エアコン設置のための条件を解説! ウインドエアコンという選択肢も
夏の暑い日や冬の寒い日に、部屋を快適な環境に保つためにエアコンは必要不可欠な設備です。特に、連日酷暑日となるのも珍しくはなくなった近年の日本の夏では、エアコンの重要性は高まっているといえるでしょう。
この記事では、マンションの住戸にエアコンを設置するための条件について解説していきます。
マンションにエアコンを設置するために必要な3つの条件
エアコンはどんな場所でも取り付けられるわけではありません。設置するためには、対象となる室内の場所がエアコンを使用するための条件を満たしている必要があります。
まずは、エアコンの設置に必要な3つの条件をみていきましょう。
【条件1】スリーブ穴がある
一般的な家庭用のエアコンは室内機と室外機の2つから構成されます。2つの装置をつなぐパイプを通じて、室内と室外の冷たい空気と暖かい空気を交換し、室内を快適な気温に保っているのです。
このような仕組みであるため、エアコンの室内機と室外機は配管パイプや排水ホースでつなぎ合わさっている必要があります。
エアコンを設置する箇所には、配管などを通すために、壁に住戸の内側と外側をつなぐ穴があいていなければなりません。この穴を「スリーブ穴」と呼びます。
スリーブ穴がない箇所ではエアコンを使用できませんが、業者に依頼すれば穴あけ工事が可能です。ただし、位置によっては壁の内部に鉄骨や他の設備の配線などが通っていて、穴をあけられない場合もあるでしょう。
そのため、新しくスリーブ穴をあける場合は、最初に穴をあけられるかどうかの調査をレントゲン撮影などの方法で実施します。
【条件2】室外機の設置場所がある
上述の通り、エアコンを使用するためには室内機と室外機のセットが必要となるので、それぞれ置き場所を検討しなければなりません。
室内機は、住戸内部の壁面の天井に近い位置に設置されるため、ほかの家具や設備の邪魔になって置き場所に困るケースは稀でしょう。一方の室外機の置き場は、住戸によっては十分な検討が求められる場合があります。
マンションでは、エアコンの室外機をベランダや廊下に設置しているケースが一般的ですが、それらの場所であればどこでもいいというわけではなく、周囲の環境に注意が必要です。
エアコンを稼働している時の室外機からは、冷風や熱風が吹き出し、ホースからは排水が流れます。室外機からの空気や水の排出で、他の住民が迷惑を被るのであれば、住民同士でトラブルが発生してしまう可能性があるでしょう。そのため、室外機は他の住民の迷惑にならない場所に設置しなければなりません。
また、室外機の周囲に十分なスペースを確保するのもポイントです。狭い場所で、熱や冷気の吹き出し口が塞がれてしまうと、室外機が一度放出した空気を再び取り込んでしまい、エアコンの温度調節効果が低下します。
さらに、設置場所の日当たりもチェックしておきましょう。真夏などの暑い時期に室外機に直射日光が当たると、室外機の周りが高温になり熱を放出できなくなってしまうためです。
【条件3】エアコン専用のコンセントがある
エアコンを使用するためには、当然、電力が必要です。エアコンは通常のコンセントに対応しておらず、専用のコンセントでなければ使用できない点は要注意ポイントといえるでしょう。
古いエアコンには、一般的に利用されている2つ穴のコンセントに対応していた製品もありました。しかし、エアコンは電力消費が激しく、通常のコンセントでは電力不足が発生しやすい設備です。
通常のコンセントでエアコンを使用すると、頻繁にブレーカーが落ちたり、火災などの事故の原因となったりする可能性が危惧されるでしょう。そのため、安全性への配慮から、近年新しく製造されるエアコンは専用のコンセントにしか対応しなくなっています。
室内にエアコンに対応するコンセント穴がない場合は、業者に依頼すれば専用のコンセントの取り付けが可能です。工事にかかる費用は1万〜2万円程度が相場とされています。
新しくスリーブ穴をあけるなら管理組合の許可が必要
前述のとおり、スリーブ穴や専用のコンセントがなくても、工事をすればエアコンが使用可能になります。
しかし、壁にスリーブ穴をあける工事は、管理組合から許可を得なければ実施できません。壁の内側は専有部分である住戸に該当する一方で、外側の壁は共用部分とされるためです。
共用部分の変更には、管理組合の総会における特別決議で承認を得る必要があります。特別決議での承認は、区分所有者および議決権総数の4分の3以上から賛成を得る必要があるので、なかなか厳しい条件だといえるでしょう。
住戸の壁面の一部が共用部分に該当する、という認識を持っていない区分所有者は少なくないと考えられます。住民が許可を得ないまま工事を実施してしまうのを防止するためにも、管理組合主導で正しい規則を周知しておきましょう。
マンションでエアコン設置前に確認するべき2つのポイント
【ポイント1】電気容量
エアコンの利用を考える際に電気容量は重要なポイントです。
ブレーカーが落ちる心配がないまま他の電化製品とエアコンを同時に使用するには、目安として40アンペア以上の電気容量が求められます。
しかし、築年数の古いマンションでは、使用できる電気容量が30アンペア程度しかない物件も。
そのため、エアコンの設置を検討する際には、事前に使用可能な電気容量をチェックしておきましょう。
【ポイント2】隠蔽配管の有無
エアコンにつける配管の工法には「通常配管」と「隠蔽配管」の2種類があります。
通常配管は、エアコンの室内機と室外機をつなぐ配管を直線上に並んだ穴に通す方法です。「通常」という名称の通り、エアコンの配管ではポピュラーな工法といえます。
一方の隠蔽配管では、配管が室内側と室外側で直線にならず、壁の内側で屈曲する箇所を持って配置されます。そのため、隠蔽配管では室内と室外でそれぞれ配管を通す穴の位置に違いが生じるのです。
隠蔽配管は、配管が外部に露出する部分が少なくなるため、見栄えがスッキリするメリットがあります。
一方、設置に高い技術が必要となる点はデメリットです。必要最小限の長さで直線上に取り付けられる通常配管と比較すると、隠蔽配管は配管が屈曲して長くなっており、そのうえほとんどの部分が壁の内側を通るため、施工の難易度に大きな差があります。
業者によっては隠蔽配管タイプのエアコン設置作業は断られてしまう場合があるほか、エアコンの機種によってはそもそも取り付けできない可能性もあります。
条件を満たさない部屋でもウインドエアコンという選択肢がある
「エアコンの設置条件を満たしていないけど、どうしてもエアコンを使いたい」という場合、あきらめるしかないのでしょうか?
そのような状況でも「ウインドエアコン」の導入という選択肢があります。ウインドエアコンは、窓に直接設置するタイプのエアコンです。
ウインドエアコンは、室内機と室外機の一体型となっているので、室外機の置き場所に苦慮する必要はありません。また、電源プラグはエアコン専用の特殊なタイプのものではなく、一般的な家庭用のコンセントで使用が可能なものも。スリーブ穴は不要なので、管理組合の許可も必要がない場合が多いです。
ウインドエアコンは「窓用エアコン」や「ウインドクーラー」といった名称でも呼ばれています。
ウインドエアコンの導入はデメリットも考慮して検討したい
エアコン設置における課題のすべてをクリアしているようにみられるウインドエアコンですが、懸念される点も存在します。
ウインドエアコンは、窓に取り付ける前提で製造されているので、サイズが一般的なエアコンよりも小さめです。そのため、パワーが弱く、6畳~8畳以上の広さのスペースでは十分な温度調節の効果を得られません。
また、電気代が高額になりがちという点にも注意が必要です。一般的なエアコンは、ほとんどの製品に室温が設定した温度に近づくと自動で出力を弱めて調整する機能が搭載されています。しかし、ウインドエアコンには温度の調整機能がないため、手動で温度を変えるか、電源を切るかといった対応をしない限り、調整をしないまま全力で運転を続けます。そのため、通常のエアコンよりも電気消費量が大きくなりがちなのです。
さらに、室内機と室外機両方の役割を1台で担うため、稼働音が大き目だという点にも注意しましょう。
大前提として、ウインドエアコンを設置可能な窓があるかどうかも外せない条件です。これらのメリット・デメリットを考慮して、設置を検討してみましょう。
まずはエアコンを設置できるかどうかをチェック
エアコンの設置を検討する際は、「スリーブ穴」「室外機の設置スペース」「専用コンセント」という3つの必要条件をチェックしましょう。
また「電気容量」や「隠蔽配管の有無」についても業者に選定する前に確認しておくべきポイントです。
どうしても設置ができない場合は、ウインドエアコンの導入も1つの手といえますが、デメリットについても理解をしておきましょう。