事例

一方で、区分所有者が長期に渡り滞納をし続けていたにもかかわらず、競売請求が認められなかったケースも存在します。

あるマンションの事例では、区分所有者が約5年半に渡り、管理費・修繕積立金を総額約170万円滞納していました。しかし、その後になって当該の区分所有者の経済状況が好転したため、本人から管理組合へ和解の申し出がされています。

それにより、「競売請求以外に回収する手段がない」とはみなされず、管理組合からの競売の請求が認められませんでした。

他の手段での解決が困難であると立証できるかどうかは、大きなポイントとなると覚えておきましょう。

総会決議の前には弁明の機会を与えなければならない

先述の通り、競売請求をするためには、総会決議による管理組合全体での合意形成が不可欠です。

総会で決議を取る前には、滞納している区分所有者本人に弁明の機会を与えなければならないという点は、しっかり押さえておきましょう。これは、制度の公平性を保つために区分所有法で定められている要件です。

また、競売請求が認められたら、判決が確定した日から6ヵ月以内に競売の申立てをしなければならないという点にも要注意。判決後、申立てをしないまま6ヵ月以上経過した場合は、申立てができなくなるという区分所有法の定めがあるためです。

まずは滞納者と話し合いを試みる

マンションに管理費や修繕積立金を滞納する区分所有者がいる場合は、競売請求が可能です。

ただし、過去の競売請求に関する裁判では。請求が認められたケースと認められなかったケースの両方が存在しています。必ずしも、請求が通るとは限らないという点は要注意です。

競売請求は労力が大きく、しないに越したことはない手続きです。このような事態が発生した場合は、まずは話し合いでの解決を目指しましょう。

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