民泊の管理業務を委託するには? 業者はどうやって選ぶ?
民泊運営において、管理業務の委託をどうするか頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか。もちろん、オーナー自身でゲストとのやり取りや清掃などを行えると、コスト削減につながります。しかし一方で、自分自身ですべてを対応するのは手間がかかるため「全部業者に任せてしまいたい」と考える方もいるでしょう。
今回は業務を外部に委託するにあたって、そもそも誰に依頼すれば良いのかといった基本から、業者を選ぶときのポイントまで紹介していきます。
そもそも民泊新法の対象者は3つに分類できる!
民泊を行うためには、最も手続きのハードルが低いといわれる民泊新法(住宅宿泊事業法)にもとづく届出を行うのが一般的です。では、この民泊新法は、そもそもどういう人を対象としているのでしょうか。
民泊新法では民泊事業に関わる業者を「住宅宿泊事業者」「住宅宿泊管理業者」「住宅宿泊仲介業者」の3つに分類しています。それぞれの役割を整理すると、以下の通り。
・住宅宿泊事業者:届出住宅を利用して民泊事業を行う民泊ホスト
・住宅宿泊管理業者:民泊ホストから住宅の管理業務の委託を受ける民泊代行業者
・住宅宿泊仲介業者:民泊物件を紹介する仲介サイト
民泊を運営するためには、このなかの住宅宿泊管理業者に業務を委託する必要があります。
民泊の管理業務は「住宅宿泊管理業者」に委託する!
民泊を運営するためには、ゲストへの対応や清掃、緊急時の駆けつけなどさまざまな管理業務が必要となります。とはいえオーナーがすべての業務を対応するわけではなく、「住宅宿泊管理業者」に委託することが一般的です。
住宅宿泊管理業者とは、国土交通大臣から認可された民泊の管理業務全般を代行する事業者のこと。登録には、住宅の取引・管理に関する2年以上の職務経験、もしくは宅地建物取引士・管理業務主任者・不動産経営管理士などの資格保有者といった一定のハードルが設けられています。
どんな人が住宅宿泊管理業者として認定されるの?
住宅宿泊管理業者は、個人で取得する方法もあれば法人で取得する方法もあります。
個人・法人の申請条件については以降で整理してみました。
(個人で申請する場合)
・住宅の取引又は管理に関する2年以上の実務経験
・宅地建物取引士の認定者
・管理業務主任者の認定者
・賃貸不動産経営管理士の認定者
(法人で申請する場合)
・住宅の取引又は管理に関する2年以上の実務経験を有する法人
・宅地建物取引士の認定法人
・管理業務主任者の認定法人
・賃貸不動産経営管理士の認定法人
以上のいずれかの条件を満たして申請を行う対象者に、住宅宿泊管理業者の資格が与えられます。
管理業務の委託は義務になっている!?
民泊新法では、以下のいずれかのケースに該当する場合、「住宅宿泊管理業者」へ管理業務を委託する義務があります。
・居室数が6室以上
・「家主不在型」に該当する
居室数が5室以下であれば、委託の義務はないといえます。ただし、民泊施設に宿泊者が滞在している間、管理者が同じ建物や敷地内にいない場合、つまりは家主不在型の民泊であれば管理業務を委託する義務があるわけです。
ここで言う「不在」とは、生活必需品の購入など日常生活を営むうえでの一時的な外出は除くものの、原則1時間まで。外出先の店舗の位置や交通手段によっては、2時間程度までなら問題ないとされています。
どんな業務を住宅宿泊管理業者に委託すれば良いの?
民泊運営のなかでも、住宅宿泊管理業者に委託できる業務について、以下で改めてまとめてみました。
【業務1】宿泊者・近隣住民への対応
住宅宿泊管理業者は宿泊者への鍵の受け渡しや、チェックインしない場合は民泊運営者に報告するなどの業務を行います。そのほかにも本人確認や義務付けられている宿泊者名簿の作成、チェックアウト時の鍵返却、忘れ物や破損の有無なども確認することになるでしょう。
もし宿泊中に騒音やゴミ出しのトラブル、また近隣からの苦情などがあれば、その対応も住宅宿泊管理業者の業務に含まれます。
【業務2】清掃・衛生管理
日常的な清掃や寝具の洗濯、備品の補充なども住宅宿泊管理業者に委託できます。もし宿泊者に感染症の疑いがあれば、保健所への届出や室内の消毒などの業務も実施してもらうことになるでしょう。
【業務3】住宅設備・安全の管理
台所や浴室、トイレなどの設備や、水道・電気といったライフラインの保全も、住宅宿泊管理業者に業務を委託できます。例えば設備の機能不全が発生した場合、官公署や電力ガス会社への連絡などを、必要に応じて行うことになるでしょう。
そのほかにも、非常用照明器具の設置や点検、災害時にきちんと避難できるような安全確保に関する業務も委託できます。民泊では外国人観光客の宿泊も多いため、場合によっては外国語を用いた案内表示なども作成してもらいましょう。
全部委託? それとも一部だけ? 民泊の運営方法は主に3パターン!
住宅宿泊管理業者に依頼する場合、すべての業務を委託するのが基本ですが、再委託という形でオーナーが一部の業務を引き受ける場合もあります。
整理すると、民泊の運営方法は以下の3パターンが考えられるでしょう。
【1】すべての管理業務を業者に委託する
まずは、清掃からゲスト対応まで、すべての業務を業者に委託する方法です。費用はかかりますが、オーナーの負担は最も少ないといえます。
複数の民泊を効率良く運営したい方や、自宅から比較的離れた場所で民泊を運営したい方向けといえるでしょう。
【2】一部の管理業務のみ業者に委託する
一旦すべての管理業務を委託し、その後、オーナー自身でできる業務のみを「再委託」という形で業者から引き受けるケースもあります。
清掃業務や外国語対応など、自身が苦手とする業務のみを委託すれば、可能な限りコストを抑えた民泊運営が可能となるでしょう。
ただし、ある程度民泊運営に関する知識や経験は必要になることが予想できるため、初心者の方には不向きといえそうです。
【3】すべての管理業務をオーナーが行う
管理業務を業者に委託せず、すべてオーナーが行うケースもあります。ただ、前述した通り居室数が6室以上や家主不在型の場合は住宅宿泊管理業者に委託する義務があるため、オーナー自身が業者として登録をする必要があるでしょう。
自分ですべての業務を行うことになれば、当然、委託コストを大きく抑えることができます。ゲストと密なコミュニケーションを取りたいという方にも向いていますね。
一方で、住宅宿泊管理業者としての登録に手間がかかる点などはデメリット。複数の民泊を運営したいという方には不向きでしょう。
住宅宿泊管理業者を選ぶときのポイント
住宅宿泊管理業者は「管理費が安い」という理由だけで選ぶと、サービスの質が悪いケースもあるため注意したいところ。民泊として貸し出している部屋に問題がなくとも、管理業者の対応の悪さでゲストからの評価が下がってしまってはもったいないですよね。
では、どのように委託先の住宅宿泊管理業者を選べば良いのでしょうか。
【ポイント1】管理業務の代行費用はどれくらいか
費用については、主に「成果報酬制」と「月額固定制」の2タイプに分かれることを覚えておきましょう。
成果報酬制は、月の売上から何パーセントかを代行費用として支払うパターンで、すべての管理業務を委託できる業者で採用されるケースが多いです。売上に連動して代行費用も変動するため、閑散期などはコストを抑えやすいといえるでしょう。一方で、当たり前のことですが、売上の増加に比例しコストも上がってしまいます。
月額報酬制は清掃代行やメール代行といった、一部の運営代行のみを行う業者で導入されるケースが多いです。代行して欲しい業務のみをオプション形式で選び、それに合わせて月額料金が変動する業者もあります。
なお適正価格を把握するためにも、まずは複数社に見積もりを依頼して、比較検討するところから始めてみましょう。
【ポイント2】代行実績はどれだけあるか
「代行実績」も良い業者を見極めるうえで、重要なポイントの1つ。
チェックポイントとしては
・運用実績が何件で、代行歴は何年くらいになるのか
・委託物件の平均稼働率や、どのくらい稼働率をアップさせたか
など。
業者のHPで公開されている代行実績を確認したり、あるいは直接問い合わせて質問したりしてみましょう。
【ポイント3】外国語には対応できるか
民泊は外国人の利用者が多いため、多言語対応も重要なポイントとなります。
観光客の利用が多い地域であれば、英語に加えて、中国語・韓国語などのアジア系言語に対応している業者がおすすめ。なかには、フランス語やイタリア語などに対応している業者もいます。
見知らぬ土地で特に不安の多い外国人観光客に対しては、自国の言葉で対応することで、民泊への満足度は高くなるでしょう。
【ポイント4】緊急対応してくれるか
すべての代行業者が、24時間トラブルに対応してくれるわけではありません。そのためゲストが夜中に騒いでトラブルになったときや火災が発生したときなど、24時間の緊急対応を実施しているかも業者選びの大切なポイントといえそうです。
もし24時間対応していなければ、オーナー自身でトラブルを対処するか、警備会社などに委託する方法もあります。
【ポイント5】民泊仲介サイトの運用実績はあるか
民泊仲介サイトは、Airbnb(エアビーアンドビー)以外にも、HomeAway、STAY JAPANなど数多くあります。民泊の稼働率を高めるためには、複数の仲介サイトへの物件掲載も重要となるでしょう。
すべての仲介サイトの予約やゲストとのコミュニケーションをオーナー1人で行うには、やはり手間や時間がかかるため、代行業者に委託する場合はなるべく多くの仲介サイトの運用実績がある業者を選ぶと良いでしょう。
業者選びはまず複数社を比較検討することから
民泊新法では、居室数6以上や家主不在型の民泊において、「住宅宿泊管理業者」への業務委託が義務付けられています。これらの条件に該当するオーナーは、自身が業者として登録する、もしくは外部の業者への委託が必要といえるでしょう。
しかしオーナー自身で住宅宿泊管理業者へ登録するのは、経歴や資格などが必要となるため現実的には難しい方が多いかもしれません。紹介した選び方のポイントなどを踏まえて、複数の委託業者を比較検討してみてはいかがでしょうか。