連載:理事会役員超入門

「標準管理規約」はマンション生活の安心に欠かせないルール!

2020.04.20
「標準管理規約」はマンション生活の安心に欠かせないルール!

各マンションにある「管理規約」のベースといわれる「マンション標準管理規約(以下、標準管理規約)」は、直近では2016年に改正されました。そこで今回は、変更となった項目を踏まえて、標準管理規約の内容を改めておさらいしていきましょう。

標準管理規約は各マンションの「管理規約」のモデル

マンションには、駐車場やエントランスの使い方などのルールを示した管理規約がありますが、このモデルといわれるのは標準管理規約です。標準管理規約は国土交通省が定めたものであり、各マンションはこれをもとに、管理規約を作成するのが一般的です。ただ、標準管理規約に法的な拘束力はありません。とはいえ、基本的にマンションでは標準管理規約をもとにして作った管理規約に記載されたルールを守る必要があるといえます。

なお標準管理規約は、「団地のように複数の建物が集まっている」「建物の一部が店舗となっている」など、マンションの種類ごとに「単棟型・団地型・複合用途型」の3タイプが設けられています。

標準管理規約の主な内容

標準管理規約では、単棟型・団地型・複合用途型のいずれにも共通して、以下のような内容が記載されています。

1.管理組合が担う業務
2.総会における決議事項
3.管理費と修繕積立金の処理
4.修繕積立金の使途
5.管理費と修繕積立金に関する納入義務・分割請求禁止
6.専有部分と共有部分の区分
7.敷地及び共用部分の管理
8.義務違反者に対する措置及び違反行為に対する勧告・指示等
9.ペット飼育
10.駐車場の使用
11.専有部分の修繕
12.共用施設の使用等

任意で設定できる項目とできない項目がある

管理規約の項目のなかには、区分所有法に従って強制的に適用する必要のある「強行規定」があります。管理組合内の合意が取れていたとしても、別段の規約は設定できません。

強行規定の例としては、次のような内容があります。

・共用部分の重大変更の決議要件のうち議決権数(法第17条1項、21条、66条)
・規約の設定・変更・廃止に関する決議要件(第31条1項、68条1項)
・管理組合法人の設立・解散決議(第47条1項・55条2項)
・建替え決議の要件(第62条1項)
など

一方で、区分所有法に「規約で定得ることができる」などの記載がある項目は「任意規定」といって、管理規約で定めた内容を優先できます。

必ず定める項目と集会で決議してもよい項目がある

管理規約には、必ず定めておかなければならない「絶対的規約事項」と、規約以外の方法で定めてもよい「相対的規約事項」があります。

絶対的規約事項の例としては、
・専有部分と敷地利用権の分離処分を認める定め(第22条1項)
・敷地利用権の割合の定め(第14条4項)
・管理者の選任・解任方法に関する定め(第25条1項)
・議決権の割合及び普通決議の定数の変更の定め(第38条、39条1項)
などがあります。

相対的規約事項は、
・管理者の訴訟追行に関する定め(第26条4項)
・建物及び敷地ならびに付属施設の管理・使用に関する定め(第30条1項)
・集会の議長に関する定め(第41条)
などが挙げられます。

改正を経て時代に合った内容に変化している

標準管理規約は、もともと「中高層共同住宅標準管理規約」という名前で、1982年に建設省(現在の国土交通省)が制定しました。その後、分譲マンションが急激に普及したことにより、1997年に大きな改正を実施。さらに2004年1月の改正を期に、このとき名称も現在の標準管理規約へと変更されました。

直近では2016年に、高齢化による管理組合の担い手不足などを背景に大きな改正を行った標準管理規約。改正にともなって既存の管理規約も見直されたことで、法的に拘束力はないといえど、少なからず影響を受けたマンションも多いのではないでしょうか。

時代を経て改正を繰り返してきた標準管理規約ですが、2016年の改正では具体的に何が変わったのでしょうか。改めてその中心的な内容となる、7項目を整理していきましょう。

【変更点1】外部の専門家の活用要件を緩和

従来の標準管理規約では、マンションの購入者(区分所有者)でなければ、理事会の理事長や役員になれませんでした。しかし2016年の改正で、区分所有者ではない弁護士やマンション管理士などの外部の専門家でも、理事長や役員に就任することができるようになりました。

外部の専門家を活用しやすくした背景には、高齢化などにより管理組合の担い手が不足することで、管理が行き届かないマンションが増えてきたことなどが原因とされています。

【変更点2】駐車場の使用について「入れ替え制」を推奨

駐車場が全戸分存在しない場合、「入れ替え制」などを導入することを推奨。駐車場を利用できる人に偏りが出ないようなルールへと、改正されました。

また駐車場が全戸分ある場合であっても、平置き駐車場か機械式駐車場かなど、利便性や機能性に差異がある場合には、個々のマンションの事情も踏まえながら入れ替え制の導入を検討する必要があります。

【変更点3】専有部分の修繕は他に影響を与える場合に限り承認が必要

これまで専有部分を修繕する場合、あらかじめ理事長にその旨を申請し、書面による承認を得るといったルールがありました。しかし改正後は、修繕によって共用部分もしくは他の専有部分に影響を与える可能性がある場合に限り、書面による承認を得れば済むことに。ただ、工事後に修繕による影響が他に及んだ場合は、修繕を発注した区分所有者がその責任を取らなくてはいけません。

【変更点4】暴力団などの排除

暴力団の構成員には部屋を貸さない、また、管理組合の役員になれないとするルールが整備されました。

【変更点5】災害時などでの迅速な補修判断が可能に

災害時における補修などは理事長が単独で判断できることや、そのほか緊急時の応急修繕などは総会での承認を得ることなく、理事会で決定できることなどの内容も盛り込まれました。

【変更点6】理事会の代理出席の方法を規定

やむを得ない事情があり理事会へ出席できない場合、これまでは「その配偶者、もしくは親族に限り代理出席を認める」というルールがありました。

しかし改正後は「あらかじめ代理する者を定めておく」または、「議決権行使書などの提出で理事本人が意見を表明する」といった内容が追加されました。

【変更点7】管理費などの滞納に対する措置の明確化

管理費などを納付しない組合員に対して督促を行うなど、必要な措置を取ることがルールとして設けられました。また、滞納に対して取るべき措置を段階的にまとめたフローチャートも提示されました。

このように滞納している人に対する処置が明確化されたからかどうかはわかりませんが、2018年のマンション総合調査によると2013年は管理費の滞納戸数の割合が36.1%でしたが、2018年は24.4%まで減っています。

安心できる生活の近道は共通のルールを守ること

マンションで生活する人のニーズに合うよう、時代を経て内容を変化させてきた標準管理規約。そして多くの場合、その標準管理規約をもとにして作られた各マンションの管理規約を守ることこそ、複数世帯が集まるマンションで安心した生活を送るための近道といえるのではないでしょうか。

イラスト:大野文彰

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