全住民納得の理事会運営!理事長を解任する3つの方法
「理事長が管理組合を私物化している…」「他の理事の話を聞かない」
そんな気になる点のあるマンション管理組合の理事長に対して、解任要求を行える方法があります。
今回は問題のある理事長を解任する方法を紹介していきます。
理事長を解任することはできる?
健全で持続可能なマンション運営に取り組んでいるマンション理事会。その業務は多岐に渡り、なかなか骨の折れる仕事の数々…。そんな理事会を取りまとめているのが、マンション理事長。
ただ、そんな理事長の中には、マンション住民からすると気になる点がある方も。今回は、もし理事長が問題のある行動や不正をしていた場合、どのような流れで解決へ進んでいくかをご紹介します。
解任するにはどうすればいいのか?に主題を置いて紹介しますが、その決断に至る前に理事会での話し合いなどで、お互いの認識を擦りあわせるのが一番。マンション理事長という責任感のある立場から、尽力していた結果、誤解を招いてしまったケースも。
マンション理事会、マンション住民が一丸となって、健全なマンション運営を行うために当記事がお役に立てれば幸いです。
理事長の解任についてマンション管理規約に記載が無いところが多く、詳しい方法がわからないという方が多いでしょう。しかし結論から言えば、理事長の解任を求める方法は、次の3パターンが存在します。
(1)理事会で過半数賛成をもって職位を解く
(2)区分所有者による総会で理事職を解任する
(3)監事による総会で理事職を解任する
理事長の解任については、理事会での過半数の賛成で行うことができます。2017年に最高裁判所が理事会の多数決で、理事会にて理事長の職を解くことができるとの判決を下しました。
一方、理事長は理事の中から選任されますが、理事職そのものの解任によって理事長職を解くことも可能です。こちらは総会による決議となり、選任や解任のルールはマンションを購入すると適用される区分所有法と、国土交通省が作成した標準管理規約で規定されています。なお、総会の開催には区分所有者によるものと監事が行うものの2通りの方法があります。
理事長に解任を求める3つの方法
【方法1】理事会で過半数の賛同を得る
理事会で賛成が規定数に達していれば、議決によって解任が可能。特に規定数が決まっていない場合、過半数での議決になります。これにより職を解かれた理事長は、通常の理事になります。
ただし、理事会の構成員には注意が必要です。構成が理事長、副理事長、監事の3者の場合は監事に議決権が無いため、理事長が解任に反対票を投じるとなれば、過半数の賛成を得ることはできません。
また、重要事項について話し合いを行わないなど、理事長の行動について共謀している理事が過半数以上いる場合も、解任の議決を得ることは難しいでしょう。
【方法2】区分所有者による総会開催で決議
総会の開催は一般的に理事長が行うもの。しかし他の区分所有者が招集したい場合、組合員総数における5分の1以上の同意があれば理事長に開催の請求が可能です。
理事長は、請求が来てから2週間以内に招集通知を送る必要があり、何らかの事情で送ることができない場合は組合員である請求者が総会を招集できます。
しかし、総会運営に関わる多くの実務作業に理事長は関わっており、実行は容易ではありません。
例えば、組合員名簿の管理や、出席票・委任状・議決権行使書の徴収などが該当します。
区分所有者が総会の招集通知を送付するには、送り先を確認するために組合員名簿を見る必要があります。
しかし、名簿は基本的に理事長が管理するもの。閲覧を希望しても拒まれる可能性が高いでしょう。
標準管理規約64条では、組合員には閲覧する権利があることが明記されています。個々のマンション管理規約にも載っている可能性は高いです。明記されていれば規約に基づいて、正当に閲覧を請求できます。
名簿を見ることができたら各組合員に招集通知とともに、出席票・委任状・議決権行使書を送ります。返信が無ければ提出を促すことも必要です。マンション外に居住している区分所有者にも送る必要があり、催促を行う場合は非常に骨が折れるでしょう。
理事長には頼ることができないので、慣れていなければ経験者に相談することも必要です。
様々な課題があり非常に難しいですが、これらを適切に行うことができれば、総会を開催することが可能となります。
【方法3】監事による総会開催で決議
標準管理規約第41条では、監事は理事会や他の組合員の承認を得ることなく、総会の開催を理事長に請求できることになっています。
ただしこれには条件があり、理事の不正やその恐れがある行為を認めたときに限られています。
条件付きではありますが、監事は理事長と並ぶ権限を持っていると言えます。監事といえば昔は不正を報告するという職務に限られていましたが、2018年に示された現在のマンション標準管理規約で、理事会招集の請求権など権限が強化されました。
気をつけたいのは、開催議案や表現によっては中傷と捉えられ、理事長から提訴される恐れがあるということです。
2012年には重なる議事録改ざんを行ったとして解任された元理事長が、後任の理事長らを相手に名誉棄損と損害賠償請求訴訟を起こした事例がありました。
独裁的な理事長を防ぐ方法とは?
対策1.マンション管理規約に追記する
理事長の解任は明確な規約がないことが多く、実行が難しいことがおわかりになったことかと思います。そこで予防的な対策として、マンション管理規約に「解任の場合も理事会で決定するものとする」と追記しておくことをおすすめします。
規約の改定には総会で4分の3以上の賛成が必要です。組合の運営に関して、区分所有者の間でわだかまりが無く、賛成が得られやすいときに開催するのがいいでしょう。
改定の際には注意が必要です。例えば、理事長の解任時にはポストが空白になるため、暫定的に副理事長が職務を行うとの補足事項の追記が必要です。
また、理事による解職が濫用されないように気をつける必要もあります。一般的に運用される過半数の議決では、理事数名が結託して簡単に理事長を降ろすことができてしまいます。議決には理事の3分の2、あるいは4分の3以上の賛成が必要など、より多数の理事による同意があってはじめて解任できるようにしたいですね。
対策2.理事会役員が責任感を持つ
理事会役員が組合の運営に無関心だと、理事長は「自分がすべてを決めていかなくてはならない」という思いに縛られてしまいます。そして次第に理事たちの意見を聞かず、暴走・独裁に向かっていく恐れがあります。
また、周りが誰も見ていないのをいいことに、あらぬ下心から不正をはたらいてしまうケースがあるかもしれません。
そのようなことを防ぐためにも、役員一人一人が理事会への関心を示し、当事者意識を持って運営に関わる必要があるでしょう。
そのためにも、理事会など組合の会合があればできるだけ参加するようにしましょう。議事録を適宜作成し、組合員で共有することで不慣れな方も運営に参加することができます。
対策3.暴走したらたしなめ、ときには牽制が必要
例え複数人が理事会に参加して運営に関わったとしても、独断で物事を進めようとする理事長が出てくることもあるかもしれません。
そんなときは理事長に問題を指摘し、たしなめるようにしましょう。必要があれば他の役員にも働きかけることも大事です。
そのためには理事長を牽制できるだけの知識が必要です。管理組合とは何なのかを、理事それぞれが最低限学習しておく必要があります。
管理規約に理事長解任の条件を定めておこう
理事長を解任できた例は過去にありますが、その方法は主に理事会・総会で賛成多数を得るという難しい方法であることが、おわかりになったかと思います。
そのため、どうしても辞めさせなければならない事態に備えて、管理規約で解任の条件を明確にしておくことが望ましいでしょう。
もちろん、暴走させないための予防策が何より大切です。理事会などの会合には積極的に参加して、話し合いの場を持ち、自分が暮らすマンションについて、理事会について興味・関心を持って取り組むのがよいでしょう。