自治会の解散が増加中?その理由は? 背景と問題点を解説
地域住民の親睦や防犯・防災の場として機能してきた自治会。しかし、現在は解散したり、一部では不要論が持ち上がったりすることもあるといいます。
なぜ、こういった自治会を見直す動きが増えているのか。背景はもちろん、あわせて自治会を解散する手順なども紹介していきます。
SNSの普及や高齢化で自治会の加入率は低下している
最近ではSNSの普及もあって、仕事以外での人とのつながりは、地域よりも趣味や世代といった方も多いのではないでしょうか。
こういった理由もあり、特に都心部を中心に加入率の低下が強く見られるといいます。東京都が実施した調査においても、自治会加入率の推移は年々右肩下がりという結果も出ているようです。東京23区内では、加入が10世帯を下回ったことで、実際に解散してしまった自治体も存在します。
また地方においても、地域住民の高齢化が原因で解散するケースもあるそう。例えば甲府市にある桜北自治会は、甲府城周辺整備計画によって18軒が街からの移転を余儀なくされ、残された住宅31軒の半数以上が高齢者世帯ということでやむをえず解散。自治会役員のなり手がいないことや、開催するイベントの参加者が減ってしまったことが原因だったといいます。
このようにSNSの普及によって人とつながる手段が新たに誕生したことや、地域住民の高齢化などを背景に自治会の加入者は減っているという現状があるわけです。
自治会不要論が飛び交う背景
自治会の活動に対しては「親睦会や旅行は役員が私的に楽しんでいるだけだからいらない」「道路のゴミ拾いは行政がやればいい」「回覧板が面倒」などという意見もあり、「自治会は不要」と考える人も多いといいます。
では、なぜこういった不要論が飛び交うのか。以降で背景を改めて整理してみました。
【背景1】お金の使い道が不透明
自治会費の収支が不明瞭で、誰かが使い込んでも分からないという問題があるようです。会費がどういった使われ方をしているか明らかでない場合、一部役員の私的な飲み会や食事に使われている事例もなかにはあり、そのほかの会員が会計状況を知らないケースも珍しくないといいます。
例えば静岡市では役員が約600万円を横領した事例もあり、このとき住民は会計資料の開示を求めていたといいますが、役員はこれを拒んでいました。会計が不透明であったりオープンにされなかったりする場合は、住民の不満が募る可能性もあります。健全な自治会運営のためにも、やはりお金の管理は大切だと言えそうです。
【背景2】行政の下請けで業務過多に陥ることも
職員不足や厳しい財政により、行政が担う業務の一部を自治会へ委託するケースもあります。しかし、自治会の加入数も減少しているなか、役員に自治体から委託された業務の負担が集中することも少なくありません。
行政の下請けのような役割を担う自治会もあり、「本来は自治体がやるべき仕事なのでは?」という不満が不要論につながっている側面もありそうですね。
【背景3】一部の役員しか楽しめない行事に会費が使われる
自治会加入者全員が楽しめる行事が実施されないという問題もあるようです。例えば、東京都内のある自治会では、公民館で「昭和の懐かしい映画鑑賞会」を実施。しかし内容は、60歳以上でなければ「懐かしい」と思えない映画ばかりだったといいます。
このように一部の役員が自分の私利私欲を満たすために会費を使うケースもあり、そういった不満が「自治会はいらない」と考える人を増加させている背景の1つとしてあるようです。
自治会を解散する手順とは?
では、自治会の解散を要求したいと思ったとき、どういった手順を踏めば良いのでしょうか。
以降で、大まかな流れをまとめてみました。
・自治会の総会を開催し、廃止するための決議を行う
・自治体の市民生活課へ解散手順について相談しに行く
・自治会長が「解散届出書」と「解散を総会で決議したことを証した書類(議事録の写しなど)」を作成する
・各自治体の受付窓口に作成した書類を提出する
なお、議事録の写しなどは、議長やそのほかの役員の署名・捺印が必要となります。
慎重に議論したうえで自治会の解散は決める
高齢化や役員が入れ替わらない閉鎖的な雰囲気に不満を持ち、加入を避ける傾向も増加しているという近年の自治会。この傾向が止まない限り、やむをえず解散となる地域は今後増えていくかもしれません。
ただ、自治会は災害時の助け合いなど、防災面のセーフティネットとして機能している部分もあります。そのため自治会の役割を改めて整理したうえで、本当に解散すべきか、解散によるデメリットの確認も含めて慎重に議論したほうが良いでしょう。