マンションの専門委員会細則とは?制定方法や委員会の設置方法を解説
マンション管理組合が対応しなくてはならない業務は大小様々な規模のものがあります。
近年では、特に大掛かりな案件に対して、その案件への対応を専門とする「マンション専門委員会」を設置する管理組合が増加傾向に。
今回の記事ではマンション専門委員会の設置方法と、専門委員会を運営する上で重要となる細則について解説していきます。
マンションの専門委員会とは?
マンション共有部分の維持管理は理事会が管理組合を代表して行うもので、対応しなければならない業務は多岐にわたります。なかには管理規約改定など専門的な知識が必要となる業務や、大規模修繕のように数年単位の期間を要する案件もあり、理事会役員の負担は決して小さくありません。このように多くの労力が必要となる案件に対して個別に構成され、理事会に代わって対応するのが専門委員会です。
マンション専門委員会の具体的な活動内容は、例えば大規模修繕専門委員会の場合、工事業者の選定から工事の打ち合わせ、検査の立合、住民への工事の説明会など大規模修繕に関連する幅広い活動を行います。煩雑な業務を理事会の代わりに対応することで、理事会がその他の業務に無理なく対応していくことへのサポートとなる点が専門委員会設置のメリットと言えるでしょう。
注意したいポイントは、専門委員会は理事会の下部組織という位置づけであり、あくまで理事会の諮問機関であるということです。専門委員会が中心となって実務を進める案件であっても、最終的な決定権は理事会にあります。専門委員会の役割は委員会で話し合った内容を理事会へ提案することであるということはしっかりと覚えておきましょう。
専門委員会の設置状況については、国土交通省が実施した平成30年度のマンション総合調査によると、専門委員会を設置している管理組合は全体の27.3 %。委員会の種類は大規模修繕や長期修繕計画に関連するものが全体の85.2%を占めているという調査結果が出ています。
専門委員会を設置する方法は?
専門委員会の設置について、国土交通省作成のマンション標準管理規約では以下の様に記されています。
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第55条
理事会は、その責任と権限の範囲内において、専門委員会を設置し、特定の課題を調査又は検討させることができる。
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この内容から、専門委員会は総会での承認を得ずとも、理事会での決議を持って設立が可能だと解釈ができます。
しかし、専門委員会の設置は管理組合全体に関わることですので、理事会の独断で設立してしまうと後々トラブルに発展するかもしれません。専門委員会の活動をスムーズに行うためには、事前に管理組合全体に向けて専門委員会を設立する旨を周知して、総会で承認を得ておくことが望ましいでしょう。
特にメンバー募集は専門委員会の運営にとっての大きな課題です。輪番制で任期が廻ってくる理事会役員とは異なり、専門委員会は希望者を募ってメンバーを集める方式が一般的。そのため、専門委員会設立後に人員が集まらない場合も考えられるので、前もって住民への周知は進めておきたいところです。
また、第55条についての標準管理規約コメントでは、条件次第で専門委員会の設立に総会での決議が必要となることが記されているので、どのような場合が該当するかを把握しておきましょう。以下がコメントの内容です。
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第55条関係
① 専門委員会の検討対象が理事会の責任と権限を越える事項である場合や、理事会活動に認められている経費以上の費用が専門委員会の検討に必要となる場合、運営細則の制定が必要な場合等は、専門委員会の設置に総会の決議が必要となる。
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トラブル回避に有効な専門委員会細則
専門委員会を設置するにあたって、事前に細則を制定しておくこともトラブル防止策として有効な手段です。
委員会の業務内容や設置期間、委員の任期や報酬の有無など、運営開始に先立って明確にしておくべき内容は多くあります。
専門委員会の発足自体は理事会での決議をもって行うことができますが、委員会の細則の制定は総会での決議が必要となるため注意が必要です。
また、総会で承認を得た細則や専門委員会の位置づけは、公式な決定事項として忘れずにマンション管理規約に明文化しておくことも重要となります。
専門委員会細則の項目例
専門委員会細則の項目は管理組合ごとに独自に定めるものであるため、必須項目といえる内容はありません。どのような細則が効果的となるかは管理組合の状況によりけりですので、マンションごとに適した内容を定めていくことが肝要です。
一般的な細則の項目例を以下に紹介しますので、お住まいのマンションの状況と照らし合わせて作成する際の参考にしてください。
【一般的な専門委員会細則の項目】
・委員会の活動目的
・委員の資格と募集方法
・委員会の権限
・委員会の決議方法
・委員会予算
・外部委託の方法
・理事会への諮問内容
・委員の任期
・委員会の解散方法
適切な細則を決めればトラブルを減らせる
今回の記事ではマンション専門委員会と細則の制定について紹介してきました。
専門委員会は理事会の負担を緩和するために有効な組織ですが、活動においては思わぬトラブルが発生することも。そのような事態を防止するためにも、専門委員会を設置するときは細則の制定もあわせて行いましょう。