理事・管理

建物の耐久力を示す劣化対策等級! 等級の違いや、メリットを解説

2023.11.01
建物の耐久力を示す劣化対策等級! 等級の違いや、メリットを解説

ほとんどの区分所有者は、数十年にわたって住み続ける前提でマンションを購入しているでしょう。長期にわたって住み続けるマンションだからこそ、建物の耐久性は重要なポイントです。

この記事では、物件購入時に建物の耐久性の目安となる「劣化対策等級」について解説していきます。既にマンション区分所有者である人も、将来の新規入居者獲得に関連し得る制度なので、しっかり詳細をおさえておきましょう。

建物の耐久性の指標となる劣化対策等級

建物の劣化対策を示す指標

2000年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」は、安心して取引できる住宅市場の形成を目的として整備されました。

品確法で定められる制度のひとつに「住宅性能表示制度」があります。これは、物件の公正な取引を推進するべく、住宅の客観的評価や適正な表示に関する基準や手続きを定めた制度です。

「劣化対策等級」は、住宅性能表示制度で定められる建物に対する評価項目のひとつ。建物にどの程度劣化対策が施されているかを示す指標です。

建物の劣化に対する性能は、専門知識を持たない人が建物の外見だけで目安をつけるのは困難でしょう。そのため、知識不足を補う仕組みがなければ、住宅の買い手は性能のレベルがわからないまま購入を決めなければなりません。

そこで役立つのが劣化対策等級です。この制度では建物の性能を一定の基準で判断し、いずれかの等級に振り分けます。そのため、詳しい知識を持たない人でも、劣化対策がどの程度の水準にあるのか判断できるのです。

住宅性能は、メーカーごとに独自の基準を設けて表示されている場合もあります。しかし、そのメーカーだけが使用する基準であるため、別のメーカーとの比較が困難です。

劣化対策等級はメーカーに依らない共通の基準なので、異なる企業が建てた住宅であっても比較がしやすいというメリットもあります。

劣化対策等級の評価方法・判断基準

劣化対策等級は、1級、2級、3級の3段階に評価が分けられます。一般的な資格や検定などでは、3級よりも2級、2級よりも1級といったように、数字が小さい程価値が高くなるものが多いですが、劣化対策等級は数字が大きいほど高評価となるので間違えないように気をつけましょう。

各等級が示す劣化対策の目安は以下の通りです。

劣化対策等級の評価方法・判断基準

等級1は「建築基準法に定められている対策が取られていると保障する」といった内容で、3等級の中で最も低い水準です。

等級2と等級3は、建物の劣化が進行して限界を迎えるまでの期間がどれくらいあるかが目安となります。最高位の等級3ともなると、より長く安全に暮らせる建物となるので、安心して暮らしたいという気持ちが強い人であれば物件を選ぶ際に魅力を感じるポイントとなるのではないでしょうか。

住宅の評価をするのは、国交省に登録された第三者機関「登録住宅性能評価機関」です。評価結果は、住宅性能評価書という書面の交付で伝えられます。住宅性能評価書で評価の対象となるのは、「地震などに対する強さ」や「火災に対する安全性」などの全10項目です。

なお、一定の基準を満たさないと評価された場合や違法建築物に対しては、住宅性能評価書は交付されません。

住宅構造によって評価方法は異なる

劣化対策等級は、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造のどの構造かによって評価基準に違いがあります。

それぞれの基準の特徴を見ていきましょう。

木造

鉄筋コンクリート造

木造の建物は、木材の腐敗などを防ぐために水回りや湿度への対策が重要です。そのため、水漏れに対する防水措置や換気口の設置といった防湿措置が重要視されています。

等級3を獲得するためには「小屋裏に換気口が2つ以上設置されている」「外壁が通気構造で作られている」などの条件を満たさなければなりません。

さらに、木造住宅にとって深刻なシロアリへの対策も高評価を得るために求められます。外壁や土台に一定の防蟻処理が施されていなければ等級3は得られないでしょう。

近年ではSDGsに向けた社会の動きが活発化している影響で、木造マンションへの注目が高まりを見せています。2021年12月には、大手不動産会社などが共同で不動産検索サイトの表記ルールを改訂。これにより、これまで「木造アパート」と記載しなければならなかった物件が、一定の基準をクリアした場合に「木造マンション」と表記できるようになりました。

現状ではまだまだ珍しい存在ですが、今後は木造マンションが当たり前の存在になっていくかもしれません。

鉄骨造

鉄骨造は錆対策が重要

鉄骨造の劣化対策で特徴的なのは、錆に対する対策です。

鉄骨造は、鉄部に錆が発生すると建物の強度低下の原因となってしまいます。そのような事態を防ぐために、建物の軀体部分の鉄骨に塗装などを施して錆への対策をしなければなりません。

また、鉄骨造の住宅でも木造同様に換気や防湿の性能も高評価を得るために重要視されています。

鉄筋コンクリート造

鉄筋コンクリート造は、コンクリートの強度と厚みをチェック

鉄筋コンクリート造の劣化対策では、コンクリートの強度と厚みがポイントとされています。

コンクリートはセメントと水、砂、砂利を混ぜてつくる建築材料です。水とセメントの比率で、水分量が少ない方が強度が高くなるという性質があり、両者の割合は「水セメント比」と呼ばれ等級を審査する基準のひとつとなります。

水セメント比のほかに、鉄筋の周囲にあるコンクリートの厚さを意味する「かぶり厚」も重要です。強度が高く、かぶり厚が十分に確保されたコンクリートは、内側にある鉄筋が腐食する原因となる中性化が起こりづらくなるため、高い水準の劣化対策機能を持った建物だと判断されます。

劣化対策等級によって得られる3つのメリット

1.住宅ローンや地震保険が優遇される

劣化対策等級を得るメリットの1つは、特定の制度を利用する際のお金の優遇です。

住宅性能評価書が交付された建物は、住宅ローンや地震保険の支払いの一部が控除されます。

2.メンテナンス費用を削減できる

等級を獲得できるマンションは、それだけ劣化対策がしっかりとされた建物といえるのでメンテナンスにかかる費用を抑えられます。

劣化対策等級の認定を受けられないマンションは、建物に備わっている劣化対策の性能が低いと考えられます。そのような建物は、等級を得ているマンションと比べて、こまめに躯体のメンテナンスをしなければならなくなるので、その分高額なメンテナンス費用が必要となるでしょう。

3.物件のセールスポイントになる

多くの人は将来も長く居住するつもりで住戸を購入するので、劣化に対する建物の性能は気になる要素です。

劣化対策等級を受けているのであれば、それだけ性能が高い証となるので、マンション購入希望者へのアピールポイントになるでしょう。

当然ながら、等級が高いほどアピール力も高まっていきます。

取得費用が発生する点に要注意

今回は、住宅性能表示制度の評価項目のひとつ、劣化対策等級について解説しました。

劣化対策等級を得られるようなマンションは、メンテナンスにかかるコストの削減やマンション購入希望者からの需要アップなどさまざまなメリットを受けられます。

お住まいのマンションの性能に自信があるなら、等級の取得を管理組合で検討してみましょう。ただし、住宅性能評価書の申請には、10~20万円前後の費用がかかる点はあらかじめ覚えておいてください。

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