マンション総会の議事録はどう作成する? 記載する内容や注意点を解説
毎年1回は開催されるマンションの総会。開催にあたっては議事録の作成が必要です。
とはいえ、議事録は誰がいつまでに作成し、どういった内容を記載すべきなのか悩んでしまう人もいるでしょう。
そこでこの記事では、議事録作成の流れや記入例を紹介。作成時に気をつけておくべき注意点についても解説します。
総会の議事録作成は区分所有法で義務づけられている
区分所有法において、「管理組合の最高議決機関」と位置付けられる総会。議事録の作成が義務づけられており、「議事の経過の要領およびその結果」を記録します。つまりは、総会の開始から終わりまでにあがった議題はもちろん、その議決結果などを記載するのです。
総会での決議事項は建物の所有者をはじめ、区分所有者に対しても効力があります。議事録はそんな決議事項を記録する書類となるため、事実と相違なく作成する必要があるのです。
なお作成を怠ったり、記載すべき事実を記載しなかったりすると、20万円以下の過料に処されます。
議事録は議長が作成するよう区分所有法で定められている
結論から言うと、総会の議事録は「議長」が作成するように区分所有法で定められています。
通常、総会の議長を務めるのは理事長です。ただ理事長以外の区分所有者が総会を招集した場合、招集者のなかの1人が議長となって議事録を作成します。
議事録を作成した後は、議長と議事録署名人(総会に出席した区分所有者)2名の署名および押印が必要です。
なお総会の議事録は多くの場合、管理会社の担当者が下書きを作成し、議長が加筆・修正を行います。審議結果に「間違い」や「記載漏れ」がないか、議長だけでなく議事録署名人も責任を持って確認しましょう。
ステップごとに紹介! 総会の議事録作成手順
【ステップ1】管理会社がまずは下書きを作成
まず、管理会社の担当者が議事録の下書きを作成してくれます。ただ、管理組合の自主性が強い場合、管理会社に依頼せず、理事会の書記が議事録案を作成することも可能です。
【ステップ2】理事長による加筆・修正
管理会社から提出された下書きをもとに、議長が加筆・修正を行っていきます。
管理会社によっては記述の正確性に欠けたり不備が見られたりする場合もあるため、議長自らが虚偽の記載がないか確認しましょう。
そして、総会で話し合われた内容をもとに最終版の議事録の作成。最後に、議長と議事録署名人2名の計3名が署名および押印をします。
議事録はマンション内で配布するとともに、単身赴任などで外部に住む組合員にも郵送。原本は管理事務室等で保管してください。
総会の議事録に記載する内容とは?
では、議事録には何を記載すれば良いのか。
具体例をあげてみました。
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【記入項目】
・開催日時と場所
・組合員総数
・出席組合員数
・出席議決権数
(本人出席数、委任状による代理人出席数、議決権行使書面数)
・議長(理事長)の選任と開会宣言
・議案
(議案についての簡単な説明と採決の結果)
・議長(理事長)の閉会宣言と閉会時刻
・議長(理事長)と議事録署名人2名の署名・押印
【記入例】
令和○年○月○日(○)午前○時○分より、○○において、令和○年度定期総会を開催した。
組合員数○○名
議決権総数○○個
出席議決権数○○個(委任状出席を含む)
管理組合規則第○○条に定める総会成立要件を満たし、理事長○○○○が議長として選出され審議に入った。
第1号議案 ○○○○に関する件
議長は………につき説明し、満場一致で可決した。
第2号議案 ○○○○に関する件
議長は………につき説明し、満場一致で可決した。
議長は、以上をもって本日の議事を終了した旨を述べ、午前○時○分閉会を宣言した。
以上、上記議事を明確にするため、この議事録を作成し、議長及び出席者が次に署名捺印する。
令和○年○月○日
令和○年度定期総会
議 長 (署名・押印)
出席者 (署名・押印)
出席者 (署名・押印)
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理事会の議事録に記載する内容とは?
ちなみに、総会ではなく理事会の議事録で記載する内容についても具体例をあげました。
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【記入項目】
・開催日時と場所
・理事・監事の総数
・出席者数
・出席者の氏名
・審議事項
・議事の概要と決議結果
・議長(理事長)と議事録署名人2名の署名・押印
【記入例】
令和○年○月○日(○)午前○時○分より、○○において、第○回理事会を開催した。
理事○○名、監事○名
出席者(○○、○○、○○、○○)
目的及び審議事項
前回の理事会以降の活動を報告し、今後の活動について協議する。
第1号議案 ○○○○に関する件【報告】
第2号議案 ○○○○に関する件【協議】
以上、上記議事を明確にするため、この議事録を作成し、議長及び出席者が次に署名捺印する。
令和○年○月○日
第○回理事会
議 長 (署名・押印)
出席者 (署名・押印)
出席者 (署名・押印)
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議事録を作成するときの6つの注意点
【注意点1】虚偽の記載をしない
区分所有法によると、議事録の作成を怠った場合だけでなく、記載すべき事実を記載しない場合や、事実と異なる記載をした場合、20万円以下の過料(金銭罰)に処されます。
とくに当日になって欠席した組合員がいると、議決権の総数などに間違いが起こりやすいです。そのため管理会社に下書きを依頼している場合、議決権総数に誤りがないかは確認しておきましょう。
【注意点2】総会後、速やかに最終版を作成する
法的には、議事録の作成期限は定められていません。
ただ、区分所有者などの利害関係人が「議事録を閲覧したい」と申請したら、閲覧を認める必要があります。そのため、総会後、できるだけ速やかに最終版の議事録を作成する必要があるでしょう。
管理会社の担当者には1週間程度で下書きを作成してもらうよう依頼し、総会から約2週間、遅くとも1ヶ月以内には完成できると良いですね。
【注意点3】作成はあくまで議長が行う
総会の議事録は議長(理事長)が作成するよう区分所有法に定められています。
実際の書面の作成は管理会社の担当者(フロントマン)が下書きを作成するのが一般的ですが、記載内容に誤りや漏れがないよう、議長が責任をもって確認・修正する必要があります。
【注意点4】体裁を揃える
記載事項や使用するフォントなど、統一のテンプレートを用意しておくと見やすい議事録が作成できます。
管理会社の担当者に下書きの作成をお願いしている場合には、担当者の交代で書き方が変わってしまう可能性もあります。統一した体裁で議事録を作成できるよう、テンプレートは共有しておきましょう。
【注意点5】原本を保管しておく
議長と議事録署名人の署名・押印がある議事録の原本は、管理事務室などで大切に保管しておきたいところ。
ただ、住人への配布に使うのは、コピーした議事録です。利害関係者からの閲覧申請に対しても、原本かコピーかの規定はありません。とはいえ「原本を見せて欲しい」という要望が来ることもあるため、コピーではなくあくまでも原本を保管しておきましょう。
【注意点6】トラブル回避のために議論も録音しておく
総会の決議事項に対して、「言った・言わない」のトラブルが発生する懸念もあります。発言が食い違わないためにも、議事録だけでなくボイスレコーダーで記録しておくと安心です。
なお、ボイスレコーダーを使用する場合は、総会の冒頭で出席者に録音を了承してもらいましょう。
議事録の作成は義務! 最終版には3名の署名・押印を
総会では議事録の作成が義務づけられており、作成は議長が行うよう、区分所有法で定められています。議事録には総会の開始から終わりまでの経過や、議決結果などを記載するようにしましょう。
一般的には、管理組合の担当者が下書きとなる議事録案を作成し、議長が加筆・修正。議事録の作成に法的な期限はありませんが、「議事録を見たい」という住人からの要求に応えるため、総会後約2週間から1ヶ月を目処に完成させましょう。
最終版の議事録には、議長および議事録署名人2名の計3名の署名、押印が必須。原本は大切に保管し、関係者にはコピーを配布しましょう。