暮らしの悩み

玄関の鍵は防犯性能とコストで選ぶ! 全9タイプを徹底比較

2025.02.03
玄関の鍵は防犯性能とコストで選ぶ! 全9タイプを徹底比較

マンションの玄関ドアを開ける鍵は、ピッキングによる被害を防ぐために、さまざまな進化を遂げています。ただし、構造が複雑な錠前は、それだけ設置や交換の費用が高くなりがちです。

この記事では、主に国内の玄関ドアに使われている9タイプの錠前について、それぞれの防犯性能と導入コストを紹介していきます。

タイプによって解錠のメカニズムが違う

ノコギリ状の鍵が特徴の「ディスクシリンダー錠」

鍵の両面にギザギザがある

ディスクシリンダー錠は、「山の高さの違うノコギリのような形状」をした鍵が特徴です。ノコギリの山に当たる部分が、鍵穴のなかにあるタンブラーという部品を押し上げると、鍵を回して解錠できる状態になります。このタンブラーがディスクの形をしているので、ディスクシリンダー錠と呼び名がつきました。

価格が安価で、スペアキーの作成が簡単なため、以前は多くの住宅でディスクシリンダー錠が使われていました。しかし、構造が単純なせいで防犯性能が低く、1990年代に空き巣被害が相次いだために、現在新築物件ではほとんど使用されていません。さらに、スペアキーの作成が容易ということは、反面、複製されやすいというリスクもあります。

安価だが防犯性能が低い「ピンシリンダー錠」

ギザギザが片面だけ

ピンシリンダー錠は鍵の片側のみに山型の刻みが施された錠前です。鍵穴のなかでは刻みの位置に合わせてタンブラーからピンが突き出しており、鍵がピンを適切な高さまで押し上げると解錠可能となります。

ピンの数を増やしたり、不正解錠を防ぐアンチピッキングピンを採用したりすれば、ディスクシリンダー錠よりも防犯性能を高められます。ただし、ピンの数を増やすと鍵の形状が複雑になり、摩耗などに対する耐久性は下がります。

ピンを増やして防犯性を高めた「ディンプルシリンダー錠」

鍵の表面の窪みが特徴

鍵の表面および側面に高さが違う窪み(ディンプル)がいくつも刻まれた錠前を、ディンプルシリンダー錠と呼びます。ピンシリンダー錠と同様に、鍵穴のなかには窪みの位置に合わせてピンが配置され、これを押し上げると解錠が可能となります。

側面でしかピンを押し上げられないピンシリンダー錠とは違い、ディンプルシリンダー錠は表面や裏面でもピンを押し上げられるため、ピンの数を増やすことで防犯性能が向上しています。表面と裏面で同じ刻みを入れれば、向きを気にせずに鍵を刺して解錠が可能です。

なお、複製に専用の機械が必要なため、スペアキーの製作コストは、ディスクシリンダー錠などより高めです。

防犯性とコスパを両立した「ロータリーディスクタンブラー錠」

ディスクシリンダー錠を改良して、防犯性能を向上させたのがロータリーディスクタンブラー錠です。鍵がディスク状のタンブラーを押し上げる構造はディスクシリンダー錠と同じですが、鍵穴のなかにロッキングバーやサイドバーという構造を搭載。ピッキング用の道具をシリンダーに差し込むと、バーが固着して、鍵が回転しなくなります。

ディンプルキーは鍵を貫通しない程度の窪みしか作れないため、ディスクシリンダー錠などと比べると、山の高さに制限があります。ピッキングでは鍵の山の高さが低いほど道具が入れやすく、解錠が容易になるため、この点においてはディスク状のタンブラーのほうが有利です。

また、鍵の形状がディスクシリンダー錠などと似ているので、スペアキーを安価に作成できるのも、この錠前の特徴です。ただし、ロータリーディスクタンブラー錠のなかには、ディンプルシリンダー錠と同じ形状の鍵を使うものもあり、この場合はスペアキーの製作コストが高くなります。

欧州のこじ開け被害に対応した「ユーロプロファイル錠」

欧州の共通規格に合わせて作られている

ユーロプロファイル錠は、その名のとおりに欧州の共通規格(プロファイル)に合わせて製造された錠前です。鍵を2回転させると閂(かんぬき)の役割を果たすデッドボルトという部品がより長く突き出し、ドアをこじ開けようとする侵入者に対して高い耐久性を発揮します。

共通規格で製造されているため、同じユーロプロファイル錠であればメーカーを問わず、既存の錠前と交換可能です。

ピッキング耐性に優れた「マグネットタンブラー錠」

マグネットタンブラー錠は鍵を鍵穴に差し込むと、磁力によってタンブラーが動き、解錠が可能となる仕組みを持っています。鍵の形状はディンプルシリンダー錠に似ており、小さな窪みに磁石が埋め込まれているのが一般的です。

物理的な接触ではタンブラーが動かないため、ピッキング用の道具を使った解錠は不可能とされています。また、タンブラーとの物理的な接触がないため、摩耗などによる鍵の劣化が起きにくいのも利点といえるでしょう。

マグネットシリンダー錠のスペアキーを作るには、特殊なセンサーを鍵穴に差し込み、磁石の組み合わせを調べる必要があります。さらに、特殊な加工機械が必要なため、合鍵を作るコストは高めです。

車で良く使われている「ウェーブキーシリンダー」

鍵の表面の波形の溝が特徴

ウェーブキーシリンダーは主に車で利用されている錠前です。鍵の表面にディンプルシリンダー錠のような窪みではなく、波形の溝が掘られています。この溝に合わせてタンブラーが動くことで、解錠可能になる構造です。

ロータリーディスクタンブラー錠と同様に、サイドバーという構造が採用されているので、ピッキングに対する防犯性能が高いとされています。ただし、経年劣化などによる鍵の摩耗が、動作の不具合につながりやすい傾向があるため、解錠時に引っかかりなどを感じた場合は、早めにスペアキーと交換するといいでしょう。

鍵ではなくカードで開ける「カードキー」

カードキーはカードの複製が困難

カードキーはドア側のスリットにカードを挿し込むか、センサーにかざすと解錠します。このうち、挿し込むタイプは以前から使われており、カードに穴が空いているか、磁気テープを貼り付けられているのが一般的です。一方でかざすタイプのカードにはICチップが埋め込まれています。

カードキーはカードの複製が困難で、オートロックに対応した製品があるため、防犯性能が高いとされています。カードを紛失した場合には、そのカードではドアを解錠できないように設定を変更できるカードキーもあります。

なお、動作に電力が必要なカードキーは、電池切れや停電時に施錠・解錠できなくなります。ただ、多くの製品は非常用の鍵がついており、鍵穴に挿し込むことで解錠が可能です。また、オートロックは防犯上はメリットのある機能ですが、カードを持たずに外出したときの締め出しに注意が必要となります。

スマホやリモコンなどで解錠「スマートキー」

スマホで開閉が可能

スマートキー(電子錠)はカード以外にも、リモコンやスマートホン、指紋認証、顔認証などによる解錠が可能です。カードやリモコンといった物理的な鍵を使わないタイプであれば紛失のリスクがなく、カードキーと同様にオートロックに対応した製品があるため、防犯性能は高いとされています。

解錠にスマートホンを利用するスマートキーのなかには、外出先からの遠隔操作による解錠や、施錠・解錠記録の確認ができる製品もあります。

ドアに近づくだけで自動的に解錠するモデルもあり、荷物で手が塞がっているときなどに便利です。ただし、スマートキーが解錠範囲にいる間は施錠されないため、目を離した隙を空き巣などに狙われる恐れがあります。

全9タイプの中で防犯性能に優れた鍵は?

防犯性能とコストの高さは比例する

今回紹介した錠前のなかでも、ディンプルシリンダー錠やウェーブキーシリンダーは、防犯性能が高いとされています。オートロックを利用したい人は、カードキーやスマートキーも一つの選択肢となるでしょう。

ただし、これらの錠前は構造が複雑なので、導入費用が高くなる傾向にあります。さらに、ディンプルシリンダー錠やウェーブキーシリンダーは、鍵の作成費用が高く、加工に時間がかかるので、スペアキーの取り扱いに注意が必要です。

コスパで選ぶなら「ロータリーディスクタンブラー錠」

ディスクシリンダー錠やピンシリンダー錠、ロータリーディスクタンブラー錠は導入コストが安く、スペアキーの作成費用も安価です。このうち、ロータリーディスクタンブラー錠は防犯性能が高いため、多くの住宅で利用されています。

防犯性能とコストパフォーマンスのバランスで考えるなら、ロータリーディスクタンブラー錠が有力な選択肢となるでしょう。

マンションへの導入はスペアキー管理の手間も考慮

マンションの玄関ドアに設置できる錠前は、種類によって防犯性能や機能性、設置やスペアキー制作にかかるコストが異なります。錠前によっては特殊な装置が必要なため、業者によってはスペアキーを制作できない場合も。

カードキーは紛失時に再発行の手続きが必要な場合があります。錠前はスペアキーを管理する手間も考慮したうえで選ぶといいでしょう。

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