マンション管理組合の総会議事録の作成ガイド!
「管理組合における最高意思決定機関」とされているマンション総会。管理組合が決めるべき多くのことが決議される場であるため、総会の内容を議事録に記録しておくことは非常に重要です。
総会が毎年開催されるように、議事録も年に一度は必ず作成することとなります。そんな議事録についての、書き方や、作成時に気をつけるべきポイント、作成後の保管方法などについて学んでいきましょう。
マンション管理組合における総会議事録の必要性は?
マンション総会は、管理組合全体でマンション管理についてのさまざまな議案を決議する場です。管理組合にとっての重大な決定を行うため、総会でどんなことが議題にあがり、どのように議決されたのかということをしっかり記録しておくことが求められます。そこで、作成されるのが総会議事録です。
議事録は区分所有法によって作成が義務づけられています。作成を怠った場合には、20万円以下の過料に処されるというペナルティも存在しているため、管理組合としては必ず作成しなければならないということを覚えておきましょう。
マンション管理組合の総会議事録の作成者
区分所有法では、議事録は総会の議長が作成するものであると定められています。通常、総会の議長は理事会の理事長が務めるので、基本的には「議事録作成者=理事長」という認識で差し支えないでしょう。
しかし、総会の招集を理事長とは別の管理組合員が行った場合は例外となります。
組合員総数の5分の1および、議決権総数の5分の1以上にあたる組合員の同意があれば、理事長以外の管理組合員でも臨時総会を招集することが可能です。総会の議長は、別段定めがない限り、招集を行った者が務めることとなっています。このような場合は、議事録の執筆は理事長ではなく、招集を行った区分所有者の内の誰かが担当することとなります。
マンション管理組合で総会議事録を作成する3つの手順
手順1 : 管理会社による下書き作成
多くの管理組合では、議事録の下書き作成を管理会社に委託しています。ただし、必ずしも管理会社が作成しなければならないということはありません。
管理会社に委託しない場合は、理事会の書記担当者が下書きを作成することが多いようです。
手順2 : 議長による加筆・修正
下書きができたら、議長が内容の確認を行い、必要に応じて加筆・修正を行っていきます。
管理会社に下書きの作成を任せている場合、担当者によっては、意図的に管理会社側にとって不都合な情報を下書きに記載しないことがあるかもしれません。また、故意にではなくても、不注意で記入漏れなどが起こる可能性もあります。そのような場合であっても、議事録作成の責任者はあくまで議長ですので、内容のチェックは入念に行いましょう。
ステップ3 : 署名・押印する
議長による加筆・修正が終わったら、仕上げに署名・押印を行いましょう。総会議事録の末尾へ、議長と総会参加者の中から議長が指名する2名の議事録署名人、計3名によって署名・押印を行います。 この署名・押印は、何か問題が発生した場合に、総会の経過と結果を証明するための証拠となるものです。
実際のところ、議事録署名人の署名・押印がなくても、議事録に記載されている内容が事実に反していないのであれば、議事録の法的な効力が失われることはないようです。ただし、署名人の署名・押印のない議事録は、全員分の署名・押印がされている議事録と比べると、法的効力が弱くなるといわれているので、手間を惜しまずにしっかり手順を守る方が良いでしょう。
総会議事録を楽に作成するコツ
総会ではさまざまな議題について話し合いが行われるもの。時間が経つと、誰がどんな発言をしたのかということや、議論の細部をどうしても思い出せなくなってしまう場合があるかもしれません。そのような事態を防ぐためにも、総会の模様はボイスレコーダーなどの機器を使って録音しておくようにしましょう。
ボイスレコーダーを活用することで、執筆の手間を減らす方法もあります。録音した音声でGoogleドキュメントの音声入力機能を使用すれば、文字入力の手間を省くことができます。音声入力ツールにはたくさんの種類がありますが、無料で使用でき、音声入力の精度も高いGoogleドキュメントはおすすめ。早口で話すと機器が聞き取れない場合もあるので、実際に使用する場合は、事前に話す早さや音量のテストをしておきましょう。
また、総会で録音を開始する前に、参加者へ議事録執筆のために録音する旨を周知しておくこともお忘れなく。
総会議事録を作成するときの注意点
重要な質疑応答は記載しておく
多くの質疑応答が行われた総会では、議事録にその模様をすべて記載すると冗長になってしまうため、省略しても問題はないでしょう。区分所有法においても、総会における質疑応答を記述することを義務とはしていません。
ただし、決議を左右するような重要性の高い質疑については、議事録に記録しておくことが望ましいと言えます。後々「言った、言わない」といったトラブルを避ける為にも重要なポイントはしっかりと押さえることを意識して議事録を作成しましょう。
虚偽の記載はしない
当然のことながら、議事録に事実と異なる内容を記載してはいけません。区分所有法では、議事録に虚偽の記載をした場合の罰則として、作成を怠ったときと同様に20万円以下の過料に処されることが定められています。
議決権総数の記載に誤りがないかといった、数字の書き間違いが起こりやすい箇所などもしっかりとチェックしておきましょう。
できるだけ迅速に作成する
議事録の作成期限については、特に区分所有法による定めはありません。しかし、総会での決定事項における利害関係人から請求があった場合には、議事録の閲覧を認めなければならないということは義務として決まっています。要望があった際に、直ぐに対応できるよう、議事録の作成は速やかに行っておきたいところ。
早期での作成を目指すための目安としては、まずは総会開催後1週間程度で下書きを提出するように管理会社に相談しましょう。議長は、下書きを受け取った後、1週間程度で議事録を完成させられるように進めると、制作期間としては十分早いと言えます。
過去の議事録と様式を統一する
管理会社の担当者変更があった際には、下書き作成の段階で、議事録の様式が変更されることがあるため注意が必要です。
議事録は年に1度は必ず作成するもの。書式やフォントといった様式が毎年違っていると、読み手が読みづらさを感じるかも知れません。そのため、議事録は過去の様式を踏襲して作成するのが良いと言えるでしょう。
過去の様式に従って作成していくと、記入すべき項目に漏れがあった場合に気付きやすくなるというメリットもあります。
総会議事録の作成後の対応
議事録の原本を保管する
作成した議事録の原本の保管をすることも議長の役割です。さらに、議長は議事録の原本の保管場所をマンション内の見やすい場所に掲示することが、区分所有法によって定められています。
上記の通り、原本は保管されるので、管理組合へ向けて配布を行う場合はコピーを配ります。
閲覧請求に対応する
前述の通り、総会の決定における利害関係人から請求があった場合、閲覧を許可することは理事長の義務です。正当な理由がない場合を除いて、議事録の閲覧を拒むことはできません。議事録の閲覧請求を受けた理事長は、閲覧を行う日時、場所等を指定することができることが標準管理規約で定められています。
なお標準管理規約における「利害関係人」とは、「敷地、専有部分に対する担保権者、差押え債権者、賃借人、組合員からの媒介の依頼を受けた宅地建物取引業者等法律上の利害関係がある者」とされています。単に事実上利益や不利益を受ける者、親族関係にあるだけの者等は対象にならないと定義されています。
議事録作成は議長の責任が大きい
総会の議長を務める場合には、総会終了後、議事録の作成にも義務を負うこととなります。作成する時は、総会に参加できなかった人にも内容が伝わるように、漏れなく、わかりやすく記載することが重要です。
注意したいのは、管理会社の下書きに不備があった場合でも、それに気がつかなければ議長の責任が問われてしまうなど、議長の責任が大きい点。万が一、不備があった場合には、罰則規定の対象となってしまう場合もあるので、総会の議長を務める際には、気を引き締めて取り組むように心掛けましょう。