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瑕疵担保責任の期間は1年と10年のどっち?隠れた瑕疵の種類も解説

2022.10.24
瑕疵担保責任の期間は1年と10年のどっち?隠れた瑕疵の種類も解説

普段はあまり目にすることがない「瑕疵担保責任」という言葉。民法改正により2020年4月以降は「契約不適合責任」という言葉に変わり、権利の内容や期間についても変更がありました。今回は瑕疵担保責任と契約不適合責任の期間の違いや、隠れた瑕疵の種類について具体的に解説します。

瑕疵担保責任とは?

隠れた不備は売主側の責任

瑕疵担保責任とは、不動産などに隠れた瑕疵があったときに売主が負う責任のことです。

瑕疵(かし)とは「本来あるべき品質や機能が備わっていない」状態を指します。不動産の場合は、構造部分の欠陥や雨漏り、シロアリ被害などが代表的です。

例えばマンションを購入して、入居後に雨漏りが発覚すると生活に支障をきたしてしまうでしょう。住宅として本来あるべき品質が備わっているとはいえないため、売主に対して修繕・損害賠償・契約解除などを求められる可能性があります。

民法では「契約不適合責任」に名称が変更

2020年4月に改正民法が施行され、「瑕疵担保責任」に代わって登場したのが「契約不適合責任」です。それぞれ次のように適用対象が異なります。

瑕疵担保責任:隠れた瑕疵
契約不適合責任:契約の内容に適合しないもの

隠れた瑕疵とは、不動産購入時に注意していても見つけられなかった欠陥や不具合を指します。例えば、購入前から天井に大きな雨漏りのシミがあるのを買主が気づいていた場合は、瑕疵担保責任は問えません。しかし、購入前にその瑕疵が隠れていたか否か、そして買主が知っていたか否かは、なかなか判断するのが難しいものです。

そこで契約不適合責任では、瑕疵が隠れていたかどうかは関係なく「契約内容に合っていたか」が大きなポイントになっています。売主と買主の双方にとって、わかりやすい概念になったといえるでしょう。

新築住宅には品確法の「瑕疵担保責任」が適用

改正民法で瑕疵という言葉は使われなくなりましたが、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」の第七章には今でも「瑕疵担保責任」という言葉が残されています。

品確法によって新築住宅に義務付けられているのが「引き渡してから10年間の瑕疵担保責任」です。対象となるのは、次の2点に限定されています。

1. 構造耐力上主要な部分:基礎・杭・柱・筋交いなど
2. 雨水の侵入を防止する部分:屋根・外壁など

なお中古住宅は品確法の対象外となるので、民法における契約不適合責任のみが生じます。

瑕疵担保責任の期間は1年と10年のどっち?

瑕疵担保責任や契約不適合責任に基づく権利を行使できる期間には、次のような制限があります。

品確法に基づく瑕疵担保責任

品確法に基づく新築住宅の瑕疵担保責任は、原則として「引き渡しから10年間」です。10年を過ぎてから瑕疵が発見されたとしても、損害賠償などを請求することはできません。

なお売主と買主の合意によって、20年以内に延長する特約を付けることもできます。

詳細は住宅の品質確保の促進等に関する法律の「第九十五条:新築住宅の売主の瑕疵担保責任」と「第九十七条:瑕疵担保責任の期間の伸長等」を参照下さい。

民法に基づく契約不適合責任

改正民法に基づく契約不適合責任は、「買主が不適合を知ってから1年以内に売主に通知」をしなければ買主の権利は失効してしまいます。(民法566条)

また契約不適合責任にも「消滅時効」の規定が適用され、次の2つのタイミングで権利が消滅すると考えられます。(民法166条)

1. 権利を行使できると知った時から5年間行使しないとき
2. 権利を行使できる時から10年間行使しないとき

なお「知ってから5年」と「引き渡しから10年」のルールは、いずれか早い方が優先されます。例えば、引き渡しから7年後に売主が契約不適合を知ったとすると、そこから1年以内に通知、3年以内に権利行使をしなければなりません。

マンションの隠れた瑕疵

隠れた瑕疵は、雨漏りのような物理的な欠陥だけでなく、次のようにさまざまな状況があります。

物理的瑕疵

シロアリ被害などは物理的瑕疵

物理的瑕疵には、下記のような事例が代表的です。通常使用による劣化については、物理的な瑕疵とはいえません。

【建物】
・雨漏りやひび割れ、明らかな傾き
・耐震強度が基準を満たしていない
・木材の腐食やシロアリ被害を受けている
・アスベストが使用されている
・水道管が詰まったり傷んだりしている

【土地】
・地盤沈下、軟弱地盤
・化学物質等による土壌汚染
・危険物や産業廃棄物等の埋蔵

心理的瑕疵

人の死に関わる心理的瑕疵について2021年にガイドラインが制定された

瑕疵のなかでも最も判断が難しいとされているのが、次のような心理的瑕疵です。

・過去に近隣で殺人事件や大きな事故があった
・過去に物件内で死亡事故や孤独死、自殺があった

なぜ心理的瑕疵の判断が難しいかというと、同じ事象でも買主によって気になる方と気にならない方がいるからです。以前は不動産会社によって「どこまで告知するか?」という基準が異なっていたため、トラブルも少なからず発生していました。

そこで2021年に国土交通省から発表されたのが「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」です。こちらのガイドラインで告知義務の範囲について一般的な指針が示されているため、参考にされるとよいでしょう。

法律的瑕疵

法律的瑕疵とは、法律や条例などの制限によって、不動産の利用目的を果たせない問題のこと。例えば次のようなケースが該当します。

・接道義務を満たしていない
・容積率や建蔽率を違反している
・構造上の安全基準を満たしていない
・設置義務のある防災設備を設置していない
・原則開発が認められない市街化調整区域内に存在している

新築住宅では違法建築にあたるため、法律的瑕疵物件というのはほとんど存在しません。しかし中古物件では、建築当時は法律を守っていたのに、法改正によって現行の規定に不適合になってしまったケースが少なくありません。

環境的瑕疵

環境的瑕疵とは建物自体ではなく、周囲の環境に問題があることです。次のようなケースが考えられます。

・近隣建物からの騒音や振動、異臭、日照や眺望障害がある
・近くにゴミ焼却場や廃棄物処理施設、騒音を出す遊戯施設などがある
・近くに反社会的組織事務所があったり、組員が居住しており迷惑行為が認められる

近隣の騒音などについては売主が理解していることも多いでしょう。また将来的に高層建築物が建築される具体的予定があって、将来的に日照や眺望障害が起きる可能性がある場合なども、説明義務が課される可能性があります。

隠れた欠陥があれば売主の責任となる

瑕疵担保責任とは、マンションなどに隠れた欠陥があった場合に売主が責任を負うこと。現在は民法の改正によって「契約不適合責任」と名称変更されています。

売主に修補や損害賠償などを請求できる期間は、物件の引渡しから10年間。また不適合を知ってから1年以内に売主側に通知、5年以内に請求をしなければなりません。

マンションを売買する際には、住宅診断で物件に問題がないか前もって調べておくと安心です。その結果を契約書などに詳しく記載しておくと、後から大きなトラブルに発展することも少なくなるでしょう。

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