マンションで避難訓練を行う頻度は? 訓練の4つのポイントを解説
地震や火災、洪水など、災害の発生時に慌てず行動するためには、普段からの避難訓練が欠かせません。特に、多くの人が共同して暮らすマンションでは、居住者同士のスムーズな助け合いが必要不可欠といえます。
ここでは、マンションにおける避難訓練の考え方やポイントについて紹介します。
マンションにおける避難訓練の実態
マンションなどの共同住宅は年に1回以上の避難訓練(防災訓練)が消防法で義務づけられています。しかし、十分な避難訓練を実施できているマンションはそれほど多くないのが実態です。
その要因の一つが避難訓練の参加率の低さです。当然、常にすべての居住者が参加できるわけではありませんが、参加者が少なすぎると、訓練に前向きな人のモチベーションまで削いでしまいます。居住者の防災意識が低いと、防災マニュアルの内容もなかなか浸透しません。
居住者のモチベーションを維持しながら、いかに効果的な訓練を行うかが重要といえます。
防災訓練は年に1〜2回が理想
居住者の防災意識を高めるためには、定期的な避難訓練の実施が欠かせません。避難訓練を含めた防災訓練は、消防法が定めるとおり、年に1回の頻度で行うのが理想です。
なお、『複合用途防火対象物』に該当するマンションは、義務となる防災訓練の回数が年に2回以上となります。具体的には、住居以外にも飲食店や商業施設など不特定多数の人が出入りする施設が建物内にあり、2つ以上の用途が含まれるマンションが当てはまります。
マンション避難訓練のポイント
【ポイント1】避難所としての受け入れ機能を確認する
マンションの避難訓練では、はじめに避難所としての受け入れ機能の確認を。
マンションは戸建てやアパートなどと比べて耐震性に優れている傾向があるため、居住者は在宅避難が基本になります。一方、共用部分は家屋が倒壊してしまった人など、外部被災者や帰宅困難者に向けた避難所として解放する可能性もあります。
居住者や避難者同士でのトラブルを防ぐためにも「どれくらいの人数」を「どこに受け入れるのか」、手順やルールを事前に検討しておきたいところです。
【ポイント2】災害発生時の集合場所を決める
災害発生時の集合場所を決めておくのも重要なポイントです。
被災者の救助は1分1秒を争います。階やブロックごとなどに集合場所や避難経路を決めておけば、有事の際もスムーズに安否確認できます。
居住者に高齢者や乳幼児、妊婦、体が不自由な人などの要援護者がいる場合、緊急連絡先の記載された名簿を用意しておくと安心です。ただし、管理会社を通じた名簿の取得は個人情報保護の観点から難しいため、災害時でのみ使用する旨を伝えたうえで、各居住者に任意での提出をお願いしましょう。
【ポイント3】「地震」と「火災」の対応の違いを明確にする
地震と火災では、災害発生時の対応が異なります。居住者が自己判断で避難をしてしまうと、適切な行動が取れなくなる可能性も。普段の訓練からその目的や対応を明確にしましょう。
地震の場合、まずはその場で身を守ります。揺れがおさまったら、家族の無事や火元の確認。その後、ほかの居住者と協力して安否確認や救護、避難活動を実施します。
火災発生時は周囲への伝達が重要です。大声で知らせるほか、火災報知器があればすぐに起動し、落ち着いて119番通報をします。その後、可能なら初期消火を実施。もし炎が天井に達しているようなら消火は困難なため、速やかに避難します。
【ポイント4】それぞれのマンション設備に応じた訓練をする
防災機能や防災関連設備はマンションによって異なるため、それぞれに合わせた避難訓練の計画を立てる必要があります。
例えば、屋内消火栓や浸水を防ぐ止水板について、使い方や設置方法を共有しておけば、いざというときに被害を抑えられます。
また、近年は防犯の面から、避難階段への出入り口を施錠している場合も。スムーズに避難できるよう、訓練を通じて解錠方法を周知しておきましょう。
マンションの避難訓練を定着させるには
マンションの避難訓練を定着させるには、訓練自体を身近に感じてもらうことが大切といえます。
冒頭でも解説したとおり、マンションの避難訓練では参加率の低さが大きな課題。訓練に対する居住者のイメージを変えれば、参加へのモチベーションも高めていけるでしょう。
例えば、全居住者を対象とした訓練とは別に、防災活動を行うマンションの防災委員会が頻繁に訓練するのも方法の一つです。毎月テーマを変えて訓練することで、居住者に慣れてもらえるうえ、防災委員会の練度向上にもつながります。
また、訓練を「やってもらう」姿勢では、居住者の関心も薄れてしまいがち。「一丸となって防災意識を高める」発想で、楽しんで参加してもらえるような工夫も大切です。
参加者を増やすには普段からの活動が大切
マンションの避難訓練の頻度は年1〜2回が理想的といえます。
より多くの居住者に参加してもらうためにも、普段から防災委員会が積極的に防災活動に取り組んでいる姿を見せることが大切。また、いざというときに居住者同士がスムーズに協力し合えるよう、訓練では集合場所や災害時の対応、各設備の使い方などを確認するようにしましょう。