足場工事は意外と高額!? 相場や費用を抑える方法まで解説!
マンションなど、高所の修繕や塗装に必要な足場工事。「付帯工事の1つに過ぎない」と思われつつも、足場の設置を含む仮設工事の費用は大規模修繕における全総工費の約2割にも及ぶといわれており、意外と高額です。
今回はそんな足場工事の種類をはじめ、相場や、費用を抑えるための方法などを紹介していきます。
足場を設置するメリット・デメリット
マンションの修繕や塗装にかかせない足場。設置するメリットやデメリットにはどんなものがあるでしょうか。
足場を設置すると作業が効率的に進むというのが最大のメリットです。作業員の安全を確保しながら、スムーズに上下の往来ができます。また、外壁塗装の際には塗料が飛び散らないための飛散防止ネットなどを取り付けられます。
一方、設置には費用と期間がかかってしまいます。設置に伴う騒音が、近隣住民からのクレームにつながってしまう懸念もデメリットと言えるでしょう。加えて、飛散防止シートなどで覆われることで日当たりや風通しが悪くなり、住民からの不満が募ってしまう可能性も考えられます。
設置される足場の種類は5つある
足場工事には決して安くない費用がかかりますが、作業の効率化と作業員の安全を守るために、なくてはならない工程です。高所での作業の安全性を担保する足場工事は人の命にも関わることなので、法律によって使用する部材(足場を構成するために必要な材料)や作業時の規則が細かく定められています。
ではこの足場工事によって設置される「足場」には、どういった種類があるのでしょうか。最初に、種類ごとの特徴を理解しておきましょう。
1.枠組み足場
足場工事のなかで最もポピュラーなのが、枠組み足場の設置です。
組み立てや解体が容易かつ強度が高いため、高層建築から戸建住宅の建築まで、幅広い現場で使用されています。
2.くさび式足場
戸建住宅や中低層のビル・マンションなどの工事で使用されるのが、くさび式足場です。
先端が細くなっている「くさび」を、ハンマーで叩きながら隙間に連結することが可能で、組み立て・解体にかかる時間を大幅に短縮できます。耐久性も高い足場ですが、高層の建物には使用できません。
3.単管足場
単管足場では、単管パイプとクランプという金具をもとに、各部材を組み立てます。
組み立てには比較的時間がかかりますが、各部材の組み合わせ次第で足場の幅などを柔軟に変えられるため、比較的狭い土地の工事で使用される機会が多いです。
4.吊り足場
吊り足場はその名の通り、屋上などから吊るすタイプの足場を指します。高層のマンションなど、地面に足場を組み立てることが難しい場所で使用される機会が多いようです。
ただ、地面で組み立てる足場以上に安全性に配慮する必要があり、専門の講習を受けた主任者を必ず置くなど、吊り足場を構築するためには厳しい条件が定められています。
5.先行足場
先行足場は、足場以外に「手すり」を設置する(手すり先行工法)足場のことです。「次世代足場」とも呼ばれます。
作業する場所すべてに二段構えの手すりを設置するため、作業員の安全性をより確保しやすくなります。先行足場は、建物の新築工事で広く採用されている足場です。
余談ですが、厚生労働省は「手すり先行工法に関するガイドライン」のなかで手すりの設置を推奨し、建設業における足場からの墜落災害防止を推進しています。
足場工事の流れを順に見ていこう!
では続いて、修繕や塗装を行う際の足場工事の大まかな流れを見ていきましょう。
1.近隣やマンションの住人に通知
施工前には、近隣の方やマンションの住人に足場を組むことを通知します。住人には、工事期間中、日当たりが悪くなることや、騒音が発生する可能性を説明しておくと良いでしょう。
2.足場の設置開始
足場を組み立てるための設置工事を行います。このとき、工事現場や資材置き場の安全を確保するため、敷地に沿って囲い(仮囲い)を設ける場合もあります。
3.養生シート設置
足場が完成したら、塗料などが窓ガラスにまで飛散しないように、養生シートをかけます。
4.施工後の清掃
足場工事終了後、現場周辺の清掃を行います。
5.メインとなる工事の完了
塗装や修繕など、メインの工事が完了するまでの数日~数週の間、足場と養生シートはそのまま設置し続けます。
6.足場の解体・撤去
工事完了後、速やかに足場を解体・撤去します。
7.最終チェック
足場の部材によって建物に傷がついていないか、周辺に部品やゴミが飛散していないかを確認して、すべての工事は完了となります。
マンションの足場工事は1週間以上かかる場合も
足場工事は一般的な戸建住宅の場合、数時間で設置可能です。ただ、マンションなどの大規模な建物となると、1週間以上の工期が想定されるケースもあります。
あくまでも目安となりますが、30~50戸前後の比較的小規模のマンションなら10日~2週間ほど。100戸を超える大規模マンションなら、2~3週間ほどはかかることを想定しておきましょう。そして足場の解体には、設置にかかった期間の1/3ほどの工期がかかるといわれています。
足場の仮設工事は1㎡あたり1000〜1500円が相場
マンションの大規模修繕を行う際には足場の設置はもちろん、塗料などが飛び散らないように飛散防止ネットで足場を覆ったり、作業に必要な事務所や簡易トイレなどの仮設施設を設置したりします。そこで、あくまでも参考値ですが、仮設工事全体にかかる費用感を確認してみましょう。
足場がかかる面積は足場架面積といって、「(マンションの外周+4m)×高さ」で計算します。例えば、外周100mで高さが20mのマンションの場合、1平方メートルあたり単価1,000の枠組み足場をかけると、2,080×1,000=2,080,000円となります。
1平方メートルあたりの足場の相場は、
・枠組み足場:1,000~1,500円
・ビケ足場:700~1,000円
・単管足場:700~1,000円
となりますので、住んでいるマンションの足場架面積で計算してみると、足場にかかる費用の概算が分かります。
また、国土交通省が2017年に行った調査によると、大規模修繕費用の1戸当たりの相場は75〜125万円の割合が最も多くなっています。さらに同調査によれば、大規模修繕で発生する全工事金額の内訳のうち仮設工事の割合は19.2%となっていることから、1戸当たり14.4〜24万円がだいたいの費用感だと考えられます。
単純計算すると、例えば40戸あるマンションであれば、全体で576〜960万円程度の仮設工事費用がかかることになります。もちろん建物の構造や実際の状況、施工会社によって費用は前後するわけですが、少なくとも仮設工事だけで数百万以上はかかるといえそうです。
足場工事の費用を抑える3つの方法
最後に、高額になりがちな足場工事の費用を抑える方法を3つ紹介していきます。
【方法1】無足場工法を採用する
足場を設置しないで工事や塗装を行う方法を、「無足場工法」といいます。
高層ビルやタワーマンションで窓の掃除をするために、ロープで吊られていたり、ゴンドラに乗っていたりする人を見たことがあると思います。これらは無足場工法と呼ばれ、足場を組み立てる必要がないために費用を大幅に節約できる可能性があります。
ただし修繕しきれない部分があったり、そもそも建物の構造上実施できない場合があったりするため、適しているかどうかは事前の確認が必要です。
【方法2】修繕は可能な限りまとめて実施する
マンションの大規模修繕の中身は、防水工事や塗装工事、シーリング工事やタイルの改修工事など多岐にわたります。
これらの工事ごとに足場を組んで、解体をして…を繰り返していたら、その分足場工事の費用もかさんでしまいます。そこで、できる限り工事を実施するタイミングをまとめて足場を組む回数を減らせば、数百万円単位で節約できる可能性があります。
【方法3】複数社を比較検討する
管理会社や修繕業者に提案してもらった業者に依頼をするのでも良いですが、複数社を比較してみると足場工事の適正価格もみえてきます。そして妥当な金額の業者にお願いすることで、費用を抑えることもできるでしょう。
とはいえ、安ければ良いというものでもないので、価格とともに工事内容や対応についてもセットで比較しましょう。
なお、塗装や修繕の付帯工事として「足場工事費無料」をうたう場合もあるようです。しかしマンションの足場を設置するには、短くても1週間ほどかかります。その間には人件費もかかりますし、部材のリース料や運搬費もかかってきます。相当の費用をほかの工事費用で請求される可能性などもあるため、そういった業者には内容の確認をすることが必要です。
足場工事の業者の選び方
経験や実績がある業者は信頼性が高いといえます。ホームページなどを確認し、自分のマンションと近い事例を取り扱った経験があるかどうかを確認するのもいいでしょう。損賠保険に加入している業者なら、さらに安心感が高まります。
また、打ち合わせの際の対応も確認しておきたいところです。丁寧かつ親切に対応してくれる業者を選ぶことが、円滑な工事につながります。
前述したとおり、相見積もりを取って妥当な費用感であるかどうか確かめることも大切です。
足場工事は作業の効率化と職人の安全のために必要
足場工事は、高所での作業を安全かつ効率的に行うために必要な工事です。
とはいえ、マンションの規模によっては数百万円~数千万円かかる場合もあります。そこで、工事をまとめることで足場を組む回数を減らすなど、費用を抑えるための工夫も考えていきましょう。
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