マンションで民泊をしたい! 届出の流れやトラブル対策を紹介
民泊営業を行うためには、行政機関への申請や届出が必要であることはご存じでしょうか。またマンションで行う場合には、管理規約で禁止されていないかどうかも確認しなければいけません。
この記事では、マンションで民泊を行うにあたって必要な基礎知識と発生しやすいトラブルの対処法を解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
マンションで民泊を始めるために必要なことは?
民泊を行う前には、最も手続きのハードルが低いといわれる民泊新法(住宅宿泊事業法)にもとづく届出を行うのが一般的です。
従来からあった旅館業法の規定が厳しく、無許可の民泊が増えたため、2018年に施行されたこの民泊新法。もともとは各自治体からの営業許可が必要だったわけですが、民泊新法においては届出を行うだけで営業ができるようになりました。ただ、年間営業日数は180日以内という制限があります。
なお以降では民泊新法にもとづく届出を行う、また、所有するマンションの管理規約で民泊が禁止されていない前提での手続きを方法を紹介したいと思います。
民泊届出までの流れをざっくり紹介!
届出にあたっては「住宅宿泊事業届出書」という専用の書類に記入のうえ、必要な添付資料と合わせて建物の所在地を管轄する都道府県知事などに提出することになります。
届出に記載する内容については、以下、まとめてみました。
(1) 商号、名称、または氏名および住所
(2) 法人である場合、役員の氏名
(3)未成年である場合、法定代理人の氏名住所
(4)住宅の所在地
(5)営業所または事務所を設ける場合、その名称および住所
(6)住宅の管理を委託する場合、住宅宿泊管理業者の商号、名称または氏名
(7)住宅の図面
(7)の住宅の図面には、下記の情報も盛り込む必要があります。
①台所、浴室、便所及び洗面設備の位置
②住宅の間取り及び出入り口
③客室、宿泊室および、宿泊者の使用に供する部分のそれぞれの床面積
④非常用照明器具などの安全措置の内容
なお、届出の際に申請料はかかりません。
旅館業法も実は規制が緩和されている
なお旅館業法においても、2016年4月に基準が一部が緩和されています。これまで一律で「33㎡以上」とされていた面積基準が宿泊者が10人未満の場合は一人あたり3.3㎡になったこと、また、条例などで義務とされていたフロントの設置も多くの自治体で「望ましい」といった内容に改定されたことで、ワンルームマンションであっても民泊は実施しやすくなりました。
とはいえ、まだまだ自治体によってはフロントの設置に関して義務付けているケースもあります。
規制緩和も、旅館業法の許認可はやはりハードルが高い……
建物は建築するときには、用途を決めて行政に申告します。例えばマンションは「共同住宅」、オフィスは「事務所」といった具合です。そして、旅館業法にもとづいてマンションの一室などを民泊施設として利用する場合、原則「ホテル」や「旅館」という用途に変更しなければなりません。
しかし、ホテルや旅館の建設が可能な用途地域(6地域)にあるマンションしか、用途変更はできません。
用途地域とは、都市計画法で定められた12地域のこと。住宅地域や工業地域などと区分して、それぞれの地域に建てられる建物の用途が決められています。マンションは共同住宅なので、用途地域の11地域に建築可能ですが、民泊の場合はホテルや旅館となるため前述したように6地域でしか認められていません。
そのため旅館業法の許認可を行う以前に、マンションの立っている地域そのものが民泊を禁止しているケースもあるのです。
マンションの民泊で多い4つのトラブル
民泊を利用するゲストのなかには外国人も含まれているため、文化の違いが原因でトラブルが発生するケースもあります。
ここでは多数報告されるトラブルから厳選して3つ紹介しますので、ぜひ事前対策の参考にしてみてください。
【トラブル1】ものを壊してしまう
炊飯器など、海外の人にとってあまり馴染みのない家電製品は使い方が分からず、破損させてしまうトラブルにつながる可能性があります。
そのため設備の使い方や注意点を確認できるよう、宿泊者が使用する言語に合わせて説明文などを記載しておくと良いでしょう。
【トラブル2】部屋の備品を勝手に持ち帰る
部屋の備品として設置していたティッシュや、使わなかった紙コップをゲストが勝手に持ち帰ってしまうといったケースも考えられます。
ホテルのアメニティサービスとは違い、持ち帰りはNGである旨を記載した注意文などを記載しておき、必要以上の備品は設置しないようにしておきましょう。
【トラブル3】違う物件に間違って入る
外出したゲストが宿泊場所の周辺で迷い、違う物件に間違って入ってしまったというトラブルもあります。
そのため、宿泊場所の目印となるような看板を設置しておきたいところ。なお民泊新法では、届出番号や届出年月日を記載した標識を提示することも定められています。
【トラブル4】近隣住民に迷惑をかけてしまう
マンションによっては、ホテルなどの宿泊施設と違い、騒音対策が行われていない物件もあります。そのため旅行に来ている高揚感から、宿泊者の騒ぎ声が近隣住民に迷惑をかけてしまうこともあるかもしれません。
海外の人と日本人だと、騒ぐレベルが違うこともあるでしょう。また特に大勢で宿泊している場合、話し声も自然と大きくなってしまうため、知らず知らずのうちに周囲に騒音が響いてしまう可能性もあります。
そのため民泊を提供する側は、騒音対策の実施なども検討しましょう。
トラブル多発で個別では民泊禁止の方向に
上記で紹介してきたように、トラブルのもととなり得る民泊を禁止するマンションも増えているようです。
2018年にマンション管理センターが、登録管理組合を対象に行った「民泊対応状況管理組合アンケート調査」によると、105組合のうち9割の管理組合で民泊禁止の取り決めを行っていることが明らかになりました。
民泊の禁止については、8割近くが管理規約で定めたと回答。騒音などの迷惑行為や文化の違いなどから発生するトラブルへの懸念のため、民泊を全面禁止とした管理組合が多いようです。
特に複数人が同じ建物内で暮らすマンションにおいては、民泊を行いたいと考える所有者が少数の場合、その意見を反映させることはなかなか難しそうですね。
民泊の禁止をするには
民泊のトラブルを未然に防ぐためにも、禁止するのであれば管理規約上で明確化することが望ましいといえます。
なお民泊の禁止を定めるために管理規約を変更するとなると、総会で「区分所有者数の4分の3以上」かつ「議決権の4分の3以上」の賛成が必要となります。
総会で決議を行う手間はかかるものの、もし民泊に関するトラブルで悩まされている管理組合は、一度検討してみてはいかがでしょうか。
禁止にもかかわらず住民が民泊をしている場合どうする?
前述したように管理規約で民泊を禁止している場合、いくら民泊新法や旅館業法にもとづく許認可を得たとしても民泊は実施できません。
そのため、管理会社などを通じて確認・注意してもらうようにしましょう。なお、もし民泊新法や旅館業法にもとづく許可なく民泊を行っている場合、行政指導の対象となります。そのため、管理会社の注意を聞かない場合は、行政に相談するのも1つの方法です。
ちなみにこれは賃貸物件に限った話ですが、管理規約で民泊を禁止していなくとも「転貸(てんたい)の禁止」を定めているケースもあります。転貸とは要するに、自分が借りている物件を第三者に又貸しすること。民泊も転貸に該当するケースがあるため、もし民泊を始めたいと思うのであれば貸主に事前に確認しておいたほうが良いでしょう。
民泊を始めるためには届出が必要! 管理規約の変更も検討しよう
マンションで民泊を始めようと考えている場合は、まずは管理規約で禁止されていないかを確認。そして民泊を行うにあたっては、建物の所在地を管轄する都道府県知事などに届出を行いましょう。
なお民泊では外国人の宿泊も考えられるため、トラブルを未然に防ぐためにも宿泊者の母国語による注意喚起や看板の設置など、事前対策も検討したいところ。民泊のトラブルに悩まされている管理組合は、思い切って管理規約上で禁止することも考えてみましょう。