退去時のトラブル解決に役立つ「原状回復ガイドライン」の内容とは?
敷金が全額戻ってこなかったり、高額な費用を請求されたりなど、入居者と住戸を貸す側でトラブルになることも多い原状回復。
この原状回復について、国土交通省がガイドラインを定めてくれていることはご存知でしょうか。そこで今回は、ガイドラインで定められている内容のなかで特に大事な部分を抜粋して紹介。原状回復に関するトラブルを未然に防ぎましょう。
特約によって入居者の負担は拡大する可能性も!
基本的には通常の使用による消耗や経年変化は、住戸を貸す側の負担となりますが、契約する際に特約を付けることで入居者の負担とすることもできます。
もちろん、特約を付けるためには入居者の同意が必要であり、以下の3つの要件を満たさなければなりません。
1.特約の必要性があり、かつ住戸を貸す側が明らかに不当な利益を得るわけではないなど、合理的な理由が存在すること
2.入居者側が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕の義務を負うことについて認識していること
3.入居者側が特約による義務負担の意思表示をしていること
要件が設定されているものの、入居者側も不動産会社任せにせず、契約内容にはよく目を通しておくようにしましょう。
東京都には独自のガイドラインがある
都道府県のなかには、原状回復に関するトラブルを防止するために、独自のガイドラインを設けている場合もあります。
例えば東京都では、「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」を公開しており、これは国土交通省のガイドラインをよりわかりやすくしたものといえます。
あわせて東京都は、賃貸住宅紛争防止条例を施行。この条例では、入居者に対して次の点を説明することを義務づけています。
1.原状回復の基本的な考え方
2.入居中の修繕の基本的な考え方
3.特約の有無やその内容など
4.入居中の設備等の修繕及び維持管理等に関する連絡先
こういった説明を義務づけることで、入居者に対して原状回復の定義の理解を促し、退去時のトラブルを未然に防ぐ狙いがあります。
原状回復ガイドラインを理解してトラブルを未然に防ごう!
ここまで紹介したように原状回復ガイドラインは、退去時のトラブルを未然に防ぐために国土交通省が定めたものです。法律ではないものの、裁判で参考にされるケースも多く、トラブル解決の指針になっていることがわかります。
なお原状回復に関しては、通常住戸を貸す側の負担とされている部分でも、特約によって入居者の負担となるケースもあります。「こんな話聞いてない!」といった退去時のトラブルを防ぐ意味でも、不動産会社などに任せるだけでなく、入居者も原状回復ガイドラインの内容理解に努めたいところです。