マンションの解体費用の相場はいくら? 費用を抑えるコツも伝授
マンションの築年数が経過し、老朽化していくと選択肢に上がるのが「解体」です。
しかし、解体には多額の費用がかかるうえ、建て替えの場合はさらに追加で建築費用も発生することから、大規模修繕と同じように事前の計画が重要です。
そこで今回は、マンションの解体費用がどう決まるかや、費用を抑える方法について解説します。
マンションの解体費用の相場
マンションの解体費用は構造や坪数、建っている場所によって異なります。費用の相場も一戸あたり200万円から1000万円と大きな開きがあります。
一般的に、マンションの構造でよく用いられる鉄筋コンクリート造(RC造)は、鉄骨造(S造)よりも解体費用が高くなる傾向です。また、高層マンションに多い鉄骨鉄筋コンクリート造では、坪あたりの解体費用はさらに高くなります。
また、マンションを建て替える場合は、解体費用のほかに新たなマンションの建築費用を用意しなければなりません。
マンションの解体費用は5つの要素で決まる
【要素1】マンションの構造
マンションの構造は、大きく分けて「重量鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」「鉄骨鉄筋コンクリート造」の3つに分類されます。
重量鉄骨造は、骨組みに厚み6mm以上の鋼材を利用する構造です。工期を短く、コストを安価に抑えられます。
鉄筋コンクリート造では、鉄筋の型枠にコンクリートを流し込んで固めます。鉄骨造よりも耐震性や耐火性に優れているほか、遮音性も高い点がメリットです。
鉄骨鉄筋コンクリート造は、鉄骨の柱の周囲に鉄筋を組み、コンクリートを打ち込んだ構造です。耐震性、耐火性、遮音性いずれも優れた性能を誇ります。
マンションの構造が強固であるほど解体の難易度や工期が上がりやすいです。そのため、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造は、重量鉄骨造に比べて費用が高くなる傾向にあります。
【要素2】マンションの規模
一般的に、マンションの解体費用は坪単価で算出されることが多いです。そのため、マンションの規模が大きくなるほど解体費用全体も高くなっていきます。
とくに、高層マンションの場合は、低層のマンションに比べて足場を組む費用も多くかかるため、全体の費用も高くなるケースが多いといえます。
【要素3】マンションの立地条件
解体費用はマンションの立地にも影響されます。
例えば、地方よりも都市部のほうが人件費が高いため、同じ構造や坪数でも都市部のほうが解体にかかる工事費用が高くなる可能性があります。
また、マンションが閑静な住宅街の中にある場合は、近隣住民への配慮が必要になり、防音や振動対策、場合によっては手作業での作業をしなければならないことも。とくに手作業での解体作業は、作業料金がかさむうえに工事が長期化し、その分費用が想定より高くなってしまう場合もあります。
【要素4】アスベストの有無
アスベスト(石綿)が使用されているマンションは、通常の解体の工程に加えてアスベストの除去が必要になります。アスベストは不燃性の素材であり、耐熱性や耐久性に優れているほか、安価であることからかつては建材として広く使用されていました。
そのため、吹き付け作業の規制が始まる1975年までに建てられた古いマンションの多くに耐火被覆材や屋根材、壁材、天井材として使われている可能性があります。また、全面使用禁止の処置となる2006年までのマンションにも一部で使われている可能性があります。
アスベストの除去作業には、飛散の危険性に合わせたレベルが1から3まで設定されています。レベル1が最も危険性が高く、その分除去作業の費用もかかります。
【要素5】解体時期
解体工事を実施する時期によっても、費用が異なります。
解体業者の繁忙期にあたると、人材や重機の確保がより難しくなり価格が高騰する傾向にあります。
また、マンションの建設ブームで建てられたマンションは、解体の時期も重なりやすいです。自分のマンションが解体を検討している際に、周囲のマンションも同じように解体を計画して、そのため需要が高まり価格が高騰する可能性もあります。
マンション解体費用の内訳
マンションの解体費用は、大きく分けて次の5つに分けられます。
1. 仮設工事費
工事現場に設置する仮設水道やトイレ、電気、周辺の仮囲いを建てるための費用。
2. 養生・足場費
足場の設置や養生シート、防音シートなどにかかる費用。業者によっては、仮設工事費が含まれます。
3. 解体費用
マンションの解体工事そのものの費用。労務費と記載されている場合もあります。
4. 廃棄物運搬・処理費
解体時に出た産業廃棄物を処分するための費用。
業者によっては、作業に必要な重機や設備の調達にかかる費用が別途記載されます。また、前述したように手作業やアスベストの除去が必要な場合は、別途料金がかかります。
さらに、地中埋設物が想定より多かった場合など、当初の見積額よりも費用がかかる可能性もあります。値上がりの可能性など、疑問点がある場合は見積を受け取った時点で確認しておきましょう。
分譲マンションの解体費用は区分所有者が負担
マンションの解体費用の負担先は、マンションの契約状況によって異なります。
分譲マンションの場合、原則として区分所有者が費用を負担します。解体費用を考慮せずにマンションを購入している区分所有者も多いため、総会で5分の4の賛成が得られず、建て替えや解体が進んでいないことも多いのが現状です。
なお賃貸の場合は、解体費用は所有者であるオーナーが負担します。ただし、居住者が支払っている管理費や維持費が解体費用として使用される可能性があります。
マンションの解体費用を抑える方法
【1】補助金の活用
マンションの解体や建て替えには多くの費用がかかりますが、国や地方自治体の補助金を活用できるかもしれません。代表的な補助金には「優良建築物等整備事業」と「都心共同住宅供給事業」があります。
「優良建築物等整備事業」の「マンション建替えタイプ」は、老朽化したマンションの再生を推進する国土交通省の事業です。敷地面積が1000㎡(三大都市圏は500㎡以上)、区分所有者10名以上のマンションが対象になります。補助される金額は3分の1で、長期優良住宅の整備を含む建て替えの場合は5分の2に引き上げられます。
「都心共同住宅供給事業」は、一定の要件を満たす良質な中高層共同住宅の建設を行なう事業について、国や地方公共団体がその事業費の一部を助成する制度です。対象は「東京構想2000」で「センター・コア・エリア」として定められた一部の地域のみですが、土地や共用部にかかる費用を一部助成してもらえます。
補助金や助成制度は、申請段階で既に総会で可決されている、具体的な建築計画があるなどの条件が課されている場合があります。また、建っている場所により要件が異なることもあるので、事前に自分のマンションが対象となっているか確認しましょう。
【2】固定資産税が課税されるタイミングを考慮する
土地の固定資産税は、毎年1月1日に決められます。1月1日時点で土地に建物が残っていると、住宅用地の特例が適用されるため、更地になっている時よりも税率が最大6分の1まで軽減されます。
そのため、1月1日時点で更地にならないようにすると良いでしょう。
【3】複数の業者に相見積する
解体費用についても、他のマンションの管理業務と同様に複数の業者から見積を取るようにしましょう。
業者によって得意とする構造が異なるほか、重機を自社で保有しているかなどの要因によっても費用は変動します。また、中には悪質な業者も存在するので、見積とあわせて評判などを調べておくことも重要です。
【4】閑散期に依頼する
解体業者のうち、公共事業を請け負っている業者は、年度末の2〜3月が繁忙期となります。また、年度末には決算もあるため、人材確保が難しくなり、費用が上がりやすくなります。
秋口から冬にかけても、年内に解体工事を終わらせたいという需要が一定数あり、価格が徐々に上がっていく傾向にあります。
さらに、梅雨や台風のシーズンでは、大雨や暴風などの影響で費用が嵩むケースもあるので要注意です。
【5】老朽化する前に売却する
どうしてもマンションの解体費用の負担を避けたいという場合は、マンションの老朽化が進む前に売却する、というのも一つの手です。
マンションは、築年数が経過し老朽化が進むほど買い手が見つかりづらくなります。売却するという方針があるのであれば、できるだけ早く検討を進めるようにしましょう。
業者の見積をとり、区分所有者の同意を得よう
マンションの解体費用は、構造や規模、立地、依頼する業者によって異なります。また、建て替えを行う場合は、追加で建築費用がかかるため、全体の費用が上がります。
活用できる補助金を調べたり、工事の時期を調整するなどで、少しでも費用を抑え、負担を減らしおきたいですね。