連載:理事会役員超入門

管理会社に管理費の値下げは交渉できる? 効果的な方法を詳しく解説

2023.04.27
管理会社に管理費の値下げは交渉できる? 効果的な方法を詳しく解説

マンションの維持・管理のために必要な管理業務。しかし、業務を委託するために支払う高額な管理費用は、管理組合にとって大きな負担になっています。

そこで、今回は管理費を削減するために検討すべき項目や、必要な手続きについて解説していきます。

多くのマンションで起こる管理費問題

新築マンションは管理費用が相場よりも高いかもしれない

マンションの管理業務を管理会社に委託している場合は、管理費は管理会社が設定していることが多いです。

新築マンションの場合、分譲する管理会社は価格競争をすることなく価格を決定できるため、管理費用が相場よりも高いことも。

また、総戸数が20戸以下の小規模マンションや、20階建て以上のタワーマンションは管理費が高くなる傾向があります。2018年度のマンション総合調査の結果では、管理費の平均額が6〜10階建のマンションでは1万5307円であるのに対し、20階以上のマンションでは2万5069円と、約1万円の差が開いています。

管理費は変更できる可能性がある

管理費を変更できる可能性はあるが極端な値下げはNG

上述の通り、管理会社が管理費の金額を設定しているマンションは多くあります。そのため、「管理費は管理会社が決める」と認識している人は少なくないでしょう。

しかし、法律上は、管理費の金額に対して決定権を持つのは管理組合です。そのため、管理組合が働きかければ、管理費の金額を変更することができます。

管理費を変更する方法は、マンションの管理規約に管理費についてどのように記載されているかによって違いがあります。

管理費の金額が規約に記載されていない場合は、総会の普通決議で変更が可能です。一方で、管理費の金額が明記されている場合は、特別決議での変更になります。

ただし、管理会社はビジネスとしてマンション管理を行っているため、管理費変更に応じてくれるとは限りません。管理組合の一存で極端な値下げを取り決めた場合、「仕事内容に対して金額が見合わない」として、対応してもらえない場合もあるでしょう。

実際に管理費を変更するためには、総会の賛成を経た後、管理会社に管理費の見直しや値下げの交渉が必要です。

管理会社に管理費の値下げ交渉をする方法

【1】代行管理人を利用しない

一般的に、マンションの管理人が有給などで休んだ場合は、代わりに業務を行う「代行管理人」が配置されます。代行管理人の配置には、管理業務が滞らなくなるというメリットがありますが、管理費が割高になるというデメリットも。

そこで、「代行管理人を不要」と契約内容を変更し、管理費を値下げできないかを交渉してみましょう。管理会社側も人件費を削減できるため、有効な交渉材料になることが期待できます。

さらに、管理人が不在の日が多くなることを避けたい場合は「代行管理人を設置しない日を年〇日とする」といった内容を契約書に追記できるかもあわせて交渉しましょう。ただし、代行管理人の人件費が多少はかかるため、値下げの幅が小さくなる点には注意が必要です。また、契約書の雛形がある大手の管理会社の場合は、独自項目の設定を嫌い、契約書への追記を断る可能性もあります。

【2】理事会の開催頻度を減らす

マンションのなかには、管理会社の担当者が理事会で管理業務の報告を行っているところもあります。管理会社の担当者が理事会に参加している場合、管理会社は理事会が開催される度に残業代や手当を支給しているため、理事会の開催頻度が多いと人件費も増加します。

マンション総合調査によると、理事会の開催頻度として最も多いのが1ヵ月に1回程度、次いで2ヵ月に1回程度でした。頻度を3ヵ月や4ヵ月に1回に下げることができれば、人件費分の管理費を下げるよう交渉できるでしょう。理事会運営を効率化できるのであれば、検討してみましょう。

【3】決算月を変更する

総会で採決を得れば決算月の改正は可能

管理費をさらに削減したい場合や、前述の方法の採用が難しい場合は、決算月の変更を検討してみましょう。

管理組合の決算月はマンションによって異なりますが、12月か3月に設定しているところが多く、その時期の管理会社は繁忙期となります。決算月を管理会社の繁忙期以外の時期に変え、負担を軽減する代わりに管理費を下げられないか、交渉する余地があるのではないでしょうか。

なお、管理組合の決算月はマンションの管理規約で定められているため、変更するには規約の改正が必要です。総会で採決しなければならないため、早めに検討・準備を行いましょう。

【4】管理会社の業務負担を減らす

管理会社は多くのマンションから管理業務を請け負っています。そのため、なるべく管理業務を均一化し、効率化を図っています。管理会社の要望を受け入れ、業務の効率化に協力することで、管理費を値下げできないか交渉してみることも可能です。

たとえば、管理会社のメインバンクに管理組合名義の口座を開設・移行したり、管理会社がメインで使っている集金代行会社を使用して管理費を引き落としたりするだけでも、管理会社側の負担は軽減されます。また、管理会社が受け取った管理費を保管するための「収納口座」の印鑑を、管理組合が保管している場合は、管理会社に印鑑を預けることも、負担軽減に繋がります。

管理会社の要望の多くは、管理組合の業務にもほとんど支障が生じないものです。管理会社の作業効率化に繋がり、管理組合にもデメリットが生じないものであれば、積極的に採用してもよいでしょう。

管理費の変更には総会の決議が必要

では、管理費を変更するためにマンション内ではどのような手続きが必要なのでしょうか。

一般的には、管理費や修繕積立金は、総会の普通決議で可決されれば変更可能です。普通決議の可決条件は、区分所有者の頭数および議決権の過半数の賛成です。

しかし、管理費の金額が規約の本文に記載されている場合は、特別決議が必要になります。特別決議で可決されるには、区分所有者の頭数および議決権の4分の3以上の賛成が必要です。普通決議よりもハードルが上がるため、管理費削減の目的や契約内容の変更事項を、より丁寧に説明した上で決議に進むようにしましょう。

サービスの質が低下しないように注意

ここまで管理費の値下げ方法について確認してきましたが、管理費は「安ければいい」というものでもありません。

管理費が相場以上に安いということは、管理サービスの質が低いと言い換えられます。日頃の管理が行き届いていないため、大規模修繕などで余計な修繕費用が発生してしまっては本末転倒です。

値下げ交渉をする際やした後は、サービスの質が低下していないかを注意する必要があります。

管理会社にもメリットを提示しつつ値下げ交渉を

高い管理費は多くのマンションが直面している悩みといえます。管理費を削減するには、管理会社への値下げ交渉などの一工夫が必要です。

人件費の削減や業務の効率化など、管理会社にとってもメリットのある内容を提案しつつ値下げ交渉を行えば、成功率を上げることができます。管理費や規約の変更には総会での決議が必要になりますが、管理費の削減は居住者にとってもメリットがあるため積極的に検討していきましょう。

ただし、過度な値下げは管理の質の低下を招きかねません。管理の不備で修繕費用が嵩むことのないよう、予算とサービス内容の折り合いをつけていきたいですね。

イラスト:大野文彰

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