管理会社主導で大規模修繕って大丈夫? メリット・デメリットを解説
日常的なマンションの管理業務を行ってくれる管理会社。信頼関係が築けているのなら、大規模修繕も管理会社主導で行ってもいいと思う管理組合は多いかもしれません。
ところが、管理会社に任せっきりにすると工事費用が割高になったり、適正な工事が行われなかったりする場合も。
この記事では、管理会社主導で大規模修繕を行うメリット・デメリットを解説します。ポイントを押さえて、賢く大規模修繕を実施しましょう。
大規模修繕は必ずしも管理会社に依頼する必要はない
管理会社の主な仕事は日常におけるマンションの管理業務ですが、管理会社が管理組合に大規模修繕に関する見積もりを提出してくることがあります。特に施工部門がある管理会社なら、めずらしいケースではありません。
大規模修繕工事は管理委託契約の範囲外ですので、必ずしも管理会社に依頼する必要はありません。大規模修繕の内容を的確に判断できる管理組合なら問題ありませんが、なかには、「普段管理を任せている管理会社から提案された大規模修繕工事は、必ず実施しなければならない」と思い込んでしまう管理組合も少なくありません。
国土交通省が行った「平成30年度マンション総合調査」によると、大規模修繕工事の依頼先として「(管理委託契約をしている)管理会社」が28.3%と最も高い割合を占めています。
管理会社主導で大規模修繕を行うメリット
【1】管理組合の負担が大幅に軽減する
大規模修繕の準備は、1年くらいかかることが珍しくありません。
コンサルタントや施工業者を選定して建物劣化診断を行い、予算計画や修繕内容を検討するなど、管理組合が行わなければならない業務はたくさんあります。これらの業務にはある程度の専門的な知識が必要なため、負担も大きくなるでしょう。
管理会社に大規模修繕を任せれば、管理組合の負担を激減させるることが可能です。管理組合に専門的な知識がなくても、管理会社がフォローしてくれるので、修繕内容の検討も概ね円滑に進みます。
【2】信頼できる管理会社なら検討するのもあり
管理会社との信頼関係が築けているのなら、依頼を検討しても良いでしょう。
管理会社は日常の管理業務を担当しているため、どの部分を修繕しなければならないかを把握されているうえ、相談もしやすく、管理組合の負担を大幅に省くことができます。
また、大規模修繕工事を発注することによって、管理会社に利益が発生するので、日常のマンション管理業務にも良い効果が期待できるでしょう。
【3】工事後のトラブル対応がスムーズで安心
大規模修繕完了後、工事が適切に行われていなかった場合、トラブルとなるケースがあります。
この時、大規模修繕工事の依頼先が管理会社であれば、窓口が明確で一本化できるため、責任の行方が特定しやすくなるでしょう。
また、アフターメンテナンスを日ごろのマンション管理業務と併せて実施できるので、新規の修繕業者に依頼した場合よりも、やり取りや作業がスムーズです。
管理会社主導で大規模修繕を行うデメリット
【1】工事費用が割高になる場合がある
施工部門がある管理会社もありますが、多くの管理会社は実際の修繕工事を施工業者に依頼しています。この場合、施工業者から管理会社へ紹介料や手数料という名目でマージンが発生しているケースもあります。
また、管理組合への大規模修繕工事の提案が認可され、一任を受けた場合、管理会社からすれば、相見積もりを取って他の業者と比較される心配がないため、競争原理が働きません。そのため見積もられた工事費用が割高になっている可能性もあります。
必要以上に割高な工事費を防ぐには、外部のコンサルタントに見積もりを精査してもらうのも手です。
【2】工事費用が不透明になりやすい
管理会社は日常におけるマンションの管理業務を行っている関係上、管理組合の財務状況を把握しています。言い換えれば、管理組合が大規模修繕工事にいくらくらい払えるのか、予算の限度額を知っている場合があります。
そのため、管理会社は予算の限度額に合わせて、本来不要な工事まで含めた見積もりを出したり、工事費用を高めに設定して見積もりを提出したり、といったことも可能になります。
専門知識を持たない管理組合は、管理会社が割高に設定した見積もりをしていたとしてもそれに気付くことができず、そのまま発注してしまう恐れがあるのです。
【3】馴れ合い工事対策が必要
管理会社が元請けとなって大規模修繕を進める場合、工事は関連のある施工業者が行うことがめずらしくありません。このような場合、工事が馴れ合いのような雰囲気で進められてしまう可能性も考えられるでしょう。
そうなると、いい加減な工事をされても管理会社に厳格なチェックを期待するのは難しく、確認作業の精度低下につながることも考えられます。
対策としては、コンサルタント会社やマンション管理士、設計事務所などの外部の第三者にチェックをしてもらうといいでしょう。
相見積もりで大規模修繕の費用を抑える
管理会社のいいなりにならずに適正な価格で大規模修繕を行うには、複数の業者から見積もりを取るといいでしょう。相見積もりを取ることで、どこにどれだけの費用がかかっているのかを比べることができます。さらに、相見積もりを取っていることを各業者に伝えれば、適切な見積もりを出してもらいやすくもなるでしょう。
ただし、複数の業者から見積もりを取るとき、管理会社の見積もりが適正であるかを探るためではなく、良い見積もりを出した業者に発注することを各業者にしっかり伝えることが重要です。こうすることで適正な見積もりを出してもらえるようになり、ひいては大規模修繕の費用を抑えることにつながります。
大規模修繕は管理会社に任せっきりにしない
管理会社に大規模修繕を一任している管理組合が多いのが現状ですが、メリット・デメリットの両方が存在するため、注意点を踏まえたうえで依頼してください。まずは信頼関係が築けている管理会社かどうかを考え、管理組合の負担が大幅に減らせそうなら、検討してみるといいでしょう。
信頼できる管理会社だとしても、複数の業者から相見積もりを取ったり、見積もりをコンサルタント会社やマンション管理士、設計事務所などの外部の第三者にチェックしてもらったりするのがおすすめです。
適正な価格できちんと工事してもらうには、管理会社に任せっきりにしないことがカギとなります。