マンション勾配屋根のメリット・デメリットは?陸屋根との違いも解説
マンションの屋根は、傾斜のついた「勾配屋根」とフラットな「陸屋根」の2種類。多くのマンションでは陸屋根が採用されていますが、勾配屋根のほうが水はけがよく耐久性に優れています。
今回の記事では、勾配屋根のメリット・デメリットとメンテナンス方法をご紹介します。ぜひマンションの屋根形状選びの参考にしてください。
マンションの勾配屋根とは?
勾配屋根とは、傾斜がついた屋根のこと。主に一戸建て住宅で採用される屋根形状ですが、マンションで採用されることもあります。勾配屋根は屋根の形によって「切妻屋根・片流れ屋根・方形屋根・寄棟屋根」などのタイプに分けられますが、どのタイプも雨水が屋根の勾配に沿ってスムーズに雨樋に流れることで、雨漏りを防ぎます。
マンションの勾配屋根によく使用されるのが、ガラス基材をアスファルトでコーティングし、表面に粒状の石を吹き付けてつくられた屋根材「アスファルトシングル」。軽量で防水性に優れているだけでなく、安価で施工しやすいというメリットもあり、近年たくさんのマンションの勾配屋根に採用されています。
マンションの陸屋根とは?
陸屋根(ろくやね・りくやね)は、一般的に「屋上」と呼ばれるフラットな屋根形状のこと。平屋根(ひらやね)と呼ばれることもあり、多くのマンションで採用されています。一見フラットに見える陸屋根ですが、実は全く平らと言うわけではなく、緩やかな排水勾配がついています。雨水はゆっくりと排水溝に向かって流れ、雨樋を通って地上に排水される仕組みです。
勾配が緩やかなため、陸屋根は勾配屋根より水が溜まりやすい点がデメリットといえます。雨漏りを防ぐためには、定期的なメンテナンスを行い、高い防水性を保つ必要があるでしょう。
マンションで陸屋根が利用される理由
多くのマンションで陸屋根が採用される理由は、居住スペースを広く確保できるから。マンションを建てるときは、建築基準法によって定められた高さや容積率を守らなければなりません。陸屋根にすることで、その制限をクリアしながら効率よく専有面積を増やしやすいのです。平らな屋上は、水道や電気系統などの設備を設置するスペースとしても活用できます。
また点検やメンテナンスがしやすいのも、マンションに陸屋根が採用されやすい理由のひとつ。数十メートルの高さのマンションを勾配屋根にすると、メンテナンス時に転倒・転落などの危険がともないます。フラットな陸屋根であれば、屋上に置いてあるアンテナや受水槽などの管理もしやすいのです。足場を組まずにメンテナンスできることで、コスト削減にもつながります。
マンションの勾配屋根のメリット
マンションに勾配屋根を採用する最大のメリットは、やはり水はけのいい屋根になることでしょう。雨水がスムーズに流れると、雨漏りの防止につながります。
また傾斜によって、ほこりやゴミが付着しにくいというメリットも。水・ほこり・ゴミが留まりにくいので、屋根自体の劣化が進みにくく、耐久性にも優れています。
マンションの勾配屋根のデメリット
傾斜のある勾配屋根は、陸屋根の屋上スペースのように有効活用するのが難しい点がデメリットです。勾配屋根上での作業には足場を組むなどの対策が必要となり、メンテナンスコストがかさむ可能性もあります。
またフラットな陸屋根に比べて屋根面積が大きくなるため、施工コストも高くなる傾向に。屋根面積は勾配が急であれば急であるほど大きくなるので、勾配の角度は水はけの良さ・コスト・デザインの3点から考えて決めましょう。
マンションの勾配屋根のメンテナンス方法
マンションの勾配屋根のメンテナンス方法は、大きく分けて「葺き替え工法・カバー工法(被せ工法)・防水塗装(保護塗装)・塩ビシート防水」の4つ。
それぞれのメンテナンス方法について、詳しく解説します。
葺き替え工法
葺き替え工法とは、既存の屋根材を全て撤去して、新しい屋根材を施工する工法。屋根の改修方法の中では最も大掛かりな工事であり、主に既存屋根の状態が芳しくない場合に用いられます。
マンションの勾配屋根によく使用されるアスファルトシングルで葺き替え工法を行う場合は、まず既存屋根材を全て撤去して下地の状況を確認します。下地がカビていたり亀裂が入っていれば補修し、整った下地に新しい屋根材を施工して完成です。
葺き替え工法には時間とコストがかかりますが、既存の屋根材を全撤去するため屋根の重量が増えず、修繕前と同じ耐震性を保つことができるでしょう。
カバー工法(被せ工法)
カバー工法(被せ工法)は、既存屋根をそのまま残し、上からさらに新しい屋根材を施工する工法です。葺き替え工法に比べて時間とコストを大幅にカットできるため、既存のアスファルトシングルの状態が良い場合は、カバー工法が用いられることが多い傾向にあります。既存屋根を撤去する葺き替え工法ではごみやホコリが舞いやすいですが、屋根を被せるカバー工法ではその心配も少ないでしょう。
ただしカバー工法は屋根が二重になるため、屋根が重くなり、耐震性が低くなってしまう可能性も。なるべく軽量の屋根材を施工することが大切です。
防水塗装(保護塗装)
防水塗装(保護塗装)とは、劣化した屋根の防水機能を高めるための工法です。
元々アスファルトシングルは防水性に優れた屋根材ですが、紫外線や雨風にさらされたり長い年月が経つことで、吹付けられた石粒が剥がれるなどどうしても劣化してしまいます。
既存の防水層の状態が良好である場合は、防水塗装のみのメンテナンスでまかなえるケースもあるでしょう。こまめま防水塗装で屋根材をしっかりと保護することで、カバー工法や葺き替えなどの大掛かりなメンテナンス時期を遅らせるメリットもあります。
塩ビシート防水
塩ビシート防水とは、塩化ビニル樹脂でできたシートを貼り付けて、防水層をつくりだす工法のこと。塩化ビニル樹脂以外にも安価なゴム製シートが用いられることもありますが耐久性が低いため、現在は塩ビシートが主流となっています。
塩ビシート防水の工法は、「機械固定工法」と「密着工法」の2種類。密着工法では直接下地に塩ビシートを貼り付けますが、機械固定工法では固定ディスクを用いて、下地と間を開けて施工します。下地の影響を受けにくいため、機械固定工法のほうが防水層のひび割れや破断が起こりにくいでしょう。
ただし、コンクリート下地に穴を開ける作業が必要なので、工事中は騒音と振動が発生しやすいです。
マンションの勾配屋根にも適切なメンテナンスを
マンションの屋根形状は、大きく分けて「勾配屋根」「陸屋根」の2種類。マンションでは居住スペースを確保しやすい点やメンテナンス性の高さから陸屋根が採用されることが多いですが、水はけのよさでは勾配屋根に軍配が上がります。
ただし勾配屋根は水はけがよいといっても、雨風や紫外線を浴びて経年とともに劣化していきます。長持ちさせるためにも、定期的にメンテナンスをしましょう。同じ勾配屋根でも素材や劣化状況によって修繕方法が異なるため、適切な方法を選ぶことが大切です。