マンションの会計処理細則とは?記載例も紹介!
「マンションの会計処理細則って何なの?」「どうやって作成すればいいのかわからない…」
そんな方々のために、今回は会計処理細則の概要や作成方法、どのような項目を定めるべきかを解説します。
マンションの会計処理細則とは?
マンションの会計処理細則とは、管理組合が行う業務会計の方法・原則を定めた細則のことです。会計処理細則はマンション管理規約と同じく、管理組合それぞれが定めるべきものとされています。
なぜなら、マンション管理組合向けの会計基準について法令の規定がなく、会計処理細則がなければ組合内で統一した会計処理を行うことができないからです。
なお、多くのマンションでは会計処理に当たって、非営利団体に適用される公益法人会計基準を参考にしています。
したがって、会計処理細則では公益法人会計基準に則り、複式簿記・発生主義の原則に則った会計処理を行うことや、保管・記帳すべき会計資料などを定めていくべきとされています。
詳細な設定項目に関しては、公益財団法人マンション管理センターやマンション管理士が公開しているひな形を基本として、マンションの現状などを考慮したうえで必要に応じて付け加えていきましょう。
会計処理細則で設定しておきたい項目
会計処理細則で記載すべき項目はいくつもありますが、特に重要なものをまとめました。記載例も合わせて紹介するので、作成する際の参考にしてみてください。
会計処理の原則
収入および支出は予算に基づいて行われなければならないことや、会計帳簿を複式簿記で正しく記帳することなど、会計処理に当たって従うべき原則を定めるものです。
<例>
(会計の原則)
第○条 次に記載する原則に従って、会計帳簿や計算書類(収支予算書、収支計算書、貸借対照表、財産目録および剰余金増減計算書)を作成しなければならない。
①収入ならびに支出は、予算に基づいて行うこと。
②会計帳簿は、複式簿記の原則に従って正しく記帳すること。
③計算書類では、会計帳簿に基づいて収支ならびに財産の状況に関する正確な内容を明瞭に表示すること。
④会計は公益法人会計基準(昭和60年9月17日公益法人指導監督連絡会議決定)に準拠して処理すること。
会計種目
一般(管理費)会計や修繕積立金会計のほか、マンション設備に応じて駐車場会計、自転車置場会計、集会所会計などを定めていきましょう。
<例>
(会計種目)
第○条 組合の会計種目として、次のとおり設定する。
①一般(管理費)会計
②修繕積立金会計
③駐車場会計
④自転車置場会計
⑤集会所会計
⑥総会で定められた特別会計
会計業務処理責任者
理事の中から、会計に係る責任者「会計担当理事」を選ぶように定めます。
<例>
(会計担当理事の指定)
第○条 理事会は、理事の中から会計に係る責任者(以下「会計担当理事」) を指定しなければならない。
記帳・保管すべき会計帳簿・証票類の種類
会計帳簿として備えるべき、帳簿の種類を規定します。また、支出に関する会計証拠書類として、組合が定める承認書や請求書、領収書などを定めるものです。
<例>
(会計証拠書類)
第○条
支出の伴う会計証拠書類は、組合が定める請求書、領収書などとする。
(帳簿の種類)
第○条
組合は会計帳簿として、次のものを備えなければならない。
①総勘定元帳
②現金出納帳
③備品台帳
④有価証券台帳
⑤敷金預り台帳
銀行印・通帳の保管責任者
理事長は印鑑・副印や通帳など、会計に関わる貴重品管理の方法を定めます。
<例>
(預金通帳等の保管)
第○条
①普通預金及び定期預金は、組合名・会計名を冠して理事長名儀で約定すること。
②印鑑は理事長が保管し、副印ならびに通帳は会計担当理事が保管すること。
③理事長に事故または欠員がある場合は、副理事長が印鑑を保管すること。
④会計担当理事に事故などがある場合は、総務担当理事が副印ならびに通帳を保管すること。
⑤有価証券は組合名で約定し、その証券または証券預り証は銀行貸金庫に保管すること。
収入の受け入れ方法
収入を受け入れる際には、原則として預金口座への振り込みとするなど具体的な方法を定めます。
<例>
(現金等収入の受入)
第○条
収入については、預金口座への振り込みを原則とする。なお、現金などで受け入れたときは、領収書を発行し、その控えを保管したうえで、速やかに預金
口座に入金するものとする。
支出の方法
収入と同様、支出を行う場合の方法も定めます。原則として支出の記録が残る銀行振り込みが良いでしょう。
(支払等について)
第○条
支払いは原則として銀行口座への振り込みとする。振り込み以外で支払いを行う場合には、会計担当理事は理事長の承認を得るものとする。
会計担当者および理事会の支払決裁額
所定の金額までの支払いは会計担当理事が決済できるものとし、それ以上は理事会の決済が必要になることを規定するなど、支払金額に応じた決済区分を定めます。
<例>
(支払の決裁)
第○条
定期的な支払および1件10万円未満の支払は、会計担当理事が決裁することができるものとする。10万円を超える支出は、理事会の決議を得なければならない。
小口支払いの方法
組合運営に必要な小口支払いを円滑に行うため、一定額を前渡ししたり、支払いに際して仮払いができたりすることなどを定めるものです。具体的な限度額も定めておきましょう。
<例>
(小口現金)
第○条
日常経費に充てる小口現金は、原則として定額前渡制とし、5万円を限度として毎月末または払い出しのつど清算の上補給するものとする。
管理費などの滞納者に対する措置
管理費や修繕積立金などを滞納する区分所有者に対して、法的措置などができる規定を記します。
<例>
(管理費などの滞納者に対する措置)
第○条
管理費および修繕積立金ならびに各使用料などを所定の期日までに納付しない場合、理事長は理事会の決議により、管理組合を代表して訴訟その他の法的措置を追行することができるものとする。
資金運用
管理組合の管理費や修繕積立金は、資金を使わない期間があれば、運用などにより資金を増やすことも可能です。しかし住民から集めた大切なお金なので、安全性を最優先事項とするなど、適切な運用を行える細則を定めましょう。
<例>
(資金の運用)
第○条
管理組合の資金を運用する際は、安全を第一として、収益性にも考慮しなければならない。金融機関の利用や金融商品への預け入れにあたっては、総会の決議で承認を得たうえで、元本が保証されたものを利用するものとする。
会計処理細則を定めてトラブルをなくす
会計処理細則を定めて、公正・妥当な会計処理を行うことは極めて重要です。
なぜなら不正会計を防止したり、使途不明金が発生して総会で紛糾したりするなどのトラブルを防ぐことができるからです。
なお、細則の作成に当たって公開されているひな形を参考にする際には、必要に応じて項目を加えることを忘れないようにしましょう。