理事・管理

マンション管理計画認定制度とは?! そのメリットも解説

2025.03.03
マンション管理計画認定制度とは?! そのメリットも解説

2022年に国土交通省がスタートした「マンション管理計画認定制度」。マンション管理が適正かを評価する制度で、認定を受けるマンションは年々増えていますが、まだ十分な知名度があるとはいえません。

そこで、今回はマンション管理計画認定制度の内容や評価基準、認定を受けると得られるメリットについて確認していきます。

マンション管理計画認定制度とは

混同しがちな、「マンション管理適正評価制度」は民間の制度

マンション管理計画認定制度とは、地方公共団体が一定の基準を満たすマンションの管理計画を評価し、認定する制度です。2022年4月に始まってから認定件数は年々増加し、2024年3月末時点で631件のマンションが認定を受けています。認定の有効期間は5年間で、手続きをすれば更新も可能です。

制度ができた背景には、マンションの老朽化や管理組合の担い手不足が挙げられます。築40年を超えるマンションは、2028年には約198万戸、2038年には約367万戸まで増加すると予測されています。制度を通して、マンションの老朽化を抑制するための維持・管理の適正化が期待されているのです。

管理計画の認定を受ける際は、マンション管理士による事前審査や自治体への申請などに費用がかかります。申請費用は自治体によって異なるので、事前に調べておきましょう。

管理計画の認定基準は大きく5つに分類される

管理計画が認定されるための基準は、大きく分けて以下の5つです。

(1)管理組合の運営
(2)管理規約
(3)管理組合の経理
(4)長期修繕計画の作成および見直しなど
(5)その他

「管理組合の運営」についての項目では、管理者や監事を定められているかや総会を定期的に開催しているかなどがポイントとなります。

2つ目の基準である「管理規約」は、規約が作成されているだけでは十分と言えず、管理組合の管理・財務の状況に関する情報提供の方法についてまで定められていなければなりません。また、火災が発生した際にベランダを避難経路として支障なく利用するためのベランダの利用ルールや、これまでマンション内で実施してきた修繕の履歴も規約に記されている必要があります。

「管理組合の経理」は、修繕積立金の適切な集金や管理ができているかが重要です。また、経理上、管理費と修繕積立金が明確に分類されて処理されていなければなりません。

4つ目の「長期修繕計画の作成および見直しなど」では、「計画期間が30年以上あり、2回以上の大規模修繕の予定がある」など、一定の基準を満たした長期修繕計画の作成が必要です。修繕積立金についても、トータルで予想される必要な総額に対して平均額が低すぎないといった点が重要視されます。

また、「その他」の基準では、緊急時の連絡用に管理組合員や居住者の連絡先を控えた名簿の作成や、地方公共団体独自の基準に適合しているかが審査の対象となります。

混同しがちな、「マンション管理適正評価制度」は民間の制度

名前が似ているがそれぞれ違う制度

ほかにもマンションを適切に管理できているかを評価する仕組みに、「マンション管理適正評価制度」があります。

マンション管理適正評価制度は、管理業務主任者またはマンション管理士が、マンションの管理や組合運営の状況を評価する制度です。マンション管理計画認定制度は地方公共団体が評価を行うのに対し、こちらの制度は一般社団法人マンション管理業協会が講習を実施した専門家が評価や助言を行います。

評価項目は5つあり、一部は管理計画認定制度の認定基準と重複する部分もあります。そのほかにも、耐震診断や消防訓練が実施されているかなどの項目があり、マンションの管理状況を総合的に評価しています。

評価は星0から5の6段階です。評価結果は協会のホームページにある「マンション管理適正評価サイト」で公開され、マンションの管理状態が一目で分かるようになっています。

マンション管理計画認定制度で認定を受ける5つのメリット

【メリット1】資産価値の向上

認定されれば購入希望者へのアピールとなる

マンション管理計画認定制度でも、認定を受けたマンションの情報は公開されます。公開先は、公益財団法人マンション管理センターのホームページ上にリンクがある「管理計画認定マンション一覧」のほか、民間の不動産情報サイトにも記載がある場合があります。

計画が認定されれば、購入希望者への管理能力のアピールになり、市場評価の向上が期待できるでしょう。マンションの資産価値向上は、所有者にとっても大きなメリットです。

【メリット2】管理上の課題の把握

審査を受けた結果、認定に至らなかったとしても無駄ではありません。マンションの管理状況を第三者に評価されることで、マンション管理の課題や今後の目標が明確になるというメリットがあります。

課題の改善についてアドバイスがもらえれば、今後管理の適正化のために何をするべきかが明確になるでしょう。

【メリット3】融資の金利引き下げ

融資を検討しているなら金利引き下げは大きな魅力

管理計画認定マンションでは、住宅金融支援機構からの融資である「フラット35」と「マンション共用部分リフォーム融資」の金利の引き下げを受けられます。

マンション共用部分リフォーム融資とは、共用部分のリフォームや耐震改修の工事費用が対象となる融資です。管理組合だけではなく、一時金を負担する区分所有者も利用できます。

マンション共用部分リフォーム融資の金利は、通常、返済期間が1年以上10年以内で年0.97%、11年以上20年以内で年1.03%。認定を受ければ、全期間にわたって年0.2%ずつ引き下げられます。融資を検討しているマンションにとっては、見逃せないメリットといえます。

【メリット4】マンションすまい・る債の利率の上乗せ

「マンションすまい・る債」とは、住宅金融支援機構がマンション管理組合のために発行している債券です。修繕積立金の計画的な積み立てや保管、運用のサポートを目的としています。

満期は10年。毎年1回利息を受け取り、満期時に元本が戻ってきます。1口50万円単位で、最大10回まで積立購入も可能です。通常の年平均利率は0.5%ですが、管理計画認定マンションは0.55%に上乗せされます。例えば、5000万円分購入すると10年間で受け取れる利息に約25万円の差が出るので、購入を検討しているのであればぜひ認定を受けておきたいですね。

【メリット5】マンション長寿命化促進税制の適用

マンション長寿命化促進税制は、マンションの外壁塗装と床や屋根の防水工事(長寿命化工事)を実施した翌年に、固定資産税が減額される制度です。修繕積立金の確保や工事の適切な実施を後押しするために2023年に創設されました。

対象となるマンションの要件は4つあります。

(1)築20年以上が経過している
(2)総戸数が10戸以上である
(3)過去に長寿命化工事を行っている
(4)管理計画認定マンションまたは、助言指導に係る管理者等の管理組合に係るマンションである

減税措置を受けるには、管理計画の認定が必要です。建物部分の固定資産税から、6分の1〜2分の1の範囲で減額されるので、大規模修繕の時期が近づいているマンションは、早めに認定を受けておきましょう。

申請のための事務負担が発生する点に注意

認定申請は理事会の決定だけでは行えず、必ず事前に管理組合の総会で合意を取らなければなりません。

また、申請はまず最初に公益財団法人マンション管理センターに事前確認の依頼をします。事前確認とは、申請するマンションの管理状況が認定を受ける基準に達しているかの確認作業です。

事前確認で問題がなかった場合は、マンション管理センターから「事前確認適合証」が発行されます。正式な認定を受けるためには、そのあとに地方公共団体に改めて認定申請が必要なため、管理組合に事務的な負担がかかります。

マンション管理センターでは、管理計画認定手続支援サービスを提供しているので、申請に手間をかけたくない人は利用しましょう。サービスを利用すれば、システムに必要事項を入力するだけで、地方公共団体に提出する申請書が自動生成されるので、申請作業の手間を減らせます。支援サービスのシステム利用には、1申請につき1万円がかかる点にはご留意ください。

申請書のほかに管理規約や決算書類を用意

必要書類は地方公共団体によって異なる

申請で必要となる主な書類は以下の8つです。

(1)認定申請書
(2)管理規約の写し
(3)賃借対照表
(4)収支決算表
(5)総会議事録の写し
(6)長期修繕計画の写し
(7)組合員や居住者の名簿の保証書
(8)修繕積立金滞納額がわかる書類

ただし、必要な書類は地方公共団体によって異なるので、自分のマンションがある都道府県のホームページを確認しましょう。

大規模修繕の準備の一環として活用を

マンション管理計画認定制度の認定を受ければ、管理力の高さの証明になるため、資産価値向上に期待できるでしょう。

さらに、フラット35の金利引き下げやマンションすまい・る債の利率アップなどのメリットも得られます。認定を受けることで、大規模修繕に向けた資金準備がよりスムーズになる効果にも期待できるのです。

事前の準備が組合にとっての負担になる面もありますが、支援制度を上手く使いながら、認定を目指してみるのもよいでしょう。

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