任意で定められる管理組合の役員報酬。相場やメリットも解説!
マンションの住民にとって負担が大きいと言える、管理組合の役員就任。報酬があればやる気になるかもしれませんが、本当に必要なのでしょうか。
役員報酬を設けるメリットから相場まで解説していきます。
役員報酬の支払いは義務ではない
マンション標準管理規約によると、「役員としての活動に応ずる必要経費の支払と報酬を受けることができる」と明記されています。報酬の支払いは義務ではなく、基本的には任意だといえるでしょう。
ちなみに、マンション総合調査(2018年)によると、全体の約7割が役員報酬を支払っていないと判明。とくに新築のマンションほど、支払っていない割合が高くなるようです。
しかし、マンションの規模が大きくなるほど、報酬を支払っている管理組合の割合は多い傾向に。規模が大きい分、役員の負担も大きくなるため、報酬を支払う傾向にあると予想されます。
報酬の相場は月3000円以下
では、役員へ支払う報酬の相場はいくらなのでしょうか。
役職に関わらず一律で同じ金額を支払っている管理組合の場合、月3000円以下が全体の約30%を占めていて最も多くなっています。一方、役職ごとに異なる金額を支払っている場合、最も割合を占める金額はそれぞれ以下の通り。
・理事長は「10000円超」(全体の約20%)
・理事は「1000円以下」(全体の約30%)
・監事は「1000円以下」(全体の約35%)
理事長など、責任を負う立場であるほど負担が大きいため、報酬も上がっていくようです。
報酬はモチベーションと管理品質の向上に繋がる
役員報酬の支払いは管理組合にとってもメリットとなります。具体的なメリットについて見ていきましょう。
【メリット1】管理組合の業務に対し、金銭で報いることができる
管理組合や理事会の仕事は休日に行われることが多いです。「見返りがないのに休日を潰したくない」と考えるのは自然なことでしょう。
しかし、管理業務を実施することで金銭を受け取れるとなれば別。ただ働きではなく、自分の行動に対して報酬を受け取れるため、何も得られず休日を過ごした気分にならずに済みます。
【メリット2】モチベーション向上で、管理の質が上がる
報酬があると分かっていれば、マンション管理に対して積極的に取り組むモチベーションが湧いてきます。そうなると、次第に管理業務に対して責任が生まれやすくなり、その結果、管理の質も向上するかもしれません。
質が向上するということは、管理が行き届きやすくなるということ。きちんと管理され続けることで、長い目で見ると資産価値の向上にもつながります。
コストとプレッシャーがかかる点に要注意
【デメリット1】報酬を支払うには追加のコストが必要
役員報酬を実施するのであれば、今までの管理費では足りなくなってしまうかもしれません。報酬を支払うための費用を追加する必要が出てくるためです。
また、なかには役員報酬目当てで、役員に立候補する人が出る可能性も。費用をどう工面するかだけでなく、報酬目当てであまり業務をやりたがらない役員への対応などが必要になるかもしれません。
【デメリット2】役員への期待が高まり、プレッシャーにつながる
区分所有者からの意見は貴重ですが、その意見が役員にとってプレッシャーになることも。
例えば、「役員は報酬を受け取っているから仕事をして当然」という意見。きちんと仕事をしなければいけないというプレッシャーになると、報酬をもらえたとしても役員に就任したくないと思う人が出てくるかもしれません。
逆に役員以外の組合員は、マンション管理に対する当事者意識がどんどん薄れてしまう可能性があります。
役員報酬を支払うまでの流れ
まずは理事会で予算案の検討と作成
最初は役員報酬の具体的な支給額や支給方法を検討します。
例えば支給額については、管理規約に以下のように追加しておきましょう。
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第○条 役員は、役員としての活動に応ずる以下の報酬の支払いを受けることができる。
役員報酬(年額)
理事長 ○○○○円
副理事長 ○○○○円
会計 ○○○○円
理事 ○○○○円
監事 ○○○○円
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毎月なのか、それとも毎年なのか支給タイミングも決めておく必要があります。
また役員報酬は基本的に課税対象。そのため、源泉徴収分を差し引いた金額が報酬として支払われることになります。
ちなみに、月ごとの予算のうち余った分を役員報酬として支払う、といった方法はできません。
組合員への説明を行う
支給額や支払方法が決まったら、次は組合員への説明です。役員以外の組合員も、マンション管理の当事者。なぜ、役員報酬を導入する必要があるのかを説明しなければなりません。
このとき、役員報酬の実施で期待できるメリットはもちろんデメリットも話し、そのうえで組合員の理解を得ましょう。
管理をどう進めていくかを踏まえて導入の検討を!
役員への報酬は、標準管理規約によって設定できると認められています。だから、役員を務めたい人がいないといった問題の解決策になるかもしれません。
もし役員報酬を導入するのなら、どのようなメリットやデメリットが生じるかを理解する必要があります。そのうえで、報酬を導入するべきかを判断しましょう。
導入を決めたなら、組合員の理解は必須。組合員が納得しないまま始めると、後々トラブルに発展する可能性も。マンション管理は役員だけでなく、組合員にとっても関係あること。組合員の理解を得てから導入しましょう。