理事・管理

管理組合を法人化すれば、組合名義で不動産登記や口座開設ができる!

2021.07.13
管理組合を法人化すれば、組合名義で不動産登記や口座開設ができる!

「組合名義で不動産登記ってできる?」「理事長が交代するたびに名義変更をするのが面倒…」

そんな疑問や悩みを解決する手段の1つが、管理組合の法人化です。

今回は管理組合の法人化を検討されている方に向け、法人化のメリット・デメリットや、どのような手続きが必要になるか紹介していきます。

管理組合と管理組合法人の違いは不動産登記できるかどうか

管理組合を法人化すると何かが変わる?

結論から言うと、大きな違いはありません。

管理組合とは区分所有法によって区分所有者全員で組織する旨が定められている団体です。非法人であっても問題はなく、自主管理組織としてみなされます。法人化しても、組織の主たる目的は「マンションの管理」です。法人化の前後で、管理規約が変更されることもありません。

ただ、後ほど紹介しますが、法人化すると管理組合名義で不動産登記を行えるなどのメリットがあります。

不動産登記における名義人になり得るのは、基本的に「一個人」や「法人」だけ。法人化することによって、法律上の人格を有することになるため、管理組合名義で不動産登記などが行えるようになるのです。

法人化する5つのメリット

【メリット1】不動産登記など法的手続きがスムーズに

前述した通り、法人化を行うと、不動産の所有者として管理組合名義で登記が可能となります。

法人化していない場合、新たに不動産を購入する場合の名義人は理事長など。ただ、理事長交代時に登記変更の手間が発生してしまいます。そこで法人化することで、管理関係が明瞭化され、手続きの手間も省くことができるでしょう。

【メリット2】訴訟など法的措置の円滑化につながる

法人化により、訴訟など法的措置を滞りなく行うことにもつながります。

マンションを管理する上でよく問題にあがるのが、管理費や修繕積立金の滞納。法人化していない管理組合では理事長名義での請求となり、理事長の精神的な負担や、権利行使も消極的になってしまう可能性があります。法人化すれば管理組合名義で請求することができるため、理事長が矢面に立つ状況を防げます。

滞納以外にも規約違反や立ち退き交渉、住民トラブルなどさまざまな問題が起こる可能性があります。なかには、訴訟まで発展するケースもあるかもしれません。仮に訴訟中に理事長が代わると、再手続きを踏む必要があったり、中断したりする可能性も。法人化はこうした手続きの煩雑さも解消できるでしょう。

【メリット3】信用力も増加!?融資を受けやすくなることも

大規模修繕や不動産取得時に金融機関から融資を受ける場合、法人格を有していることで信用力が増し、融資を受けやすくなる可能性があります。

また法人化により、管理会社や工事業者との契約など、対外的な交渉がよりスムーズになることもあるかもしれません。

【メリット4】口座名義も法人となりお金の管理がシンプルに

法人化すれば理事長が交代しても口座名義を変更する必要が無い

管理組合は、管理費・修繕積立金を管理する預金口座を持っています。

その口座名義を理事長にしている場合、理事長が交代するたびに名義変更を行うなど、手続きが若干面倒です。しかし、法人名義で口座開設を行うことができれば、そうした手続きも省略できます。

管理組合の活動で発生した権利・義務の帰属先は、すべて法人。そのため、理事長の交代で名義変更を忘れてしまいがちな「電話の加入」や「銀行口座開設」も、法人名義で行うことができれば、一度の手続きで済みますよね。

【メリット5】理事長の負担が減る

前述のとおり、法人化していない管理組合では、理事長の名義で不動産を購入したり、滞納の請求をしたり、融資を受けます。法人化すればあらゆる手続きや権利行使が理事長1人にのしかかることがなくなるため、負担が軽減されるでしょう。

【メリット6】役員としての自覚で組織活動も活性化

法人化によって運営体制を確立することができれば、安定的で永続性のある組織運営が可能となるかもしれません。

また、法人役員としての自覚や責任感が増すことで、組織活動の活性化にもつながるでしょう。

法人化のデメリットは?

【デメリット1】法人登記に手間と費用がかかる

法人設立時や登記事項に変更が生じるたびに手続きを行う必要があり、手間と費用がかかる点はデメリット。例えば登記事項には代表権を持つ理事の指名・住所を記載する箇所があるので、変わるたびに変更手続きをしなければいけません。

こうした変更手続きを、司法書士などに依頼する場合、2〜3年ごとに数万円の出費がかかることも頭に入れておきましょう。

【デメリット2】思わぬ罰則規定も……

マンションに関する法律の1つ「区分所有法」では、管理組合法人のみに定められた罰則規定(第71条)が存在。内容としては、政令で定める登記や財産目録の作成、理事・監事に欠員が生じた際の選任手続きを怠った場合、20万円以下の過料(金銭罰)が科されます。

ちなみに財産目録とは、年度末時点でのすべての資産・負債の内訳明細のこと。貸借対照表に記載できない資産や負債の名称をより詳細に記したものです。

法人化するための手順

管理組合が法人化するには①「総会で4分の3以上の賛成を得る」②「期間内に法人登記を行う」の2つの条件を満たす必要があります。

以前は区分所有者の数が30人以上の管理組合にだけ法人化が認められていましたが、平成14年の法改正により人数要件が撤廃されました。

2つの条件を満たして法人化するための手順を詳しく見ていきましょう。

【手順1】総会で4分の3以上の賛成を得る

法人化を行うためには、総会にて区分所有者から一定数の賛成を得る必要があります。

どういう手順かと言うと、総会で法人化のメリット・デメリットや手続きの流れ、議決事項の説明を実施。そして、区分所有者および議決権の4分の3以上の賛成が必要となります。

なお、議決時には、以下の要件も定めておきましょう。

1.法人となる旨
2.名称(「○○管理組合法人」または「管理組合法人○○)
3.事務所

【手順2】役員と管理規約の見直し

法人化にあたって、理事や監事の選任も必要です。これまでの理事会役員を引き継ぐとしても、任期は法人設立時から再スタートとなります。任期の再スタートに不都合がある場合には、規約に法人化後最初の理事・監事の退任時期を定めておくと良いでしょう。

役員の決定、規約の変更はともに総会での決議が必要となる点も注意が必要です。

【手順3】総会で成立したら一定期間内に法人登記申請を行う

総会で法人化を行うことが決まったら、2週間以内に事務所所在地を管轄する法務局へ、登記申請の届出を行いましょう。

なお申請者の名義は管理組合法人そのものになりますが、申請手続き自体は法人の代表者(主に理事長)が行うことになります。

法人を解散できるパターンは2つ

【パターン1】すべての建物、専有部分が無くなるとき

建物自体、あるいは専有部分が無くなったとき、管理対象そのものが消失したことになります。したがって、管理組合を構成することはできません。また、組合員もいなくなってしまうため、法人も解散することが区分所有法で定められています。

【パターン2】総会の決議によって解散も可能

法人設立時と同様、総会での決議を経て法人を解散させることも可能です。

区分所有者の多数が法人化を望んでいない状況では、解散せざるを得ないでしょう。

もちろん解散後も、管理組合は依然として存在するため、引き続き理事会が中心となってマンションの管理は進めていくことになります。

法人税は原則課税されない

マンションの管理組合は法人化するしないにかかわらず、「人格のない社団等」とみなされるため、法人税法が適用されます。

しかし、いずれにしてもマンションの管理組合が通常の管理業務のみを行う場合には法人税が課されません。課税対象となるのは、「収益事業」を行っている場合です。

収益事業にあたるのは、区分所有者以外に駐車場を貸し付けている場合や、共用施設や備品を有料で貸し出している場合などが挙げられます。

区分所有者が利用する駐車場の使用料は、自己の使用にあたるため収益事業にはあたりません。

「理事長交代時の手続きの手間を減らす」なら法人化を検討!

管理組合の法人化はあくまで、組織運営上の問題を解決するための手段です。

「組合名義で不動産登記をしたい」「理事長交代時の手続きを省きたい」など、明確な目的がある場合に法人化を検討したいところ。

法人化にあたっては区分所有者および議決権の4分の3以上の賛成を得るため、設立理由や手続きの流れなどを説明できるよう、整理しておきましょう。

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