修繕積立金、管理費の滞納が起きたら? 4つの対処方法を解説!
マンションの区分所有者は、大規模修繕の費用となる修繕積立金と共用部分の維持管理のための管理費を月々支払わなければなりません。しかし、なかにはこの義務に応じず、滞納を繰り返す人もいるようです。
滞納する区分所有者がいると、マンション全体に対してマイナスの影響を及ぼすため、管理組合はしっかりと滞納者へ対応していかなければなりません。
この記事では、修繕積立金や管理費の滞納があった際に、マンション管理組合がとるべき対応について解説していきます。
滞納トラブルを抱えるマンションは全体の約1/4
国土交通省が実施した「平成30年度マンション総合調査」では、調査を実施したマンション全体の24.8%に3ヵ月以上の管理費や修繕積立金の滞納が発生しているという結果が出ています。つまり、管理組合が4つあれば、そのうち1つは滞納者を抱えているという割合です。
この調査結果では、築年数の古いマンションほど滞納が発生する割合が高くなっているという傾向がみられます。
今までそのような事例が発生していなかったマンションでも、いずれは管理費などを滞納する人が出てくる可能性があるため注意が必要です。
マンション管理費の滞納に至る理由
管理費や修繕積立金の滞納がこれ程多く起きてしまうのはなぜでしょうか? それには、さまざまな要因が考えられます。
最も多く考えられるのは、区分所有者の経済状況の変化です。
マンションの区分所有者は、毎月所定の管理費や修繕積立金を支払わなければなりません。購入当初は経済状態が安定していても、転職や病気などの理由で経済状況が大きく変わり、支払いが困難になってしまう人もいるでしょう。近年では新型コロナウイルスの大流行によって、仕事ができなくなり、収入に影響を受けた人もいたでしょう。
ほかにも、経済が長期的に低迷しているため、計画した通りに収入が増加せず、支払い不能に陥るパターンもあります。
また、国内の平均寿命が延びている影響で、老後資金の不足が起こりやすくなっている点も滞納の原因と考えられています。
マンション管理費の滞納があったときの対処方法
滞納をする区分所有者がいた場合、管理組合はどうすればよいのでしょうか?
ここからは滞納が起きた際の対処方法を解説していきます。
1. 口頭・電話・書面での催告
滞納の発生からそれほど時間が経過していないのであれば、対面や電話で本人に直接催告をしましょう。滞納している本人と生活時間帯が合わないのであれば、書面で催告をする方法もあります。
発生してすぐのタイミングであれば、滞納額はまだそこまで高額ではないので、本人が支払いに応じる可能性は十分あるといえるでしょう。
また、支払い手続きのミスや単に忘れていただけといった理由で未納となっていた可能性も考えられます。その場合は本人に伝えればすぐに支払いに応じて貰えるでしょう。
2. 内容証明郵便で通知
口頭や書面で催促をしても本人が支払いに応じない場合は、管理組合や理事長の名義で内容証明郵便を送りましょう。
内容証明郵便とは、送り主の請求の内容を郵便局が公的に証明してくれる制度です。請求の証明ができるという点は、後々訴訟にまで発展した場合に有力な証拠となるため、受け取った相手に心理的プレッシャーを感じて支払いに応じる効果に期待できます。
また、管理費、修繕積立金は滞納に対して5年間請求がないと、法律上、権利を行使せずに放置したと判断され権利が消滅する「消滅時効」の援用が可能となりますが、その対策にも内容証明郵便が効果的。
内容証明郵便で催告をしておけば、支払い請求があった事実が残るため、時効成立の期間を引き延ばせます。
3. 支払催促をする
内容証明郵便を送っても支払いがされない場合は、裁判所を通して支払督促をしましょう。
「支払催促」とは、訴訟の前段階ともいえる方法で家賃や賃金などの支払いがされない場合に、申立人の申立てにもとづいて、簡易裁判所の書記官が相手方に支払いを命じる手続きです。
この制度は書類だけの手続きで済むため、裁判所に出廷せずとも行えます。また、必要な費用が訴訟を起こす場合の半分程度であるため、コスト面でのメリットもある方法です。
滞納している本人が、支払督促を受領して2週間以内に異議の申し立てをしない場合、申立人は仮執行の申し立てができます。仮執行の申し立てに対しても異議が出されなければ、滞納者の財産の差押えが可能です。
支払督促受領後から2週間以内に滞納者から異議の申し立てがあった場合は、裁判に移行します。
4. 訴訟を起こす
あの手この手を尽くしても相手方が支払う姿勢を見せない場合は、訴訟を検討しましょう。
管理費、修繕積立金の滞納についての訴訟では、管理組合は原告となって提起ができます。
裁判は請求額が140万円以下であれば簡易裁判所、それ以上であれば地方裁判所の管轄です。
滞納額が60万円以下の場合は、審理が基本的に1回で終了し、判決が当日中に言い渡される「少額訴訟」が行えます。
マンション管理費を滞納される3つのデメリット
最後に、管理費や修繕積立金の滞納があると、管理組合にどのようなデメリットがあるかをみてみましょう。
1. 修繕計画に悪影響を及ぼす
修繕積立金に長期的な滞納が発生したり、複数の住戸で滞納されたりすると、本来長期修繕計画で予定していた資金を集められなくなります。そうなれば、資金不足によって予定していた作業を実施できなくなってしまうでしょう。
必要な作業ができなくなってしまうと建物の資材や設備の劣化を放置せざるを得なくなり、マンションの安全性や外観の綺麗さが損なわれ、マンション全体に不利益を及ぼします。
2. 管理業務の質が低下する
管理費は日々の共用部分の清掃やメンテナンスを管理会社に委託するための資金です。
管理費が不足してしまうと、管理会社が対応してくれるサービスの範囲が狭まるため、管理が十分に行き届かなくなってしまいます。
エントランスなどの共用部分にゴミが散らかっているようなマンションは、住民にとって住み心地が悪く感じられるでしょう。
また、一目見ただけで管理状態が劣悪だとみなされるマンションは、それだけで資産価値の低下につながる可能性があるので注意が必要です。
3. 人間関係が悪化する
滞納する区分所有者がいると、同じマンションに住むほかの区分所有者は不公平に感じるでしょう。
「〇〇号室の△△さんは、管理費と修繕積立金を半年も支払っていない」
このような話が広まれば、住民間で人間関係が悪化してしまう可能性が大いにあります。
また、他の住民が「自分も払わなくてもいいのではないか」と考え、滞納者が増えていってしまうかもしれません。
滞納問題がなかなか解消しない場合は、管理組合の対応について疑問が生じて、管理組合に対する不信感を持たれる原因になり得るため注意が必要です。
4. 滞納者を理由に購入希望者に敬遠される
上記のようなデメリットがあるため、マンションの購入希望者の中には、滞納者の数をチェックする人もいるようです。そのような人は、他の条件が希望とマッチしていたとしても、滞納者が多ければ購入を避けるでしょう。
このような理由からも、滞納によってマンションが売りづらくなるというデメリットがあるといえます。
滞納が起きたら速やかに対応しよう
上述のマンション総合調査の結果にあるように、滞修繕積立金や管理費を滞納されるケースは多く、管理組合にとって身近な問題です。
滞納はマンション全体にさまざまな悪影響を及ぼす可能性を持つため、十分に注意しましょう。
滞納が長期化すると、金額がどんどん高額になっていくため、早期の解決が重要です。
もしも滞納が発生した場合は、管理会社を通じてなるべく早く対処するようにしましょう。