修繕・改良・改修の違いは?意味や工事内容をくわしく解説
マンションの大規模修繕において、修繕だけでなく改良や改修といった用語が使われるケースがあります。
それぞれメンテナンスを意味するのは理解できても、違いがよくわからない人は少なくありません。この記事では、
・修繕
・改良
・改修
について、それぞれの工法の特徴や目的をふまえて解説します。
修繕・改良・改修の違い
(1)修繕とは
修繕とは、建物や設備の経年により劣化した機能・性能・美観を建築当初の水準まで回復させる工事を指します。
マンションやアパートは経年によって劣化が進み、損傷や不具合が生じます。外壁や床のひび割れなどの損傷は外観が損なわれてしまうだけでなく、放置していると建物のさらなる劣化につながる可能性も。
例えば、外壁のひび割れから雨水が浸食し、雨漏りや建物内部の腐食を引き起こすケースも考えられます。マンションを守り、住民の安全を守るためにも定期的な修繕は欠かせないのです。
一般的な修繕工事の工程は、仮設工事や下地・タイルの補修、塗装による防水工事などがあります。
なお、修繕は建築当初への原状回復を目的とした工事のため、使用される材料等はできる限り建築当初と同じか、あるいは近い材質を選ぶのが一般的です。
経年や雨風による劣化は避けられないため、マンションでは十数年に一度、足場などを立ててマンション全体の大規模修繕工事を実施します。修繕にかかる費用は高く、実施のタイミングには慎重な見極めが必要です。
(2)改良とは
改良とは、性能や機能をグレードアップさせる工事を指します。修繕工事と異なるのは、建築当初の水準まで回復させるのではなく、性能向上を目的とする点です。そのため、より新しく優れた材料や工法が選択されます。
車椅子でも移動しやすくスロープを設置するバリアフリー化や、太陽光発電パネルを設置する省エネ化などが改良工事の一例です。ほかにも、警備システムの強化なども改良工事に含まれます。
詳しくは後述しますが、地盤を適切な状態に施工する「地盤改良工事」も改良工事の代表例です。
(3)改修とは
改修とは、建物の原状回復と機能向上を合わせた工事です。前述した修繕と改良を組み合わせた工事ともいえるでしょう。
改修工事は、(2)で紹介したバリアフリー化や省エネ化以外に、
・耐震性の向上
・断熱性の向上
などを目的とした施工があります。改修工事の実施により、建物の安全性や利便性が向上し、資産価値のアップも見込めるのです。
なお、性能だけでなく外観も含めた大幅な改修工事は「リノベーション」と呼ばれます。リノベーションは、新築物件よりもコストを抑えて最新の設備を備えた住居が手に入ると人気の手法です。
このように、改修工事の目的は設備の劣化や不具合を補修するだけではありません。ライフスタイルや時代の変化に合わせ、住みやすい環境整備を目指して実施されます。
地盤改良工事とは
地盤改良工事は改良工事の一種で、人工的な処理を加えて土質や地盤を改良する工事です。マンションやビルを建てる際、地盤が不安定な場合に強度を増すために実施されます。
地盤改良工法はいくつか種類があり、
・表層改良
・柱状改良
・鋼管杭工法
など、目的によって使い分けが必要です。
軟弱であると思われる地盤が地表から2m以下と浅い場合は、表層改良法が用いられます。表層の軟弱な地盤部分を掘削し、セメント系固化材を散布します。原地盤の土と混合させ、強度を高めるとともに均等化します。表層改良工法は地表面だけを固める工法で、一般的に原地盤を除去する必要がないため、工期も短く費用を抑えた作業が可能です。
自重の重いビルやマンションなどの中規模建築物や、支持層が深く表層改良工法では強度を出すのが難しい場合は、柱状改良法が選択されます。シンプルな工法で取り扱い業者も多いため、安価なセメントを使用するなどの工夫でコストを抑えた施工も可能です。
鋼管杭工法は、鋼管を地中に埋め込み建物を支える工法で、強度や安定性に優れています。ただし、セメントではなく鋼管を用いるため、費用は全体的に高くなるのが一般的です。
地盤改良工事により地盤の強度が増すと、建築物の耐震性も向上します。また、地盤沈下や液状化現象を防止する効果も期待できます。一方で、地中の埋蔵物を除去しないとその土地が使えないような場合は、地価決定時にマイナス要素になってしまう可能性も。
目的に応じて工事を使い分けよう
建物の資産価値を高めるためには、定期的な工事が欠かせません。とはいえ、工法によって費用や工期は異なります。
原状回復が目的なら修繕工事、利便性や機能向上が目的なら改良工事、どちらも兼ね備えた処置が必要なら改修工事など、目的に合わせた適切な工法の選択が大切です。
それぞれの工法の特徴を理解したうえで必要に応じた工事を施し、建物の資産価値を維持しましょう。