
騒音トラブルはどう解決する? 裁判になった事例まで紹介!

騒音はマンションで暮らす多くの住人が抱える問題の1つです。隣人からの騒音に悩まされることはもちろん、気づいたら自分が加害者になっていたということもあり得ます。そんなとき、トラブルを大きくしないためにも具体的な対処方法について知っておくことが大切です。
そこでここでは、騒音トラブルに巻き込まれたときの対処法について解説。騒音問題で、裁判にまで発展したケースもあわせて紹介していきます。
どんな生活音も騒音になり得る
「そもそもどんな音が騒音になるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。結論から言うと、生活するうえで発生するほぼすべての音が騒音の原因となる可能性があります。
騒音の具体例をあげると次の通り。
・上層階からの足音
・話し声
・ピアノなどの楽器や音楽機器
・洗濯機や掃除機といった生活家電の稼働
子どもが走り回る音だけでなく、夜勤の仕事で早朝に食事の準備を行うなど、生活習慣の違いで発生する足音もあります。大きな声での電話や、2〜3人ぐらいの井戸端会議が騒音になってしまうケースもあるでしょう。
また、マンション内のルールとして楽器を演奏して良い時間帯が定められている場合でも、過剰に大きな音は騒音につながってしまう恐れがあります。
前提として、音量や周囲の感じ方によるものの、身近な音すべてが騒音になり得るということは理解しておきたいところ。自分が被害者になることはもちろん、知らないうちに周囲に迷惑をかけている可能性もあり得るのです。
騒音トラブルに巻き込まれた場合の対処方法とは?
では、実際に騒音トラブルに巻き込まれたらどのように対処すればいいのでしょうか?
ここからは騒音被害に悩まされている場合の対処方法について解説していきます。
まずは管理会社に相談しよう
騒音被害の対処方法として最初に考えたいのは、マンションの管理会社への相談です。
騒音問題は当人同士で解決できるのが一番です。しかし、直接苦情を言うことで相手の反感を買ってしまい逆に嫌がらせが始まるなど、騒音以外のトラブルに発展する可能性もあります。そこで注意をするにしても、直接ではなく管理会社などの第三者にお願いしたほうがベターです。
管理会社から注意されたにもかかわらず騒音をやめない、あるいはさらにひどくなったという場合は、以下の相談先も検討したいところ。
・自治体の生活相談センターなど
・警察
・弁護士
警察が注意しても収まらない場合、弁護士への相談も視野に入ってくるでしょう。裁判所が判決を下す「訴訟」ではなく、あくまでも話し合いによる解決を目指す「調停」という選択肢もあります。とはいえ、弁護士への相談は費用がかかることも忘れずに。
客観的な「証拠」を残しておこう

訴訟を視野に入れて弁護士への相談を検討しているなら、被害のレベルが客観的にわかる証拠を集めることが大切です。騒音の録音データはもちろんのこと、時間や自分が感じたことなどを詳細に書いたメモ、日記なども十分な証拠になるケースがあります。そのほかにも以下のような情報を集めることができると、客観的な証拠として役立つ可能性があるでしょう。
・騒音計や計測アプリなどで数値化した音の大きさ
・音が聞こえる時間帯
・音が聞こえてくる方向
・騒音の頻度
とくに音の大きさを数値で示した騒音レベル(db)は、当人以外にも客観的にわかりやすい基準となります。騒音レベルは無料のスマホアプリなどでも計測できるので、一度試してみると良いでしょう。
区分所有法に違反する場合「住戸の使用禁止」も請求できる
マンションにおける騒音は「区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)」という法律によって解決できる場合もあります。
区分所有法について簡単に説明すると、分譲マンションなど1つの建物を複数人が分割して所有する際の、個人の所有範囲やマンションの管理方法について定めた法律です。区分所有法に違反した場合、管理組合は違反者に対して法的措置をとることができます。
区分所有法ではほかの住人が不利益になるような行為に対し、当人にやめてもらうよう請求できることを定めています。それでも問題が解決しない場合は組合委員全体(正確には区分所有者及び議決権)の4分の3以上の賛成で、住戸の使用禁止や退去の請求(裁判を前提とする。)も可能です。
ちなみに、マンションの構造上の欠陥による騒音被害については、施工業者に対して損害賠償を求めることもできます。また、物件の売り手は買い手に対し「契約不適合責任」という、買い手の知らなかった欠陥に対する責任を持つことが定められており、購入してから10年(不適合を知ってから5年)までといった条件はあるものの買い手は修理の請求、損害賠償や契約の解除などを要求することが可能なのです。
「損害賠償」が適応されるケース
「民法」によれば、騒音問題で相手に損害賠償を求めることができることもあります。
そもそも民法とは、個人間の権利や義務についての基本的なルールを定めた法律です。民法の第709条では、「他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、それによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定めています。これに従うと、例えば騒音によって健康的な生活を脅かされるほどの被害が生じている場合は、相手はその損害を賠償する責任を負うというわけです。
一方で精神に多大な影響をきたし診断書があるといったケースならまだしも、そこまでではない場合、どんな被害が具体的に出ているのかを証明することは難しいため、損害賠償を求めるハードルは高いといえます。
前述した客観的な騒音の証拠を集めることはもちろん、損害賠償を請求できるかどうかを事前に弁護士に相談してみましょう。
「ADR(裁判外紛争解決)」による解決手段
「自分たちだけでは解決できそうにないけれど、お金や時間をかけて裁判にするほどでもない」と考える方もいるでしょう。そこで活用できる解決手段が「ADR」です。
ADRとは「裁判外紛争解決手続」の略。ADRには国民生活センターなどの行政機関が実施するもの(行政型ADR)や、民間の事業者が行うもの(民間型ADR)などがあります。ADR事業者により選任された担当者が仲介に入り、当事者同士の話し合いによる解決を目指します。
国民生活センター紛争解決委員会へ依頼する例でいえば、まずはADR問い合わせ窓口(03-5475-1979)へ連絡。担当委員が選任され、ほとんどの場合は、当事者双方と複数回の話し合いを行いながら和解による解決を促していきます。
ADRの利用は裁判よりも手続きが少なく、時間や費用といったコストを抑えられる点が大きなメリット。住人同士のトラブルなど、比較的小規模な問題はADRの方が適しているといえるでしょう。