民泊を始めるために必要な許可・申請の流れを詳しく、徹底的に解説!
東京五輪開催に向けた観光客の増加見込みなども後押しとなり、本格的に民泊を始めようか考えている方も多いかもしれません。部屋を貸したい人と宿泊したい人のマッチングサービス「Airbnb(エアビーアンドビー)」などを使えば、簡単にできそうなイメージもあります。ただ民泊を実施するには、法律にもとづく許可が必要なことをご存じでしょうか?
この記事では「使ってないマンションの一室で民泊をやりたい!」「民泊ってどうやって始めるべき?」という方に向けて、民泊が認められるケースや申請の流れなどを紹介していきます。
民泊の許可が得られる3つのケース
民泊を行うには多くの場合、各都道府県への許可申請が必要です。とはいえ、民泊の種類や各都道府県によって、許可を得る方法は異なります。ここでは、許可を得られる主に3つのケースについて、それぞれ確認していきましょう。
【ケース1】最もハードルが高い「旅館業法」による許可
個人が自宅や空き家などを活用して、日数制限なく宿泊サービスを継続的に提供するためには、「旅館業法」にもとづく許可を取得するのが一般的です。
後述する「特区民泊」や「民泊新法」と比べると手続きの手間がかるため、営業許可のハードルは高くなります。また、営業日数に制限がないために民泊ビジネスを本格的に始めたい方向けです。不在時の管理業者への委託義務や、最低宿泊日数などの制限もありません。
【ケース2】届出を行うだけで営業ができる「民泊新法」
期間限定でマンションを民泊として使用したい場合は、住宅宿泊事業法(民泊新法)が適応されるため、民泊を行うための営業許可は不要です。ただし、各都道府県への届出の必要はもちろん、以下の設備条件を満たさなければなりません。
・台所・浴室・便所・洗面の住居としての設備が整った住宅
・居者の募集が行われている家屋
・随時所有者・賃貸人または転借人の居住に使用されている住居
民泊新法の対象となるのは、基本的に生活を営む場所での営業。旅館業法と違って年間営業日数も180日以内と制限されており、つまりはゲストを宿泊させる日数が年間で180日を超えないように注意をする必要があるのです。そのほか、施設の規模にかかわらず不在時に住宅宿泊管理業者へ管理業務を委託する、などの義務もあります。
【ケース3】「国家戦略特区」なら「特区民泊」として認定される方法も
「国家戦略特区」とは「世界で一番ビジネスをしやすい環境づくり」を目的として、規制や制度の緩和、税制面での優遇が行われる地域のこと。この国家戦略特区において特定認定を受けて行われる民泊を、「特区民泊」と呼びます。
特区民泊は民泊新法や旅館業法にもとづく民泊のように、厳しい施設要件もなく、フロントに常駐させる従業員なども不要。さらに年間営業日数の制限もありません。従来は特区民泊の最低宿泊日数は6泊7日と定められていましたが、これが2泊3日に緩和されたことにより、申請のハードルも下がって認可を得やすくなりました。
とはいえ旅館業法や民泊新法と違い、対象は国家戦略特区という限られた地域となります。
参考までに、特区民泊が認められている地域は以下の通りです。
・秋田県(仙北市)
・新潟県(新潟市)
・宮城県(仙台市)
・東京都(大田区)
・神奈川県
・千葉県(成田市・千葉市)
・愛知県
・大阪府
・京都府
・兵庫県(養父市)
・広島県
・愛媛県(今治市)
・福岡県(福岡市・北九州市)
・沖縄県
旅館業法にもとづく許可申請の前に確認したいポイント
前述した通り、年間宿泊日数が180日の制限を超える営業をしたい場合は、最もハードルが高いといわれる旅館業法にもとづいた許可を得る必要があります。
以降で許可を得る前に確認すべきポイントをまとめたので、ぜひ参考にしてみてください。
【ポイント1】営業可能な物件には基準が設けられている
旅館業法にもとづく許可を得るには、宿泊施設として提供する予定の自宅や空き室が、下記の基準を満たす必要があります。
①客室の延床面積は33㎡以上であること(宿泊者の数を10人未満とする場合は、3.3㎡×宿泊者数)
②階層式寝台(2段ベッド)を用いる場合は、上段と下段の間隔がおおむね1m以上あること
③換気や採光(日当たり)、照明や防湿、排水の設備があること
④近くに公衆浴場がある場合などを除き、宿泊者の需要を満たす規模の入浴設備があること
⑤宿泊者の需要を満たす適当な規模の洗面設備があること
⑥適当な数の便所があること
⑦その他、都道府県が条例で定める構造設備の基準に適合すること
許可申請を行う前に、念のため確認しておきましょう。
【ポイント2】安全対策は取られているか
民泊の利用者や周辺住民などの安全確保のため、消化器や自動火災放置設備などの設置による防災対策を行う必要もあります。
なお、物件の規模や形状によって必要な設備は異なるため、事前に総務省消防庁などのホームページで掲載されている「民泊における消防用設備の設置に関するリーフレット」などを確認しておきましょう。
【ポイント3】マンションの管理規約に違反してないか
民泊としてマンションの1室を利用する場合は、マンションの管理規約を確認することも忘れずに。管理規約に「専有部分を住居目的以外の用途で使用してはならない」という規約があった場合は、民泊そのものを実施することができません。
民泊を始めるまでの一般的な流れ
旅館業法にもとづいて民泊の営業を開始するためには、各地域を管轄している保健所への申請が必要となります。以降では、営業開始までの流れを整理してみました。
【1】各自治体の相談窓口へ事前確認に行く
許可申請を行うにあたって最初から保健所に行くのではなく、各自治体の設ける旅館業法担当窓口へ、事前に相談してみましょう。民泊営業を始めるために施設の所在地や施設の図面 、建築基準法や消防法への適合状況、マンション管理規約など事前に確認しておくべきことを教えてもらえます。
また、許可申請にあたって必要な書類や手数料なども確認しておきましょう。
【2】必要書類を保健所へ提出する
自治体によって必要な書類は変わるものの、参考までに以下では主な提出書類をまとめてみました。
・許可申請書
・営業施設の図面
・そのほか自治体が条例等で定める書類
なお自治体によっては必要書類提出の前に、事前審査を行う場合もあるようです。
【3】民泊施設の各種検査
民泊の対象となる施設が、構造設備の基準に適合していることを確認するために、保健所職員が立入検査を行います。基準を満たしていることが確認されるまで、許可を取得することはできません。
なお構造設備の基準以外にも、自治体ごとに条例で基準が定められているため、検査内容についても事前に相談窓口で確認しておくと良いでしょう。
【4】許可から営業開始
申請から許可を得るまでの期間は地域や時期によって差はありますが、だいたい数週間程度。保健所から許可が下りてはじめて、営業を開始できるようになります。
本格的な民泊運営を検討中なら旅館業法にもとづく許可申請を
合法に民泊を行うためには、従来は旅館業法にもとづく許可が必要でしたが、そのハードルの高さから現在は民泊新法にもとづく届出も一般的になりつつあります。
なお、年間の宿泊日数が180日を超えるほどの本格的な運営を考えていないのであれば、民泊新法にもとづく届出も選択肢となるでしょう。とはいえ、今回中心に紹介してきた「旅館業法」にもとづく許可を得ることができれば、日数などの制限を考慮することなく、民泊の運営も安心して実施できそうです。