自治会を法人化する意味はあるの? メリット・デメリットを紹介!
「不動産などの財産を個人名義ではなく団体名義で所有したい」「会長が変更したときの手続きを簡略化したい」という目的があれば、自治会の法人化を検討したいところ。
この記事では自治会が法人化するメリットやデメリットを踏まえて、手続き方法なども紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
法人化した自治体は「認可地縁団体」と呼ばれる
従来、自治会が所有する不動産などの財産は、団体名義での登記ができませんでした。そのため会長の個人名義や役員の共有名義で登記が行われていたものの、名義変更や相続を巡るトラブルが頻繁に起きていたそうです。
こういったトラブルを解消するために、1991年4月に地方自治法(地方自治について定めた法律)の一部を改正。一定の条件を満たし、届出を行った自治体は市長から法人格の認可を受けることができるようになりました。その結果、不動産などの財産を自治会名義で登記できるようになったのです。
なおこうした一定の手続きにより、法人格を取得した自治体のことを「認可地縁団体」と呼びます。
自治会を法人化するメリット
では、自治会を法人化するメリットは何か。改めて整理してみました。
【メリット1】自治会名義で資産を管理できる
前の文で紹介した通り、自治会が所有する不動産などの資産は法人化していない場合、個人名でしか登記することができません。しかし法人化すれば、自治会名義で資産を管理できるようになるのです。
自治会名義で不動産登記しておけば、代表者が変わるたびに登記変更を行う必要もなくなります。つまり名義者の転居や死亡にともなう、名義人の変更や相続手続きなどの負担も軽減されるでしょう。
【メリット2】社会的信用が高まる
法人化することで社会的信用が増し、行政から補助金を受けやすくなったり、外部の支援者から寄附を受けやすくなったりするなどのメリットも考えられます。
補助金や寄附が受けやすくなれば、環境美化や祭り、文化活動など地域をより住みやすくするための活動を実施する機会も増えそうですね。
自治会を法人化するデメリット
続いて、自治会を法人化するデメリットについても見ていきましょう。
【デメリット1】課税される可能性がある
法人認可を受けた自治会は、法人市民税の課税対象となってしまいます。そのため、毎年事業年度終了後の一定期間内に、法人市民税の申告を行なう必要があるでしょう。
なお事業の内容が通常の自治会活動のみで、収益事業を行なっていない場合は減免措置を受けることができます。ただ、申告と合わせて減免申請を行う必要もあるため、こういった手続きの負担が生まれてしまう点はデメリットといえそうですね。
【デメリット2】法人設立届などの手続きが面倒
法人化を行う場合、市や県税当局へ法人設立届を行なわなければなりません。
また団体名称や区域、事務所の所在地や代表者の名前などを市町村長が告示するため、もし告示した事項に変更が生じた場合は、その都度団体の代表者が届け出る必要もあります。
なお法人化については総会での承認が必要であることはもちろん、最終的には市町村長の認可も受けなくてはなりません。
また法人化をした後は、団体運営に関して事務処理や書類作成などが煩雑になるだけでなく、規約の変更や財産の処分などに関する条件が厳しくなることも予想されます。
法人化するための主な条件とは?
法人格を取得して「認可地縁団体」となるためには、届出を行う前にある一定の条件を満たしておくことが必要となります。ここでは、主に4つの条件を紹介。以降で確認していきましょう。
【条件1】自治会として地域に関わる活動を行っている
地方自治法によると、法人化の要件を満たすためにはまず過去2年以上、以下のような活動の実績が必要となります。
・集会施設の維持管理
・住民相互の連絡
・清掃等の環境の整備
・高齢者の慰問等の社会福祉活動
・スポーツ大会などのレクリエーション活動等の開催
このように地域に関わる活動を幅広く実施している必要があり、スポーツイベントや環境美化など、特定の活動だけを目的とした自治会は対象外となるようです。
【条件2】自治会への入会を制限していない
「その区域に住所を有する、すべての個人が入会できる自治会」であることも条件の1つ。つまり自治会に入会できる人を限定している場合などは、対象外となるようです。
また、該当区域の住民の過半数以上がその自治会に加入していることも条件の1つとなります。
【条件3】定められた項目について規約を設けている
自治会の目的や、会員の資格を規定する規約も定めておく必要があります。
具体的に定める項目としては、以下の通りです。
・活動目的
・名称
・区域
・主たる事務所の所在地
・構成員の資格に関する事項
・代表者に関する事項
・会議に関する事項
・資産に関する事項
規約を設定するために話し合いを行うなど、この部分は手間がかかりそうですね。
【条件4】不動産を保有、もしくは今後保有する予定がある
不動産などを保有する目的がない自治会は原則、法人化の取得は認められません。
ただ、現時点で不動産を所有していなくても、認可申請後に確実に保有すると判断されれば許可の対象となります。
つまり法人化においては現在不動産を保有している、もしくは今後保有する予定があって、自治会名義で登記を行いたいという目的がなければならないのです。
法人化するための手続きも紹介!
以降では、いよいよ法人化を行うにあたって、必要な手続きの流れや用意しておくべき書類も紹介していきます。
法人化手続きから不動産登記までの主な流れ
法人化を行うには、市長による認可・告示が必要となります。
手続きについては、ざっくりまとめると以下の通り。
①自治会内で法人化に関して話し合う
②市役所へ規約に関する相談
③規約案などを作成
④総会での議決
⑤申請書類の作成・提出
⑥市役所での審査
⑦認可の告示
⑧証明書の請求・交付
⑨不動産登記
法人化するにあたり、まずは自治会で法人化の話し合いを実施。規約を作成するにあたっては、市役所の自治振興課や市民活動支援センターなどに事前に相談してみましょう。
そして規約が定まったら、総会を開いて法人化を行う旨や代表者を誰とするかなどの議決を行うことになります。
必要な申請書類は? どこに提出するの?
市区町村によって必要な書類は変わりますが、一般的に以下のような書類が必要となるでしょう。
・認可申請書
・規約
・認可を申請することについて総会で議決したことを証する書類
・構成員の名簿
・保有資産の目録
・団体の活動状況を示す書類
・申請者が代表者であることを証明する書類
・区域図
これらの書類は、市役所の自治振興課の窓口へ認可申請を行なう際に必要となります。
なお許可申請を行うのは、自治会の代表者。審査が終わって許可されるまでは、だいたい2週間〜1か月程度かかるといわれています。
自治会の法人化は主に不動産の登記が目的!
改めてとなりますが、自治会の法人化は前提として不動産を保有、もしくは今後保有する予定がある場合に限ります。
そのため不動産を自治会名義で登記したいという目的があるのなら、法人化を検討してみましょう。