マンション管理適正化法とは?2022年に改正されたポイントも解説
マンションは適切に管理しないと、資産価値の低下や住環境の悪化を招きます。また、過去には管理会社が倒産したときに預けていた修繕積立金の回収ができないといったトラブルもありました。これらの問題解決を目的に施行されたのが『マンション管理適正化法』です。
この記事ではマンション管理適正化法の内容や施行された背景、2022年4月の改正のポイントを解説します。
マンション管理適正化法とは?
マンション管理適正化法は、2001年8月施行の法律で、正式名称を『マンションの管理の適正化の推進に関する法律』といいます。
適正なマンション管理の仕組みを定め、区分所有者全員でマンションの資産価値と快適な住環境を守る目的で制定されました。
具体的に定められたのは、管理の指針や管理組合の遵守事項、国・地方公共団体などの支援についてです。法整備前は管理会社への厳密な規制はありませんでしたが、マンション管理適正化法により、登録や専門家であるマンション管理士の配置が義務化されました。この流れは、宅地建設取引業で宅建業者に業務上の規制が課せられたのと類似しています。
なお、分譲マンションの増加や既存マンションの老朽化、居住者の高齢化にともなうマンションの管理体制不足を受け、本法律は2020年に改正されました。
マンション管理適正化法の主な内容
マンション管理適正化法の主な内容を以下に示します。
・マンション管理士を創設し、管理組合のサポート体制を作る
・マンション管理会社の業務に一定の要件や規制を設ける
・区分所有者は、マンション管理に関し、管理組合の一員としての役割を適切に果たすよう努める
・国や地方公共団体は、管理組合の求めに応じ、必要な情報および資料の提供その他の措置を講ずる
管理会社に一定の水準が求められるようになっただけでなく、マンション管理の専門知識不足に悩む管理組合が、管理会社や地方公共団体から適切なサポートを受けられるようになりました。
マンション管理適正化法の施行背景
1.管理組合の管理意識の低下
マンション管理適正化法の施行背景にはいくつかの要因があります。その一つが、管理の当事者である管理組合と区分所有者の管理意識の低さがあります。
マンションは適切に修繕を施さなければ、建物の老朽化が進み資産価値が落ちるだけなく、住民の安全にも影響を与えます。たとえば、老朽化が進んだマンションは構造部がもろくなり、災害時に倒壊するおそれがあります。
マンション管理適正化法で『管理組合は適正に管理するよう努めなければならない』と定めることで、管理組合の管理意識の向上を図りました。
2.管理組合の知識不足
マンション管理は専門性の高い知識が必要であり、簡単には担えないといった課題も。
管理組合や区分所有者では判断が難しい問題は管理会社に任せきりとなり、マンション管理についての問題意識や理解が高まらない状態がありました。
そこで、マンション管理適正化法の施行に付随して創立されたのが、管理組合がマンション管理について相談できる『マンション管理士』です。
マンション管理士は、管理組合の運営や建物構造上の技術問題といったマンション管理の専門的な相談事に関する助言や指導などの援助を主な業務とします。
3.管理組合・管理会社での会計の取り決めがない
マンション管理適正化法の施行前は、修繕積立金などの預かり金は管理会社の資産と合わせて保管されていました。そのため、管理会社が倒産した際に預けていた修繕積立金が債権者により差し押さえられてしまうといった事例もありました。
これを受け、マンション管理適正化法では修繕積立金などの預かり金は管理会社の財産とは分別して管理することとし、管理組合の資産保護を取り決めました。
また、それ以外にも
・帳簿作成や管理事務の報告
・管理業務主任者や委託契約締結時の重要事項説明義務
・違反した場合の改善命令や指定の取り消し
について明文化しました。誰でも簡単にマンション管理業に関われた時代から、適正化法を守れる管理業者のみがマンション管理に携わる時代へと変わったのです。
2020年マンション管理適正化法改正の背景
マンション管理適正化法は2020年に改正、2022年4月に改正法が施行されました。
制定から約20年が経過し、マンションを巡る状況は大きく変化しました。とくに老朽化したマンションの増加は社会的な問題に。2020年の時点で築40年越えのマンションは約81万戸、2030年には約200万戸まで上昇することが予想されています。
マンション自体の老朽化だけでなく、住人の高齢化や賃貸化による区分所有者の非居住化が進み、管理を適切に行えないマンションが増える懸念も。こうした高経年マンションの維持管理の適正化・再生を目的として、マンション管理適正化法は一部改正されたのです。
【2022年4月施行】マンション管理適正化法改正のポイント
改正で注目されたのは、取り壊しや建て替えに関して『外壁剥離に関する内容』や『バリアフリーに関する内容』を明文化した点。
また、自治体が必要に応じて管理組合に対する指導や助言を行い、管理組合作成の管理計画を認定するなど、自治体とのつながりを強化しています。
これにより、改正前は管理組合に求められたときのみ関与していた行政が、管理が機能していないマンションには必要に応じてサポートできるようになりました。
「管理計画認定制度」とは
「管理計画認定制度」は国が基本方針を示し、市町村などの地方公共団体がマンション管理を適切に助言・指導していくための制度です。こちらも2022年4月の改正施行時に定められました。
管理方法や資金計画、運営体制各種に設けられた基準をクリアすれば、地方公共団体から適切な管理計画を持つマンションとして認定を受けられます。
認定を受ける利点は、購入者のフラット35や、共用部分改修時の融資金利の優遇です。それだけでなく、固定資産税減額など税制上のメリットもあり、市場評価の上昇も期待できます。
マンション管理の意識向上を促す仕組みを国が推進
マンション管理適正化法により、マンション管理に対する意識向上や、自治体からのサポート体制充実が実現しました。また、施行まであいまいだった修繕積立金などの預かり金の管理方法も取り決められ、管理組合の資産も保護されるように。
さらに2022年の改正で、老朽化や住民の高齢化が進むマンションの管理サポートもより強化されました。
法整備が進むなか、管理の当事者である管理組合や管理会社、区分所有者は自分の資産に対する管理体制や管理方法を真剣に考えなければならない時代に変化したといえます。