「引っ越し」のトラブルを解決したい!
マンションでよくある困った問題をテーマに、その解決方法を紹介していくこの連載。今回は「引っ越し」のトラブルに目を向けたいと思います。
引っ越しでよくあるトラブルとしては、搬出入時における荷物の破損や室内の傷が挙げられます。また、一斉入居が基本となる新築分譲マンションでは、作業時間が指定される場合もあるため、時間内に作業が終わらないと近隣から苦情が来たり、引っ越し料金が加算されたりする可能性も。
そこで今回は、引っ越しに関するトラブルとその対処法について紹介します。
引っ越しで起こるトラブル
よくある引っ越しのトラブルから、マンションならでは問題も確認していきましょう。
【トラブル1】荷物の破損や室内の傷
引っ越し時によくあるトラブルとしては、搬出入時の荷物の破損や、大型家具の接触による床や天井の傷が挙げられます。
国民生活センターに寄せられた「引越サービス」にかかわる相談事例を見ると、
「引越業者がパソコンモニターが入った段ボールを雑に扱ったためモニターの足が壊れた」「引越しの時にダイニングセットのへこみや傷、ベッドマットの破れが生じた」
といった内容が紹介されています。
通常、引っ越し業者は「運送業者貨物賠償責任保険」に加入しているため補償が受けられますが、一部対象外のものや、業者が応じてくれないといったトラブルもあるようです。
【トラブル2】追加費用がかかる
国民生活センターの相談事例のなかには、
「引越業者を呼んで見積りを取ったが、後から届いた明細書の金額が見積時より3万円高くなっていた。見落としていた部分を上乗せしたと言われたが納得できない」
という内容も挙げられています。
引っ越し料金比較サイトの「引っ越し侍」の調査では、「事前に自分で荷物を運んでおくと料金が安くなると聞いていたのに、当日になって値引きはできないと言われた」「エアコンの設置費用が含まれていなかった」といったトラブルも確認できました。
また、運送サービスを提供する「赤帽」など、利用時間に応じて料金が加算される業者もあります。その場合、作業にかかる時間が長くなると、当初の想定よりも料金が上がってしまうケースも考えられます。
【トラブル3】搬入経路が確保できていない
引っ越しにおいては当然、トラックを止めておく場所や、エレベーター・階段・廊下の幅などを確認しておく必要があります。
特にマンションの場合は共用スペースを利用するため、スムーズに作業できるよう経路を確認しておかないと、ほかの住民の生活を妨げてしまい、クレームを受けてしまう可能性があります。
当日スムーズに搬入搬出するためには、ドアや共用部分の幅はもちろん、廊下の曲がり具合やエレベーター内の奥行きも確認しておきましょう。
ちなみに、道路にトラックを止めるためには警察署で駐車許可証を受け取らなければ違反となってしまいます。引っ越し業者に依頼している場合は、業者が手続きをしてくれますが、自家用車などで搬出入する場合には注意が必要です。
【トラブル4】希望している日時に実施できない
引っ越しが多い2〜3月や土日祝日は業者が繁忙期となり、希望する日時で実施できなかったり、費用が割高になったりします。
また、新築分譲マンションの場合は、計画入居が基本です。そのため、入居希望日を調査したうえで、ほかの住民と被らないよう引っ越し日が調整されます。あらかじめ日にちが限定されているため、引っ越し業者は早めに手配をする必要があるでしょう。
なお、戸数の多いマンションでは、時間も指定されるケースもあるそう。時間内に作業が終わらなかった場合には別日にあらためる必要があることも。事前に確認しておきましょう。
トラブルへの対処法
【対処法1】搬出入の時間を想定しておく
あまりに作業時間が長くなってしまうと、場合によっては引っ越し料金がかさんだり、ほかの住民から注意をうけてしまったりするかもしれません。
スムーズな作業のためには、搬出入経路を確認したうえで、目安となる時間を把握しておく必要があります。
引っ越し料金比較サイトの「引っ越し侍」によると、搬出入それぞれにかかる時間は単身者で30分~1時間、家族世帯で1.5時間~が目安とされています。
荷物が多い場合や作業スペースが狭い場合などは、追加で30分程度余裕をみておくとよいかもしれません。
【対処法2】管理会社に連絡をする
引っ越し中に荷物の破損や室内に傷が生じた場合、すみやかに引っ越し業者と管理会社に連絡をしましょう。
国土交通省では「標準引越運送約款」が定められており、「引っ越し作業に問題がなかった」と証明できなければ、引っ越し業者が損害賠償責任を負うよう記されています。
補償を受けるには、破損や傷が引っ越し中にできたものであると、各者立ち会いのもと確認するのが一般的な流れです。
また、新築分譲マンションへの引っ越し時に、指定された日時では作業ができない、または終わらないと予想される場合にも、管理会社に連絡して日時を再度調整してもらいましょう。
【対処法3】国民生活センターや法テラスに相談
先に述べたように、引っ越し業者は通常「運送業者貨物賠償責任保険」に加入しているため、荷物の破損や室内の傷に対しては、上限1,000万円の補償が受けられるようになっています。
ただし、明確な外傷が見られないものや個人の荷造り不備によるものには適用されません。植物や自転車、電化製品など、一部補償範囲が限られるものもあります。引っ越し業者が補償を出し渋る、というケースも考えられるでしょう。
もし、引っ越し業者の補償範囲や対応について納得できないのであれば、無料で弁護士に相談できる自治体の窓口や、国民生活センター、法テラスに問い合わせてみるのも1つの手です。
以上、今回は引っ越しに関するトラブルと、その対処法を紹介しました。
破損や傷に対する補償はありますが、必ずしも対応してくれるとは限りません。まずは管理会社と引っ越し業者に連絡し、補償の対象となるかどうかを確認しましょう。また、近隣トラブルや引っ越し料金の加算を避けるためにも、スムーズな搬出入ができるよう経路を確認しておく必要があります。
イラスト:カワグチマサミ
この連載について
【連載】これで解決!マンション暮らしのトラブル
複数の世帯が生活を送る分譲マンションでは、共用スペースの使い方やペットの飼育、ゴミ捨て場における利用マナーなど、思いがけないトラブルに遭遇する可能性があります。そこで、本連載『これで解決! マンション暮らしのトラブル』では、マンションでよく起こる困った問題の解決方法をテーマごとにご紹介。トラブル発生の防止や、万が一起こってしまった際の対応マニュアルとしてもご活用ください!