マンションの管理費や修繕積立金、個人事業主なら経費にできる?
賃貸用や事務所用にマンションを区分所有している個人事業主にとって、管理費や修繕積立金が経費になるのかどうかは気になるポイントです。経費計上できる費用はなるべく増やして、税負担を抑えていきたいところですよね。
そこで、この記事では管理費や修繕積立金の会計上の扱いについて解説します。
マンションの「管理費」は経費にできる
共用部分の管理などに使用する「管理費」は、経費にできます。
個人事業主が賃貸経営などの事業目的でマンションを所有する場合、毎月支払いの義務がある管理費は事業継続に必要な費用といえるので、経費計上できるのです。
ただし、マンションを自宅兼事務所として所有する場合は、全額を経費として扱えません。管理費のうち、事業目的で使用している割合で按分した額のみが経費とみなされます。
これは、次に説明する修繕積立金でも同様です。
「修繕積立金」も経費計上できる場合あり
5〜20年ごとに行う大規模修繕や、災害による破損の修理などに備えて毎月積み立てる「修繕積立金」は、経費にできる場合とできない場合があります。
修繕積立金は管理費同様、事業に必要な支出とみなすことができます。しかし、ここで気をつけなければいけない点が一つ。
国税庁の通達によれば、当該年度の経費に算入できるのは「その年において債務の確定している」支払いとなっています。
そのため、その年に行われた修理の代金はその年の経費にできますが、将来の修繕に備える修繕積立金は、修繕が実際に行われる年まで原則経費計上できないのです。
ただし、修繕積立金は支払いが義務。さらに、管理組合が解散しない限り区分所有者への返還もないことが一般的です。このような事情を踏まえ、例外的に支払い時点での経費計上が認められるケースもあります。
個人事業主が修繕積立金を経費計上するために満たすべき要件
修繕積立金が支払い年度の経費にできるのはどんな場合なのでしょうか?
国税庁は、次の事実関係のもとで行われた積み立てが対象になると回答しています。
(1)区分所有者となった者は、管理組合に対して修繕積立金の支払い義務を負うことになること
(2)管理組合は、支払いを受けた修繕積立金について、区分所有者への返還義務を有しないこと
(3)修繕積立金は、将来の修繕等のためにのみ使用され、他へ流用されるものでないこと
(4)修繕積立金の額は、長期修繕計画に基づき各区分所有者の共有持分に応じて、合理的な方法により算出されていること
簡単に説明すると、専有部分の床面積などに応じた金額を区分所有者が支払う必要があり、なおかつ管理組合には返還の義務がない、使用用途が修繕に限られる積立金が該当します。
なお、上記はマンション標準管理規約に沿った適正な管理規約に従うもので、多くのマンションは条件を満たしているといえます。
原則として支払い年度の経費計上は認められていないものの、基本的には「修繕積立金は積立年度に経費計上できる」と解釈して問題ないでしょう。
管理費と修繕積立金は消費税「対象外」
経費処理を行ううえで気をつけたいのが、消費税の取り扱いです。
現状ではマンション管理組合と区分所有者との取引は事業の対価として認められていないため、管理費や修繕積立金などは消費税の課税対象外となります。
なお、区分所有者に対する駐車場の貸し付けも同様です。これらの支払いを帳簿に記入する際は税区分に注意しましょう。
管理費や修繕積立金は消費税に気をつけて経費に
個人事業主が事業目的でマンションを所有する場合、管理組合に支払う管理費や修繕積立金は経費として計上することができます。
ただし、消費税の課税対象外となる点に注意したうえで、会計処理を行っていきましょう。