欠陥マンションを見定める注目ポイント5選!話題になった実例も
外観にひび割れなどが目立つ、雨漏りがする、建物が傾いているなど……。購入したマンションに欠陥があると、資産価値が低下するうえ、将来的に快適に住み続けられるか不安です。
購入した後で後悔しないためにも、ここでは欠陥を見つけるための5つの注目ポイントを紹介したいと思います。
マンションの欠陥を見抜く5つの注目ポイント
【ポイント1】ひび割れを発見!大事なのはその原因
マンションの欠陥を見極めるポイントのうち、比較的に目視で確認しやすいのがコンクリートのひび割れです。
コンクリートがひび割れする原因には、「構造の一部に負荷がかかる造りになっていた」といった設計上の問題、「地盤沈下によって建物が傾いた」といった環境による影響、「コンクリートの品質や施工に問題があった」といった工事上の不備など、いくつかの原因が考えられます。
地震や経年劣化によっても発生するので、「ひび割れの原因は何か?」を見極めたうえで、欠陥の有無を確認すると良いでしょう。
なお、ひび割れから水が浸入すると、内部の鉄筋が錆びて膨張し、建物のさらなる劣化を招く恐れがあります。
【ポイント2】タイルの浮きは経年劣化だけが原因ではない
外壁タイルが浮いていると、剥がれたタイルが通行人の上に落下する恐れがあります。
タイルが剥離する原因の1つが、気温の変化などによるタイルやモルタルの伸縮です。このため、目地の部分に伸縮性のあるシーリング材が用いられますが、施工不良や経年劣化によって破損したり、内部に水が浸透すると、タイル剥がれの原因になります。
また、近年では柱と壁の間に「構造スリット」と呼ばれる隙間を造り、震災時に柱にかかる負荷を軽減している建物があります。スリット部分にはタイルを接着できないため、浮きの原因になるようです。
なお、タイルの目地から白い染みが広がっている場合、モルタルが溶け出している可能性があります。
【ポイント3】屋上だけでなくベランダからの浸水にも注意
常に風雨にさらされている屋上やベランダなどは、雨漏りが起こりやすい場所です。
最上階の住戸では天井や壁に染みがあったり、カビが生えていないかを確認。さらに、道路斜線制限によって建物上部が傾斜状にカットされているマンションでも、雨漏りを警戒しましょう。このような建物では、ベランダからの浸水で、真下にある住戸に雨漏りが起きる可能性があります。
雨漏りの原因には、経年劣化だけでなく、外壁や防水シート、シーリングなどの施工不良が考えられます。目に見える形で水が垂れていなくても、壁のなかに水が染みていたり、湿気がこもる恐れがあるので注意しましょう。
【ポイント4】「1メートルあたり6mmの傾斜」は赤信号
マンションは水平時を想定した強度設計となっているため、建物が傾くと、柱などの構造に負荷がかかる恐れがあります。
国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律」では、構造耐力上主要な部分に瑕疵が存在する可能性について、勾配が1メートルあたり3mm以上あると「一定程度」、1メートルあたり6mm以上あると「高い」としています。
マンションの傾斜を確認するには、水平器で角度を測る、ビー玉を転がしてみるといった方法が一般的です。また、マンションによっては「他の棟へと繋がる手すりがずれた」せいで、傾きが発覚したケースもあります。
【ポイント5】ガイドラインを参考に修繕計画を確認
国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」では、5年ごとに修繕計画の見直しを行ったうえで、12年に1回程度の大規模修繕工事が推奨されています。
修繕計画がガイドラインに沿っていない、経年劣化に合わせた修繕工事が行われていないなど……。マンションの管理に不安があると、建物の品質が長期に渡って担保されるか疑問が残ります。
さらに、修繕積立金の積立や運用についても注目です。これについては、「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」が参考になります。
大きな話題になった「欠陥マンション3選」
全266件におよぶ杭工事のデータ改ざん事件
横浜市にあるマンション「パークシティLaLa横浜」では、2015年に全4棟ある建物のうちの1棟で、「最大2.4cmの傾斜」が明らかになりました。原因は建物を支えるのに十分な強度のある地層(支持層)を測定する際に、他の杭で行った計測値を流用したためです。
「建物を支える杭が支持層に到達していなかった」ことも発覚したため、大きな問題になりました。
旭化成建材が同年に行った記者会見では、「過去10年に行った杭工事のうち、266件でデータの改ざん」があったと公表されています。
引き渡し直後に発覚!「配管を通す穴がない」
三菱地所が事業主となって建設した「ザ・パークハウスグラン南青山高樹町」では、建物の引き渡し間際の2014年に、「配管や配線を通す貫通孔(スリーブ)が設計図通りに設置されていなかった」ことが発覚しました。
結局、この現場では鉄筋を傷つけずに貫通孔を開けられなかったため、解体後に同じ設計での建て替えを目指しました。もしも、鉄筋を傷つけたまま販売していたら、建築基準法上の構造強度を下回る恐れがあるため、「法的処分の恐れもあった」と言われています。
雨のたびに鳴る火災報知器、さらに耐震性にも疑念が
滋賀県大津市で2009年に完成した「大津京ステーションプレイス」では、入居して間もなく最上階で雨漏りが発生。雨のたびに火災報知器の誤作動やエレベーターの停止を招き、さらには建物の耐震性についても疑問の声があがりました。
この時、施主である大覚社が請負代金を支払わなかったため、施工を請け負った南海辰村建設は同社に対して訴訟を起こしています。
欠陥マンションで被害にあったらどうする?
建て付けの悪さは欠陥マンションの証かも?
「大津京ステーションプレイス」では雨漏りなど目に見える形で欠陥が発覚しましたが、一方ですぐに症状が現れないケースもあります。
例えば、建物の傾斜は年単位で緩やかに進むケースが多く、「扉の枠がゆがんで閉まりにくくなった」といった変化で、初めて欠陥に気づくようです。
欠陥が発覚した場合の賠償は「契約不適合責任」でわかる
購入したマンションに欠陥や不具合があった場合、売主は「契約不適合責任」に従って補修などの責任を負います。
民法の契約不適合責任では、売買契約における対象が契約内容に適合しない場合、売主は補修や代替物の引き渡しなどの責任を負います。
マンション売買では契約不適合責任について、一般に不動産売買契約書に記載されているようです。ただし、責任の範囲は特例によって制限できます。
契約不適合責任が明確に定められていない場合、欠陥があっても売主が誠意ある対応をしてくれない恐れがあります。購入時には契約書の内容を確認しておくとよいでしょう。
快適なマイホームを手にするために必要なこと
マンションの欠陥は物件によってさまざまで、原因が1つとは限りません。物件を購入する際には、過去にあった事例も参考にしつつ、いろいろな視点から欠陥の有無を判断する必要があるでしょう。
欠陥が発覚したマンションでは、物件の価値が損なわれるため、将来の資産形成に大きな影響を及ぼします。快適に住み続けるためにも、本稿で紹介した5つのポイントをチェックし、さらに契約書や長期修繕計画にもしっかり目を通しておきたいところです。