連載:これで解決!マンション暮らしのトラブル

「契約不適合」のトラブルを解決したい!

2023.05.16
「契約不適合」のトラブルを解決したい!

マンションでよくある困った問題をテーマに、その解決方法を紹介していくこの連載。今回は「契約不適合」のトラブルに目を向けたいと思います。

購入した物件に欠陥があった場合、売主が負うべき責任を「契約不適合責任」といいます。買主は売主に損害賠償や契約解除を請求できる権利があるのです。

そこで、今回は「契約不適合責任」に該当する欠陥の例や、買主が請求できる権利について紹介します。

そもそも「契約不適合責任」って?

騒音や日照障害などの環境的な問題も契約不適合責任に該当する

キズや損傷などがあり、契約書通りの品質が保たれていない物件は「契約不適合」にあたります。物理的な瑕疵(欠陥)だけでなく、事件や事故があって心理的に住みにくかったり、騒音や日照障害などの環境的に問題があったり、建築基準法に反している場合も対象です。

この契約不適合に対し売主が責任を負うべき責任を「契約不適合責任」と呼び、買主の請求に応じて損害賠償や契約解除、代金の減額、追完(不適合部分の解消)といった対応を求められます。

なお、以前は「瑕疵担保責任」として、契約時点で知らされていなかった欠陥にのみ請求が可能でした。現在は、2020年の民法改正で「契約不適合責任」と改められ、契約書と合っていない内容について責任が問えるようになっています。

契約不適合に関するトラブル

買主保護の性格を持つ契約不適合責任ですが、トラブルに発展するケースもあります。

【トラブル1】契約書の確認漏れ

物件に欠陥があっても契約書に記載があれば売主に責任を問えない場合が多い

契約不適合責任は、「契約書に記載してあるかどうか」が問われます。つまり、物件に欠陥があった場合でも契約書に記載がある場合、売主に責任を追求できない可能性が高いでしょう。

もちろん、売主は売買時に契約内容を説明する義務がありますが、自分でもしっかりと契約書に目を通して確認しておく必要があります。

【トラブル2】特約が付されている

売主が宅地建物取引業者や事業者ではなく個人の場合、特約により売主が責任を免れたり、責任を負うとしても補償額等の上限を設けたりするケースがあります。

免責の規定に気づかずに契約してしまわないよう注意しましょう。

なお、売主が契約不適合を認識していながら買主に事実を告げなかった場合は適用外です。そのほか、免責となる条件を満たしていないのであれば特約は無効になります。

免責規定が有効かどうかは、専門家に確認してもらうのも1つの手です。

【トラブル3】時効が切れている

不適合を知ってから1年以内に売主へ通知しなければ無効となる

原則、不適合を知った買主は1年以内に売主へ通知しなければ無効となってしまいます。また、実際に損害賠償などの権利を行使する場合には、発覚から5年間または物件の引き渡しから10年間のいずれか早い時期までに行う必要があります。

ただし、売主が事業者で買主が個人の場合は、不適合を知った買主から売主への通知期限は1年以内ではなく、「引き渡しから2年以上」にしか設定できません。多くの場合、2年が時効と考えてよいでしょう。

また、新築住宅においては「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)により、「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」については10年間の契約不適合責任が定められています。

請求期限を過ぎてしまわないよう、なるべく早く時効を確認しておきたいですね。

請求できる4つの権利

契約不適合が発覚した際、買主が売主に対して請求できる内容を確認しておきましょう。

【1】追完請求

瑕疵がある部分の修理、または代替品の引き渡しなど、不足分を補うよう請求できます。

例えば、エアコンが故障している場合、修理費または交換をお願いできるのが追完請求です。

【2】損害賠償請求

欠陥を補てんするだけでなく、契約により被った不利益や有効な契約であれば得られたはずの利益について請求できます。

契約により被った不利益(信頼利益の損失)とは、仲介手数料や登記費用など。得られたはずの利益とは、例えば貸出予定だった物件の賃料などです。

ただし、損害賠償については、売主が瑕疵を隠していたなど、故意や過失がある場合にのみ適用されます。

【3】代金減額請求

修理を依頼したが応じてもらえない場合には、代金の減額を請求できます。これは民法改正前の「瑕疵担保責任」にはなかった項目です。

追完請求がされなかった際に検討したい選択肢となります。

【4】契約解除

追完請求がされない場合、売買契約を解除し、代金を返還してもらう請求も可能です。ただし、壁や床の一部が損傷しているといった軽度の瑕疵では認められない可能性が高いでしょう。

売主に解除を請求するケースを「催告解除」と呼ぶのに対し、買主が自ら強制的に行う解除を「無催告解除」といいます。

無催告解除は、瑕疵が大きく本来の契約目的が果たせない(居住できない)場合に行えます。

催告解除にしても無催告解除にしても、契約解除は売主に責任を負ってもらえない場合の最終手段といえそうです。

以上、今回は契約不適合責任に関するトラブルと、行使できる権利について紹介しました。

追完請求や損害賠償請求ができるかどうかの判断は、裁判でも意見がわかれるケースがあります。困ったときは、専門家に確認をお願いするのも大切です。

いずれにしても、契約書は全ての内容に目を通し、引き渡された物件と相違がないか確認しましょう。権利の行使には期限もあるため、早めに確かめておけるとよいですね。

イラスト:カワグチマサミ

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この連載について

【連載】これで解決!マンション暮らしのトラブル

複数の世帯が生活を送る分譲マンションでは、共用スペースの使い方やペットの飼育、ゴミ捨て場における利用マナーなど、思いがけないトラブルに遭遇する可能性があります。そこで、本連載『これで解決! マンション暮らしのトラブル』では、マンションでよく起こる困った問題の解決方法をテーマごとにご紹介。トラブル発生の防止や、万が一起こってしまった際の対応マニュアルとしてもご活用ください!

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